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第2章 愛と希望とそして秘密
第12話 君は私の理想の人
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見合いから約2ヶ月後、新しい年が少し明けた頃。
マリー様とサミュエル様の婚約が、両家の間で秘密裏に決定していた。
ハントリー侯爵令嬢セリーヌとは違い控え目なマリー様に、伯爵令息サミュエルはすっかり骨抜きになってしまう。
順調な交際を聞いて、縁結びをしたプリムローズはワクワクして見守っていたのだった。
マリーは誰より先にこの婚約話を、彼女に報告するのをずっと前から決めていた。
「マリー様、まだ大っぴらには喜べませんがおめでとうございます。
私が見込んだ通りになりましたわ!」
彼女はマリーから人気の少ない場所へ呼ばれて、この吉報を教えて貰っている。
「此方こそ、なんと礼を申し上げてよいか。
プリムローズ様が、良縁を紹介して下さり感謝致します」
マリーは彼女には一生恩義を持ち続ける気持ちで、心の底からお礼を伝えていた。
プリムローズは口が固く、両家からの発表があるまでは知らぬ存ぜぬを通している。
そんな彼女が学園の廊下を歩いていると、2人の見知らぬ令嬢たちから声をかけられた。
「失礼致します。
貴女様がクラレンス公爵のプリムローズ様ですか?」
「えぇ、確かに!
そういう、貴女は何処の何方?
私と話したければ、名を名乗るのが礼儀というものよ」
背丈はまだ彼女の方が少し低かったので、視線が上からで気分が悪くなるプリムローズ。
「貴女様のせいで、セリーヌ様は修道院に送られたのよ!
婚約破棄まで、公衆の面前でされて!
貴女って、酷いお方だわ!!」
公爵令嬢に対して、かなり辛辣な言葉である。
周りはその場で足を止めて、そのやり取りの経緯を見守る野次馬もいた。
「礼儀知らずの酷い方はどちら?
いい事、あの方は婚約者が居ながら他の殿方にちょっかいを出していたのよ!
不義理で、貞操なしとは思いません?」
プリムローズは腕を組み、堂々とセリーヌの浮気グセを話していちゃもんをつけた令嬢たちに言い聞かせる。
「それはセリーヌ様が魅力的で、殿方が放っておかないからですわ!」
もう一人の令嬢が、彼女に断りもなく話に割って入ってきた。
「クスクス!
笑ってしまって、ごめん遊ばせ~!
婚約破棄しても、魅力的で殿方がいっぱい寄ってくるなら。
それで良いではありませんか!」
二人の令嬢たちは、彼女の返事に言葉を失っていた。
確かに、モテるなら目くじらを立てるのはおかしい話だ。
「修道院に行って神に従えば、清い心になり戻れますわね。
そうしたら、もっと良い御縁を引き当てるかとはお思いになりませんか?
神さまのお導きで~!!フフッ」
言い返す言葉がないし、この方には何を言ってもムダだわ。
勝てないと分かると、令嬢たちは顔を下に向けた。
「でっ、あなた方はどちらのお家の方?
侯爵、伯爵?まさか、ドチラでもないの!
私は身分の下の方は、知り合い以外は家名を覚えておりませんの!ねぇー、教えてくださる?
オーホホホ!!」
廊下に響き渡るプリムローズの高笑いは、側にいた生徒たちの恐怖心を煽っていたのであった。
メーター伯爵からクラレンス公爵に先触れがあり、マリーの紹介の御礼をとプリムローズに会いに来ていた。
「この度は、素敵なご令嬢を紹介頂きありがとうございます。
息子は勿論、家内も喜んでおります」
メーター伯爵は、プリムローズに深々礼をする。
「良かったのう。
儂らが婚約破棄させたので、気になってたんじゃ」
祖父は、心にもないことを伯爵に告げていた。
「前の婚約者は身分が格下だと、私たちを見下してましたのよ。
今の方は、謙虚でお話も合いますわ。
すでに行儀見習いを、素直に一生懸命しております」
まるで娘の様に、可愛がっている伯爵夫人。
「素直が一番ですよ。
前の方を悪く言いありませんが、公爵夫人の妾に逆らう言葉を言いました。
この度の御令嬢は孫娘の友人で、何度かお会してます。
とても感じが良い方ですよ」
祖母は、まだ侯爵令嬢を許していないらしい。
「プリムローズ様、ありがとう。
マリーと幸せになると伝えたくてね。
前のあの方と違い、私を立ててくれるし優しいんだ。
私の理想の人だよ。
どうしても両親も御礼が言いたくて、訪問しました」
サミュエルは、赤い顔して笑顔を爆発させる。
「私も友人として喜んでおりますの。
メーター伯爵家も、これで安泰ですわね!」
残りはリザ様、だけど彼女って相手はいないわよね?
結婚とかどう考えてるのかしら?
なんだかとても、気になるわ。
プリムローズは、またしてもお節介おばさんの血がうずくのであった。
マリー様とサミュエル様の婚約が、両家の間で秘密裏に決定していた。
ハントリー侯爵令嬢セリーヌとは違い控え目なマリー様に、伯爵令息サミュエルはすっかり骨抜きになってしまう。
順調な交際を聞いて、縁結びをしたプリムローズはワクワクして見守っていたのだった。
マリーは誰より先にこの婚約話を、彼女に報告するのをずっと前から決めていた。
「マリー様、まだ大っぴらには喜べませんがおめでとうございます。
私が見込んだ通りになりましたわ!」
彼女はマリーから人気の少ない場所へ呼ばれて、この吉報を教えて貰っている。
「此方こそ、なんと礼を申し上げてよいか。
プリムローズ様が、良縁を紹介して下さり感謝致します」
マリーは彼女には一生恩義を持ち続ける気持ちで、心の底からお礼を伝えていた。
プリムローズは口が固く、両家からの発表があるまでは知らぬ存ぜぬを通している。
そんな彼女が学園の廊下を歩いていると、2人の見知らぬ令嬢たちから声をかけられた。
「失礼致します。
貴女様がクラレンス公爵のプリムローズ様ですか?」
「えぇ、確かに!
そういう、貴女は何処の何方?
私と話したければ、名を名乗るのが礼儀というものよ」
背丈はまだ彼女の方が少し低かったので、視線が上からで気分が悪くなるプリムローズ。
「貴女様のせいで、セリーヌ様は修道院に送られたのよ!
婚約破棄まで、公衆の面前でされて!
貴女って、酷いお方だわ!!」
公爵令嬢に対して、かなり辛辣な言葉である。
周りはその場で足を止めて、そのやり取りの経緯を見守る野次馬もいた。
「礼儀知らずの酷い方はどちら?
いい事、あの方は婚約者が居ながら他の殿方にちょっかいを出していたのよ!
不義理で、貞操なしとは思いません?」
プリムローズは腕を組み、堂々とセリーヌの浮気グセを話していちゃもんをつけた令嬢たちに言い聞かせる。
「それはセリーヌ様が魅力的で、殿方が放っておかないからですわ!」
もう一人の令嬢が、彼女に断りもなく話に割って入ってきた。
「クスクス!
笑ってしまって、ごめん遊ばせ~!
婚約破棄しても、魅力的で殿方がいっぱい寄ってくるなら。
それで良いではありませんか!」
二人の令嬢たちは、彼女の返事に言葉を失っていた。
確かに、モテるなら目くじらを立てるのはおかしい話だ。
「修道院に行って神に従えば、清い心になり戻れますわね。
そうしたら、もっと良い御縁を引き当てるかとはお思いになりませんか?
神さまのお導きで~!!フフッ」
言い返す言葉がないし、この方には何を言ってもムダだわ。
勝てないと分かると、令嬢たちは顔を下に向けた。
「でっ、あなた方はどちらのお家の方?
侯爵、伯爵?まさか、ドチラでもないの!
私は身分の下の方は、知り合い以外は家名を覚えておりませんの!ねぇー、教えてくださる?
オーホホホ!!」
廊下に響き渡るプリムローズの高笑いは、側にいた生徒たちの恐怖心を煽っていたのであった。
メーター伯爵からクラレンス公爵に先触れがあり、マリーの紹介の御礼をとプリムローズに会いに来ていた。
「この度は、素敵なご令嬢を紹介頂きありがとうございます。
息子は勿論、家内も喜んでおります」
メーター伯爵は、プリムローズに深々礼をする。
「良かったのう。
儂らが婚約破棄させたので、気になってたんじゃ」
祖父は、心にもないことを伯爵に告げていた。
「前の婚約者は身分が格下だと、私たちを見下してましたのよ。
今の方は、謙虚でお話も合いますわ。
すでに行儀見習いを、素直に一生懸命しております」
まるで娘の様に、可愛がっている伯爵夫人。
「素直が一番ですよ。
前の方を悪く言いありませんが、公爵夫人の妾に逆らう言葉を言いました。
この度の御令嬢は孫娘の友人で、何度かお会してます。
とても感じが良い方ですよ」
祖母は、まだ侯爵令嬢を許していないらしい。
「プリムローズ様、ありがとう。
マリーと幸せになると伝えたくてね。
前のあの方と違い、私を立ててくれるし優しいんだ。
私の理想の人だよ。
どうしても両親も御礼が言いたくて、訪問しました」
サミュエルは、赤い顔して笑顔を爆発させる。
「私も友人として喜んでおりますの。
メーター伯爵家も、これで安泰ですわね!」
残りはリザ様、だけど彼女って相手はいないわよね?
結婚とかどう考えてるのかしら?
なんだかとても、気になるわ。
プリムローズは、またしてもお節介おばさんの血がうずくのであった。
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