【完結】すべては、この夏の暑さのせいよ! だから、なにも覚えておりませんの

愚者 (フール)

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第8章

24 襲撃事件

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 見知らぬ大勢の人々が、王族たちだけでなく。
この私に、笑顔で手を振り声をかけている。
マティルダは感動するほどの光景に、最初は遠慮ぎみに指をちょっとだけ動かして掌を沿道に見せていた。

「君が見られて、恥ずかしいのはわかるけど…。
人だと思わないで、大胆に手を振ったらみたらどうだ?
ずっと中途半端にやっているのが、一番疲れてしまうだよ」

「愛想が悪いって思われないかしら?
こんなに呼び掛けてくれて、無視するのは心が痛みそう」

彼女らしいと話を聞いて、たまに沿道に顔を向けて手を振る。
彼に釣られて、マティルダも反対側にブンブン大きく振る。

「ブッー、あははは。
それは、手を振り過ぎだよ。
マティルダはやることが極端だね」

馬車は3台にわかれていて、先頭の馬車は国王陛下夫妻。
次に王太子のアドニスと婚約者マティルダ。
3番目がエドワード殿下とメアリー王女であった。

「アドニス様。
メアリー王女の婚約者、アンゲロス公爵令息ロバート様はパレードには参加されませんの?」

「メアリーが恥ずかしいって言って、ロバート殿は不参加になったよ」

「えーっ!
だったら、私も…。
でも、いまさら無理ね。
ロバート様、上手く逃げましたこと」

愛するメアリーが乗る馬車の横に、ロバートは護衛として馬で張り付いていたのをマティルダは知らされてなかった。
無事にパレードを終わるようにだ。
マティルダは、そんな男心をしらないで顔をブスッとしている。

「へんな顔をしていると、沿道の人たちに見られちゃうよ」

目と口を丸くして、すぐによそ行きの気取った表情で手首をパタパタさせる。
アドニスはわざと彼女の近寄り、背後を包んで同じ方へ手を一緒に振ると今日1番の大歓声を送られた。

「もーう、アドニス様ったら」

「私が君にメロメロであるのを、ここにいる人々に見せつけ覚えてもらわないといけない」

イチャイチャして仲良いのをこれでもかと、二人は見せびらかしてから微笑み合っていた。


そんなマティルダを探しながら、後ろから押されいる男がいる。
耳の鼓膜こまくが破れると思うぐらいの熱狂と、大きな声に驚くハロルドがいた。

「国王、王妃様が来たぞー!」

「両陛下ばんざぁーい!」

ハロルドは、初めて国王陛下を見れて感動する。

「随分ゆっくりと、馬車を走らせているんだな」

見張るようにジョージから頼まれた彼も、初めて尊顔を拝したようでコチラも嬉しそうだ。

「次に王太子殿下と婚約者のマティルダ様だ!」

「隣国から来た王族の方よね。
落ち着いたベージュオレンジの薔薇模様のドレス素敵ね」

「本当だ。可愛い~!
青みがかった金髪に、よくお似合いだわ」

容姿を話しはなしで、髪の色や着ているドレスの話題ばかり。
まだ距離があるので、顔がハッキリと識別できないからだろう。
ハロルドはだんだんと近づいてくる彼女を、微妙な感情で目をらして待ち構えていた。

『来た来た、見えてきたぞ!
あれが、あのマティルダか?!
学園では、いつも居るか居ないか存在感がなかった。
その彼女が、堂々と手まで振っている』

光輝くような美丈夫の王太子が、横に座る女性をとろけるような顔で見つめている。
昔の自分とアリエールが、頭に残像として浮かんだ。

マティルダは、こんな気持ちで俺たちを見ていたのか。
自分等の後ろから一人の男が、ボーッとしていたハロルドの体に軽くぶつかってきた。

「おいっ、道に飛び出すな!」
 
付き添いの彼が、その男に注意する。
ハロルドはこの怪しい男を気になると、自然と無意識に足が動き追いかけてる。

『あの男は、マティルダが乗っている馬車に向かって走っている。
なんだろう。
とてもイヤな予感がする』

「待てーー、ハロルド!
何処に行くんだ!
アイツ、人混みを利用して逃げ出したのか!?」

沿道に配置ついた騎士に、状況を伝えて走り出すと周りだけは異変を知る。
だがその他はそんなことはお構いなしで、王族が通る馬車に夢中になっていた。

「アドニス様、皆様は私たちに笑顔で声をかけてくれますわ。
私の名前までー」

胸がドキドキして高まる中で、沿道から飛び出す人が彼女に走ってくる。
突然現れた人影に馬が驚くと、前足を挙げて急に暴れだした。

「きゃあー!」

「どうしたんだ!」

二人は左右に分かれて馬車に掴まると、マティルダの目の前にナイフを振りかざす男がー。

「……、や。やめな……」

気丈に注意しようすると、ギリギリで後ろからその手をハロルドが必死に止めている。

「マティルダ!
危ないー!!」

揺れが止まると彼女を見て、アドニスが咄嗟に口に出し右腕を引こうとする。
2人の男が暴れて、捉えようとするハロルドの捕まえていた腕にナイフをグサリと刺していた。

「誰かー、来て下さい!
ハロルドをー!
彼を助けてあげて!!」

メアリーたちの乗る後方の馬車が、マティルダたちの騒ぎに気づくのが遅れてしまう。

「エドお兄様。
前方の馬車の様子が可怪おかしいですわ」

「襲撃されている!
誰かが男を止めているようだ」

メアリーは懐に隠し持っていたモノを、暴漢に向けてソチラに思いっ切り投げた。
小さな袋は組み合って争っている二人にあたり、中身が溢れて広がりを見せる。

その粉が周りの風に乗る。

「メアリー、お前は何を投げ捨てたんだ!
ゴホン、クッシュン!」

「えへっ、胡椒こしょうの入った袋よ。
これで、時間は稼げたでしょう


「バカ、周りをよく見ろ!
敵も見方も混乱している。
全部、お前のせいだぞ!」

中身を知っていた彼女は、ちゃっかりとハンカチで鼻口を押さえて喋る。
目だけキョロキョロして、やり過ぎに自分でもビックリしているようだ。
こんな防御アイテムを用意していたとは、エドワードは夫になる親友ロバートを気の毒に思った。
その彼もクシャミし続け争う二人に寄って行くと、地面にポツポツと赤いシミがついている。

『どちらかが、怪我をしている。
ハロルドか、襲撃犯か。
どちらなんだー!』

ロバートはクシャミに堪えて涙目になりながも、しっかりと目を開いて確認をする。
そして、見えてきたのは悲惨な状況だった。






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