178 / 207
第8章
3 再会は7つ音色
しおりを挟む
いろんな香水の匂いが混じり合い臭くて具合が悪くなる、隣国の王太子。
最近なったばかりの若き未来の王を約束された彼に、目がギラギラし血走って群がる未婚の貴族令嬢たち。
彼は声をかけられるのを待っているのを無視して、一人の女性のみを探していた。
「ロバート様、見て!
令嬢たちを気にしないで、マティルダだけを探しているわ。
何処にいるのかしら?」
「居たぞ!
エドワード殿下とイブリン侯爵令嬢と話している」
「お互いに離れた場所にいる。
あれでは、エドお兄様はマティルダを見つけにくいわ。
ロバート様、助けに行きましょう」
「メアリー、待て!
二人で行って、マティルダ公女殿下が動いて見失ったらどうする?!
君が王太子を、私が彼女を連れてくる」
「なるほど、あり得るわね」
「待ち合わせをしようか。
あちらにある柱時計の前にしよう!」
「ええ、わかったわ。
あの時計の前ね。
ちゃんと、マティルダを連れて来て下さいませ!」
14歳の王女殿下は、鮮やかな薔薇の花のようなローズピンクのドレスを翻して足早に兄へ歩みだした。
『大丈夫だろうか。
何重にもなっている輪の中を、行くつくことが出来るのだろうか』
彼女の様子を伺ってから行くことにしたロバートは、それが無用な考えになるのだった。
盛りがついた年上の令嬢たちを、掻き分けるのは面倒くさいと思って声を張り上げた。
「貴女方、退いて下さる?
兄のエドワード王太子と話がしたいのよ!」
兄という単語を耳にすると、輪を作っていた令嬢たちはいち早く避けるように道を作った。
頑張って目的を果たす婚約者に、彼は一人で口元を隠して人目を気にして笑う。
『王女だけあり、あの手は慣れきっている。
次は、私の番だな』
こちらはエドワードとイブリン嬢が、引きぎみにマティルダ公女殿下の周りにいる男性陣を2人で牽制しているみたいに見えた。
殿方たちが彼女に対して話す内容を、集中して聞いてみたがおかしくて笑いたくなる。
「公女殿下、どうか最初に踊る名誉を私にお与えください」
「この日をずっと夢見ていました。
マティルダ殿下、私にー」
「いやいや、先に誘っていたのは私だよ。
公女殿下、踊ってくれますよね?」
貴公子風のきらびやかな3人は、次々に自分の欲望をウザすぎるくらいに頼み込んでいた。
『目の前でハッキリ申し込んでいるのに、空気扱いしている。
なんで、エドワードが代わって断って謝っているんだ!?』
イブリンだけと楽しく喋っている彼女は、この状況を楽しんでいる様にみえた。
昔の引っ込み思案の彼女は、王族の一員になって性格が変化したのか。
弱りきった親友を、助ける為にロバートは知らん顔をして乱入した。
「マティルダ嬢、お久しぶりです!」
自分が彼女と親しい人物だと彼らに分からせる、ロバートの作戦。
「あらあら?
貴方は…?
どちらの誰でしたっけ?」
意地悪なのか、本気なのか。
茶目っ気たっぷりの表情は、わざと何だとロバートは驚き顔をする。
「4年ぶりの再会ですからね。
エリザベス王妃様の懐妊祝いに、隣国から同行して来た。
ロバート・アンゲロスと申します」
「ああ、メアリー王女殿下のご婚約者のー!
あまり馴れ馴れしいから、この国を方かと思いましたわ」
『昔の仕返しか?』
目を泳がして焦り気味な公爵令息は、まさかマティルダの態度にどう言い返せばいいのかと悩む。
何をしたか忘れたが、身分が上になった彼女は遊んでみた。
『やってみたかったのよね。
ずっと身分が下で、見下されていたから逆にしてみた。
あはっ、やりすぎた!?』
「嘘よ、冗談よ!
ロバート様、意地悪してごめんなさいね」
彼を覗き込む仕草は、記憶の中の彼女よりも美しく気品があった。
頭を軽く左右に振る。
「メアリーが、公女殿下に会いたがっております。
こちらに来てはくれませんか?」
婚約者メアリーが会いたがってると嘘をついた。
待ち合わせの柱時計の前へ呼び出して、彼と偶然に出会うように誘導する。
「私も、メアリー王女殿下を探してましたのよ。
そうそう、ロバート様!
メアリー王女殿下との御婚約、おめでとうございます」
「祝い状とお祝いの品を頂き、改めてお礼を申します。
では、メアリーの所へ行きましょうか」
彼の後をぞろぞろついて行くマティルダたちを、彼らは会話を聞いていて見送っていた。
ダンスの申し込みを空振りに終わった男たちは、次のターゲットを探しに散り散りになる。
『こんな事だと思った。
結局は、身分にひかれて誘っていたのね』
王弟の娘としてここへ来てから、彼女の周りにはこの手の男性ばかりで嫌になってしまう。
お陰で恋するのも控えて、王妃エリザベスの話し相手になり親しくされていた。
ちょうど柱時計の7つ音が鳴る中で、アドニスとアドニスはそれに合わせて心臓が高鳴った。
鳴り終えると、4年も振りに二人は目を合わせる。
互いにあれから容姿が変わっていて、恥ずかしいのか顔に赤みが差す。
メアリーとロバートは自分たちの作戦の遂行に満足しては、二人の照れている様子を見て含み笑いをしている。
最近なったばかりの若き未来の王を約束された彼に、目がギラギラし血走って群がる未婚の貴族令嬢たち。
彼は声をかけられるのを待っているのを無視して、一人の女性のみを探していた。
「ロバート様、見て!
令嬢たちを気にしないで、マティルダだけを探しているわ。
何処にいるのかしら?」
「居たぞ!
エドワード殿下とイブリン侯爵令嬢と話している」
「お互いに離れた場所にいる。
あれでは、エドお兄様はマティルダを見つけにくいわ。
ロバート様、助けに行きましょう」
「メアリー、待て!
二人で行って、マティルダ公女殿下が動いて見失ったらどうする?!
君が王太子を、私が彼女を連れてくる」
「なるほど、あり得るわね」
「待ち合わせをしようか。
あちらにある柱時計の前にしよう!」
「ええ、わかったわ。
あの時計の前ね。
ちゃんと、マティルダを連れて来て下さいませ!」
14歳の王女殿下は、鮮やかな薔薇の花のようなローズピンクのドレスを翻して足早に兄へ歩みだした。
『大丈夫だろうか。
何重にもなっている輪の中を、行くつくことが出来るのだろうか』
彼女の様子を伺ってから行くことにしたロバートは、それが無用な考えになるのだった。
盛りがついた年上の令嬢たちを、掻き分けるのは面倒くさいと思って声を張り上げた。
「貴女方、退いて下さる?
兄のエドワード王太子と話がしたいのよ!」
兄という単語を耳にすると、輪を作っていた令嬢たちはいち早く避けるように道を作った。
頑張って目的を果たす婚約者に、彼は一人で口元を隠して人目を気にして笑う。
『王女だけあり、あの手は慣れきっている。
次は、私の番だな』
こちらはエドワードとイブリン嬢が、引きぎみにマティルダ公女殿下の周りにいる男性陣を2人で牽制しているみたいに見えた。
殿方たちが彼女に対して話す内容を、集中して聞いてみたがおかしくて笑いたくなる。
「公女殿下、どうか最初に踊る名誉を私にお与えください」
「この日をずっと夢見ていました。
マティルダ殿下、私にー」
「いやいや、先に誘っていたのは私だよ。
公女殿下、踊ってくれますよね?」
貴公子風のきらびやかな3人は、次々に自分の欲望をウザすぎるくらいに頼み込んでいた。
『目の前でハッキリ申し込んでいるのに、空気扱いしている。
なんで、エドワードが代わって断って謝っているんだ!?』
イブリンだけと楽しく喋っている彼女は、この状況を楽しんでいる様にみえた。
昔の引っ込み思案の彼女は、王族の一員になって性格が変化したのか。
弱りきった親友を、助ける為にロバートは知らん顔をして乱入した。
「マティルダ嬢、お久しぶりです!」
自分が彼女と親しい人物だと彼らに分からせる、ロバートの作戦。
「あらあら?
貴方は…?
どちらの誰でしたっけ?」
意地悪なのか、本気なのか。
茶目っ気たっぷりの表情は、わざと何だとロバートは驚き顔をする。
「4年ぶりの再会ですからね。
エリザベス王妃様の懐妊祝いに、隣国から同行して来た。
ロバート・アンゲロスと申します」
「ああ、メアリー王女殿下のご婚約者のー!
あまり馴れ馴れしいから、この国を方かと思いましたわ」
『昔の仕返しか?』
目を泳がして焦り気味な公爵令息は、まさかマティルダの態度にどう言い返せばいいのかと悩む。
何をしたか忘れたが、身分が上になった彼女は遊んでみた。
『やってみたかったのよね。
ずっと身分が下で、見下されていたから逆にしてみた。
あはっ、やりすぎた!?』
「嘘よ、冗談よ!
ロバート様、意地悪してごめんなさいね」
彼を覗き込む仕草は、記憶の中の彼女よりも美しく気品があった。
頭を軽く左右に振る。
「メアリーが、公女殿下に会いたがっております。
こちらに来てはくれませんか?」
婚約者メアリーが会いたがってると嘘をついた。
待ち合わせの柱時計の前へ呼び出して、彼と偶然に出会うように誘導する。
「私も、メアリー王女殿下を探してましたのよ。
そうそう、ロバート様!
メアリー王女殿下との御婚約、おめでとうございます」
「祝い状とお祝いの品を頂き、改めてお礼を申します。
では、メアリーの所へ行きましょうか」
彼の後をぞろぞろついて行くマティルダたちを、彼らは会話を聞いていて見送っていた。
ダンスの申し込みを空振りに終わった男たちは、次のターゲットを探しに散り散りになる。
『こんな事だと思った。
結局は、身分にひかれて誘っていたのね』
王弟の娘としてここへ来てから、彼女の周りにはこの手の男性ばかりで嫌になってしまう。
お陰で恋するのも控えて、王妃エリザベスの話し相手になり親しくされていた。
ちょうど柱時計の7つ音が鳴る中で、アドニスとアドニスはそれに合わせて心臓が高鳴った。
鳴り終えると、4年も振りに二人は目を合わせる。
互いにあれから容姿が変わっていて、恥ずかしいのか顔に赤みが差す。
メアリーとロバートは自分たちの作戦の遂行に満足しては、二人の照れている様子を見て含み笑いをしている。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる