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第8章
16 涙の再会
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小さいが手入れが行き届いた屋敷に、家族は泣き笑いして再会を喜んでいる。
その地は、偽りの婚姻をする前カーラと過ごした場所であった。
「こうしてまた、会えるようになるとは……。
二人は、少し痩せたのではないか?
生活は辛くはなかったか?」
労いの言葉をかけている人の方が、ずっと痩せて疲労して見える。
「貴方、私よりご自分の方がー。
5年間、ご無理をされたのではない。
伯爵なら子爵になり、世間からの風当たりがありましたでしょう!?」
夫に抱き締められた時、全体的に小さく細くなったように感じた。
「お父様、私が冷静になれずにご迷惑をおかけしました。
ハロルド様にあんな恐ろしい事をしなければー」
「アリエールと一緒で私もー。
昔の事を誰かに知られたくなくて、脅されるのが恐怖で手にかけようとした。
あの時、どうして……」
「もう、いいのだ。
やってしまった事を忘れてはいけないが、一からやり直そう。
お前たちが側にいてくれるだけで、幸せで元気が沸いてくるのだ。
カーラ、アリエール。お帰り」
「貴方!」
「お父様!」
サンダース家には、以前とは違う空気が流れている。
嵐が去った青空のような、一から始まる清々しさを心に宿していた。
恩赦の話になり、3人はマティルダが自分等を救ってくれたのを知る。
「お姉様、……。
マティルダ様は私に励ましのお手紙を書いてくれました。
いつも真面目に過ごせば、幸運が舞い込むとー」
「それが恩赦だったのね。
あの子……。
マティルダ様は、陛下にずっとお願いしてくれていたのですわ」
口を閉じて考えるのは、自分等がマティルダにしていた行為。
「酷い扱いをしていたのに、こうして助けてくれた。
私は貴族として、将来王太子妃になるマティルダ様を影から支えていこう!」
頷きあう親子たちは、瞳を輝かして鼻をすすり泣く。
人目を気にしての再会だが、いつかは堂々と外へ出れるのはそう遠くではないだろう。
幸福の裏側には、不幸が訪れようとしている。
ハロルドと婚姻した商家は、憲兵たちが踏み入ろうとしていた。
「ハロルドは何処にいるんだ!
あの野郎、仕事をサボって!
まさか、よそで浮気でもしているのか?!」
「お父様、やめてよ!
彼は、貴族の出身なの。
お友だち所へ遊びに行って、家のために商談でもしているんだわ」
娘は婿を庇っているが、最後に顔を見たのは何時だか覚えていない。
「婚姻したばかりで、貴女に行き先も告げずに出掛けたの!?男爵の息子だから、平民の私たちをバカにしてるじゃあない」
新婚の娘を哀れに思い母親は、嘆きこの場にいないハロルドを罵る。
「あの男が資金を用立ててくれるから、今回は許すとするか。
しかし、何処からあの金を…」
実家の男爵家は、彼とは縁を切る代わりに持参金を貰った。
義父はその金を使って、裏では悪どいことをして儲けていた。
部屋の扉を強く叩かれてから、店の者が血相を変えて雪崩込んでくる。
「旦那様!!
大変でございます!
けん、憲兵が店に来てます。
店番の者を脅して、勝手に帳簿を持って行きました」
「な、なんだと!
店はどうなっているんだ!」
責任者が拒んだせいで中はかなり荒らされてしまったと、告げに来た人は焦りぎみに説明する。
「今から店に行こう!
お前、ハロルドが何処にいるか知ってるか?
最近、見てないか!?」
「ハロルド様ですか?
そういえばー。
2週間前に旦那様と店に居たのを見たきり、私は彼を見てませんが……」
思い出したようでビックリして、そんな前なのかと疑っている。
「貴族は平民の考えとは違うのを引いても、新婚の妻に2週間も妻に連絡をしないものか」
独り言を言うと、彼は上着を掴むと足早に店に向かう。
馬車の中から、野次馬が店の前に集まっているのが見える。
「おい、てめえら!
なにを見てんだよ!
店門じゃないんだぞ!
退け散れ、邪魔だぁー~!!」
人混みを両手で払い退かすと、着いたらその荒れように唖然と立ちすくむ。
「旦那様、帳簿を全て持っていかれました。
疑われるような商いをしていたんですか?」
知らない真面目な店員たちは、不安げに主人に問いかけてくる。
「してるわけない!
彼らは、誤解をしてるんだ」
「安心しました!
みんな、旦那様がそう言ってくれている。
帳簿は平気ですよね?」
「当たり前だ!
アイツらは、帳簿を手にしたんだろう。
別に悪いことしてないんだから、隅々まで調査すればいい」
きっぱりと反論してくれて、主人を信じる店の人たち。
持ち場を決めて、荒れた店の中を掃除をし始める。
『バレるはずはない。
だが、ハロルドが気になる。
こんな時に近くに居ないのがー。
まさか、捕まっていないよな』
彼の勘が見事に当たってしまっていた。
後片付けをする従業員を眺めて、絶対にバレないと自分にいい聞かせてる。
その地は、偽りの婚姻をする前カーラと過ごした場所であった。
「こうしてまた、会えるようになるとは……。
二人は、少し痩せたのではないか?
生活は辛くはなかったか?」
労いの言葉をかけている人の方が、ずっと痩せて疲労して見える。
「貴方、私よりご自分の方がー。
5年間、ご無理をされたのではない。
伯爵なら子爵になり、世間からの風当たりがありましたでしょう!?」
夫に抱き締められた時、全体的に小さく細くなったように感じた。
「お父様、私が冷静になれずにご迷惑をおかけしました。
ハロルド様にあんな恐ろしい事をしなければー」
「アリエールと一緒で私もー。
昔の事を誰かに知られたくなくて、脅されるのが恐怖で手にかけようとした。
あの時、どうして……」
「もう、いいのだ。
やってしまった事を忘れてはいけないが、一からやり直そう。
お前たちが側にいてくれるだけで、幸せで元気が沸いてくるのだ。
カーラ、アリエール。お帰り」
「貴方!」
「お父様!」
サンダース家には、以前とは違う空気が流れている。
嵐が去った青空のような、一から始まる清々しさを心に宿していた。
恩赦の話になり、3人はマティルダが自分等を救ってくれたのを知る。
「お姉様、……。
マティルダ様は私に励ましのお手紙を書いてくれました。
いつも真面目に過ごせば、幸運が舞い込むとー」
「それが恩赦だったのね。
あの子……。
マティルダ様は、陛下にずっとお願いしてくれていたのですわ」
口を閉じて考えるのは、自分等がマティルダにしていた行為。
「酷い扱いをしていたのに、こうして助けてくれた。
私は貴族として、将来王太子妃になるマティルダ様を影から支えていこう!」
頷きあう親子たちは、瞳を輝かして鼻をすすり泣く。
人目を気にしての再会だが、いつかは堂々と外へ出れるのはそう遠くではないだろう。
幸福の裏側には、不幸が訪れようとしている。
ハロルドと婚姻した商家は、憲兵たちが踏み入ろうとしていた。
「ハロルドは何処にいるんだ!
あの野郎、仕事をサボって!
まさか、よそで浮気でもしているのか?!」
「お父様、やめてよ!
彼は、貴族の出身なの。
お友だち所へ遊びに行って、家のために商談でもしているんだわ」
娘は婿を庇っているが、最後に顔を見たのは何時だか覚えていない。
「婚姻したばかりで、貴女に行き先も告げずに出掛けたの!?男爵の息子だから、平民の私たちをバカにしてるじゃあない」
新婚の娘を哀れに思い母親は、嘆きこの場にいないハロルドを罵る。
「あの男が資金を用立ててくれるから、今回は許すとするか。
しかし、何処からあの金を…」
実家の男爵家は、彼とは縁を切る代わりに持参金を貰った。
義父はその金を使って、裏では悪どいことをして儲けていた。
部屋の扉を強く叩かれてから、店の者が血相を変えて雪崩込んでくる。
「旦那様!!
大変でございます!
けん、憲兵が店に来てます。
店番の者を脅して、勝手に帳簿を持って行きました」
「な、なんだと!
店はどうなっているんだ!」
責任者が拒んだせいで中はかなり荒らされてしまったと、告げに来た人は焦りぎみに説明する。
「今から店に行こう!
お前、ハロルドが何処にいるか知ってるか?
最近、見てないか!?」
「ハロルド様ですか?
そういえばー。
2週間前に旦那様と店に居たのを見たきり、私は彼を見てませんが……」
思い出したようでビックリして、そんな前なのかと疑っている。
「貴族は平民の考えとは違うのを引いても、新婚の妻に2週間も妻に連絡をしないものか」
独り言を言うと、彼は上着を掴むと足早に店に向かう。
馬車の中から、野次馬が店の前に集まっているのが見える。
「おい、てめえら!
なにを見てんだよ!
店門じゃないんだぞ!
退け散れ、邪魔だぁー~!!」
人混みを両手で払い退かすと、着いたらその荒れように唖然と立ちすくむ。
「旦那様、帳簿を全て持っていかれました。
疑われるような商いをしていたんですか?」
知らない真面目な店員たちは、不安げに主人に問いかけてくる。
「してるわけない!
彼らは、誤解をしてるんだ」
「安心しました!
みんな、旦那様がそう言ってくれている。
帳簿は平気ですよね?」
「当たり前だ!
アイツらは、帳簿を手にしたんだろう。
別に悪いことしてないんだから、隅々まで調査すればいい」
きっぱりと反論してくれて、主人を信じる店の人たち。
持ち場を決めて、荒れた店の中を掃除をし始める。
『バレるはずはない。
だが、ハロルドが気になる。
こんな時に近くに居ないのがー。
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