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第7章
29 バカンスの終わり
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夏のバカンスが終わり、人生の岐路に立たされた人たちはこれからどう歩き出すのか。
今日のパーティーで、王宮とこの国ともお別れする。
「マティルダ、今日は私だけと踊って!
父上のブライオン殿下は、まぁ除外するけどね」
「ふふふ、いいですよ。
アドニス殿下、いい男に成長して下さい。
反面教師を、この夏でたくさん見れて勉強になったでしょう」
「いすぎて誰が1番か分からないよ。
でも、悪いがマティルダの元父上かなぁ」
サンダース伯爵は子爵に落とされた。
理由は亡くなっていた正妻に代わり平民を妻にしたてあげた罪だ。
その他にも二人同じことをしていて、こちらも罰を受けた。
「貴族は国民の2割しかいません。
子供は病気になると亡くなりやすい。
自然に貴族の人口が減ります」
「うん、増えすぎても減りすぎても良くない。
父上は、私に何とかしろと丸投げだよ」
「宿題ですね。
陛下はアドニス殿下に、貴族の未来を委ねたのです。
代替わりになってから、新しい王で出来きます」
その時は王が亡くなる時で、泣く暇もなく国政は動き続ける。
「約束はしないけど、迎えに行くつもりだ。
マティルダは……。
私の初恋の人だからね」
普通は約束して、待って欲しいというのだけどと笑いそうになる。
「うまく逃げましたわね。
いいですよ。
私もアドニス殿下を待ちません。
好きな人が出来たら、その方だけを見つめますから」
酷い女だとアドニスは思うけど、彼女らしく正直で怒れない。
「それでいい!
人の気持ちは変わり、間近で見ていて恋愛は難しいって感じたよ。
そんな事を考えるよりは、やらなくてはいけないことが多い」
「失礼しますね。
女性は殿方よりも、支度に時間がかかりますのでー」
うしろ姿を見ていた彼は、夏から秋へ変わりつつある空を見上げた。
淑女たちは、女官たちに腰を締め付けられて悲鳴をあげる。
「お願いですから、もうそこでやめてください。
息ができなくなる!」
「マティルダ様は背が高いから痩せて見えますが、寸胴に見えます。
もう少しだけ我慢できませんか?」
「ムリ、別にスタイルが悪いって思われても構わない。
それより、体調が悪くなる方が良くないです」
「本人がそう仰るなら……」
マティルダ担当のメイドは、引っ張っていた手を緩めた。
そんなやり取りを愉快そうにみていたのは、コルセットがまだ関係ないメアリー王女。
「成人されたお姉様たちは、ドレスを着るだけで大変ですわね。
こんな時は子供で良かった!」
「メアリー王女が羨ましい。
そんな可愛いドレスを着れるんですもの。
子供の時はアリエールが着ない服ばかりで、私には似合わなくて毎日が憂鬱でした」
王女なら自分の好きなものばかり用意して貰えて、これではワガママになるのも仕方ない。
一緒にいて2ヶ月になるが、最初の頃よりもトゲトゲしさがなくなったように感じる。
この成長を見ていたかったけど、離れた場所から見守り続けよう。
「マティルダ、ちょっとこっちに来て!」
バルコニーに連れていかれると、カメオのブローチを見せてくる。
「これね、私の横顔を掘ったブローチなの。
一緒に持っていってくれない。これを見て、私をたまには思い出して欲しい」
「メアリー王女様、存じていたのですね。
お気持ちは嬉しく思いますが…。
私も何かお渡ししたいけど、何も持ってません」
小さな頭を振り続けて、彼女は笑ってはいたが目を潤ませた。
「もうたくさん貰ってるわ。
マティルダ、いい女になるからまた、いつか会えるよね」
「えぇ、昔の私なら会えませんがー。
これからの新しい私なら会えます。
負けないように、いい女に私もなるように努力しますわ!」
マティルダは、カメオのブローチを胸元に付けてみる。
「今のドレスには合わないわ。
無理して付けなくても……」
つけて見てくるりと回り、窓ガラスに映る自分に上機嫌。
こんな彼女に、それ以上は王女でも言えない。
『身分的には私とほぼ同じになったけど、マティルダはこのままでいくのだろうな。
王弟の娘として、もう少し気品をつけて欲しい…。
アドお兄様から、ちょっと言って貰おうかなぁ』
薄暗くなってキャンドルの火がついて、くっきりとマティルダの笑顔が窓に映り込んでいた。
夏の最後のバカンスを飾る、豪華な夜会が始まる。
今日のパーティーで、王宮とこの国ともお別れする。
「マティルダ、今日は私だけと踊って!
父上のブライオン殿下は、まぁ除外するけどね」
「ふふふ、いいですよ。
アドニス殿下、いい男に成長して下さい。
反面教師を、この夏でたくさん見れて勉強になったでしょう」
「いすぎて誰が1番か分からないよ。
でも、悪いがマティルダの元父上かなぁ」
サンダース伯爵は子爵に落とされた。
理由は亡くなっていた正妻に代わり平民を妻にしたてあげた罪だ。
その他にも二人同じことをしていて、こちらも罰を受けた。
「貴族は国民の2割しかいません。
子供は病気になると亡くなりやすい。
自然に貴族の人口が減ります」
「うん、増えすぎても減りすぎても良くない。
父上は、私に何とかしろと丸投げだよ」
「宿題ですね。
陛下はアドニス殿下に、貴族の未来を委ねたのです。
代替わりになってから、新しい王で出来きます」
その時は王が亡くなる時で、泣く暇もなく国政は動き続ける。
「約束はしないけど、迎えに行くつもりだ。
マティルダは……。
私の初恋の人だからね」
普通は約束して、待って欲しいというのだけどと笑いそうになる。
「うまく逃げましたわね。
いいですよ。
私もアドニス殿下を待ちません。
好きな人が出来たら、その方だけを見つめますから」
酷い女だとアドニスは思うけど、彼女らしく正直で怒れない。
「それでいい!
人の気持ちは変わり、間近で見ていて恋愛は難しいって感じたよ。
そんな事を考えるよりは、やらなくてはいけないことが多い」
「失礼しますね。
女性は殿方よりも、支度に時間がかかりますのでー」
うしろ姿を見ていた彼は、夏から秋へ変わりつつある空を見上げた。
淑女たちは、女官たちに腰を締め付けられて悲鳴をあげる。
「お願いですから、もうそこでやめてください。
息ができなくなる!」
「マティルダ様は背が高いから痩せて見えますが、寸胴に見えます。
もう少しだけ我慢できませんか?」
「ムリ、別にスタイルが悪いって思われても構わない。
それより、体調が悪くなる方が良くないです」
「本人がそう仰るなら……」
マティルダ担当のメイドは、引っ張っていた手を緩めた。
そんなやり取りを愉快そうにみていたのは、コルセットがまだ関係ないメアリー王女。
「成人されたお姉様たちは、ドレスを着るだけで大変ですわね。
こんな時は子供で良かった!」
「メアリー王女が羨ましい。
そんな可愛いドレスを着れるんですもの。
子供の時はアリエールが着ない服ばかりで、私には似合わなくて毎日が憂鬱でした」
王女なら自分の好きなものばかり用意して貰えて、これではワガママになるのも仕方ない。
一緒にいて2ヶ月になるが、最初の頃よりもトゲトゲしさがなくなったように感じる。
この成長を見ていたかったけど、離れた場所から見守り続けよう。
「マティルダ、ちょっとこっちに来て!」
バルコニーに連れていかれると、カメオのブローチを見せてくる。
「これね、私の横顔を掘ったブローチなの。
一緒に持っていってくれない。これを見て、私をたまには思い出して欲しい」
「メアリー王女様、存じていたのですね。
お気持ちは嬉しく思いますが…。
私も何かお渡ししたいけど、何も持ってません」
小さな頭を振り続けて、彼女は笑ってはいたが目を潤ませた。
「もうたくさん貰ってるわ。
マティルダ、いい女になるからまた、いつか会えるよね」
「えぇ、昔の私なら会えませんがー。
これからの新しい私なら会えます。
負けないように、いい女に私もなるように努力しますわ!」
マティルダは、カメオのブローチを胸元に付けてみる。
「今のドレスには合わないわ。
無理して付けなくても……」
つけて見てくるりと回り、窓ガラスに映る自分に上機嫌。
こんな彼女に、それ以上は王女でも言えない。
『身分的には私とほぼ同じになったけど、マティルダはこのままでいくのだろうな。
王弟の娘として、もう少し気品をつけて欲しい…。
アドお兄様から、ちょっと言って貰おうかなぁ』
薄暗くなってキャンドルの火がついて、くっきりとマティルダの笑顔が窓に映り込んでいた。
夏の最後のバカンスを飾る、豪華な夜会が始まる。
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