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第3章 友情と家族の絆
第10話 荒地の冬将軍
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まばゆい太陽の光が、ベッドで寝ている元国王であった者を照らす。
久しく出す声は、掠れて弱々しい。
「助けて頂き、感謝します。
領地で、風邪が流行するとは思わなかった。
コホ、コホン!」
苦しげに話すと咳を始めたので、これ以上何も言わずに養生するように伝える。
私たちは短い会話を終えると、足早に部屋を出ることにした。
代わりに元近衛隊長と母と元王妃が、 現状を詳しく説明してくれた。
この地には森林が少なく、薪は他から調達しなくてはならない。
今年は雪が多く寒いせいで、なかなか売ってくれなく領民を含めた全員が我慢を虐げられていた。
そのせいで体調を崩し、風邪をひく者が増えてしまったそうだ。
医師もそんな暮らしに耐えきれず、この領地を去って行ってしまったと話す。
「なるほどな。
寒さに強く薪になる木を、早々に植えなくてはならん。
それまでは、我が領地で何とかしなくてはなるまい」
プリムローズは頭の中で考えが浮かび、手を挙げて発言した。
「お祖父様。
蒔きより炭にした方が、軽いし火も長く持ちますわ。
それと薪を、使い分けをしてはどうでしょう?」
プリムローズの知識に、周りはほとほと感心するのである。
「母上、どうして…。
国にこの事を訴えなかったのですか?!
せめて、私たちぐらいには仰っても良かったのですよ」
兄は頼ってくれなかったのを、不満に感じるより遠慮されて辛いようだ。
優しい心を持つ兄の表情で、妹はそう判断する。
「ブライアン…。
私たちもそう思ってましたが、人に頼らず自力で乗り越えようとしました。
これが私たちに、与えられた神からの試練なんだと…」
「お母様!
離れて立場が違えど家族です。
これからは、ご遠慮なさいますな」
プリムローズがそう話すと、祖母ヴィクトリアが義理の娘に思いを語る。
「そうですよ。
親より先には、絶対に逝かないでおくれ!
ソフィア、クリストファーとリリアンヌを頼みますよ」
祖母の言葉に、母ソフィアは涙で顔がぐちゃぐちゃになりながら笑顔で頷くのである。
先ほど様子を見に行った時は寝ていたので、次に父を見舞うことにする。
「父上、母上、ブライアンにプリムローズ。
助けてくれて有り難う。
私は冬を甘く見ていた。
去年と同じと、王都生活が長く感覚がどうも鈍っていたのだな」
過酷なこの領地の冬の生活を思い出すかの様に、調子が悪い青白くやつれた顔をしてお礼を述べてくる。
「父上。
若輩の私が言うのも何ですが、運が悪かったと思って楽に考えて下さい。
お二人は、命を落とされていたのかもしれないんですよ。
体を治すことに専念して欲しいのです」
「そうじゃ、無理するな!
お前たちを助けてくれと、領民たちが儂らの馬車をとめた。
一歩間違えていたら、殺してたかもしれんぞ。
お前たちはそれほどまで、立派に領民たちに信頼されておるのじゃ」
祖父はそう言ってから、生死をさまよって生還をした息子に安堵するのである。
私たちは、長居しないで部屋を出た。
医師はこのまま最低1週間は、休むように診断を下した。
療養中は元近衛隊長が代理を任せることになる。
そのことはクラレンス公爵の書状で、急ぎ王に伝えられることになった。
「アルフレッド殿は、学園に復学されないのか?
人の目もあり辛いとは思うが、いつまでも自主学習では不味いじゃろ」
居間で祖父グレゴリーが、元第1王子を質した。
「はい。ですが私は、プリムローズ様に許されない過ちを犯しました。
ですがこの弟のルイは、学園に通わせてあげたいのです!」
気まずそうに隣の弟を見ては、暗い顔をして下を向くアルフレッド。
「あらっ、私は今年卒業して留学するから居なくなる予定です。
気にしなくて良いですわ。
お祖父様、クラレンス公爵から学園に通わせたら如何でしょう?!」
プリムローズがまたしても、あっけらかんとサラッと発言するのであった。
「そこまでは頼れません!
私の実家に、頼んで通わせてますわ。
私たちも、子供たちを後回しにしてました。
これからの事をよく考えてみます」
母である元王妃が、私たちに申し訳ない表情で返事する。
「プリムローズ、貴女は留学するの?
この国を離れてしまうの?!」
姉リリアンヌが突然の留学の話に驚くと、妹に遠慮しながら質問した。
プリムローズとは今まで接した事がなかったので、弟のブライアンと比べてどうしても態度がよそよそしくなってしまう。
「卒業は確実ですが、文官試験に合格したらね。
行き先も決めてますよ。
報告とそちらの様子を見に来ましたら、大変な事になっておりました」
きっと私が留学で国を離れれば、アルフレッド様達も学園に通いやすくなるわとプリムローズを考えた。
この現状を見てしまっては、祖父母は必ずや改善を目指し動くに違いない。
私がこうなってしまった元凶だから、遠くからそれを見守る方が良いだろうと彼女は思って笑みを浮かべていた。
久しく出す声は、掠れて弱々しい。
「助けて頂き、感謝します。
領地で、風邪が流行するとは思わなかった。
コホ、コホン!」
苦しげに話すと咳を始めたので、これ以上何も言わずに養生するように伝える。
私たちは短い会話を終えると、足早に部屋を出ることにした。
代わりに元近衛隊長と母と元王妃が、 現状を詳しく説明してくれた。
この地には森林が少なく、薪は他から調達しなくてはならない。
今年は雪が多く寒いせいで、なかなか売ってくれなく領民を含めた全員が我慢を虐げられていた。
そのせいで体調を崩し、風邪をひく者が増えてしまったそうだ。
医師もそんな暮らしに耐えきれず、この領地を去って行ってしまったと話す。
「なるほどな。
寒さに強く薪になる木を、早々に植えなくてはならん。
それまでは、我が領地で何とかしなくてはなるまい」
プリムローズは頭の中で考えが浮かび、手を挙げて発言した。
「お祖父様。
蒔きより炭にした方が、軽いし火も長く持ちますわ。
それと薪を、使い分けをしてはどうでしょう?」
プリムローズの知識に、周りはほとほと感心するのである。
「母上、どうして…。
国にこの事を訴えなかったのですか?!
せめて、私たちぐらいには仰っても良かったのですよ」
兄は頼ってくれなかったのを、不満に感じるより遠慮されて辛いようだ。
優しい心を持つ兄の表情で、妹はそう判断する。
「ブライアン…。
私たちもそう思ってましたが、人に頼らず自力で乗り越えようとしました。
これが私たちに、与えられた神からの試練なんだと…」
「お母様!
離れて立場が違えど家族です。
これからは、ご遠慮なさいますな」
プリムローズがそう話すと、祖母ヴィクトリアが義理の娘に思いを語る。
「そうですよ。
親より先には、絶対に逝かないでおくれ!
ソフィア、クリストファーとリリアンヌを頼みますよ」
祖母の言葉に、母ソフィアは涙で顔がぐちゃぐちゃになりながら笑顔で頷くのである。
先ほど様子を見に行った時は寝ていたので、次に父を見舞うことにする。
「父上、母上、ブライアンにプリムローズ。
助けてくれて有り難う。
私は冬を甘く見ていた。
去年と同じと、王都生活が長く感覚がどうも鈍っていたのだな」
過酷なこの領地の冬の生活を思い出すかの様に、調子が悪い青白くやつれた顔をしてお礼を述べてくる。
「父上。
若輩の私が言うのも何ですが、運が悪かったと思って楽に考えて下さい。
お二人は、命を落とされていたのかもしれないんですよ。
体を治すことに専念して欲しいのです」
「そうじゃ、無理するな!
お前たちを助けてくれと、領民たちが儂らの馬車をとめた。
一歩間違えていたら、殺してたかもしれんぞ。
お前たちはそれほどまで、立派に領民たちに信頼されておるのじゃ」
祖父はそう言ってから、生死をさまよって生還をした息子に安堵するのである。
私たちは、長居しないで部屋を出た。
医師はこのまま最低1週間は、休むように診断を下した。
療養中は元近衛隊長が代理を任せることになる。
そのことはクラレンス公爵の書状で、急ぎ王に伝えられることになった。
「アルフレッド殿は、学園に復学されないのか?
人の目もあり辛いとは思うが、いつまでも自主学習では不味いじゃろ」
居間で祖父グレゴリーが、元第1王子を質した。
「はい。ですが私は、プリムローズ様に許されない過ちを犯しました。
ですがこの弟のルイは、学園に通わせてあげたいのです!」
気まずそうに隣の弟を見ては、暗い顔をして下を向くアルフレッド。
「あらっ、私は今年卒業して留学するから居なくなる予定です。
気にしなくて良いですわ。
お祖父様、クラレンス公爵から学園に通わせたら如何でしょう?!」
プリムローズがまたしても、あっけらかんとサラッと発言するのであった。
「そこまでは頼れません!
私の実家に、頼んで通わせてますわ。
私たちも、子供たちを後回しにしてました。
これからの事をよく考えてみます」
母である元王妃が、私たちに申し訳ない表情で返事する。
「プリムローズ、貴女は留学するの?
この国を離れてしまうの?!」
姉リリアンヌが突然の留学の話に驚くと、妹に遠慮しながら質問した。
プリムローズとは今まで接した事がなかったので、弟のブライアンと比べてどうしても態度がよそよそしくなってしまう。
「卒業は確実ですが、文官試験に合格したらね。
行き先も決めてますよ。
報告とそちらの様子を見に来ましたら、大変な事になっておりました」
きっと私が留学で国を離れれば、アルフレッド様達も学園に通いやすくなるわとプリムローズを考えた。
この現状を見てしまっては、祖父母は必ずや改善を目指し動くに違いない。
私がこうなってしまった元凶だから、遠くからそれを見守る方が良いだろうと彼女は思って笑みを浮かべていた。
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