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第7章
24 最後の裁き
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3人対3人は人数的には同じであったが、身分差で宝石と石ころ位に分かりやすく違う。
王妃はマティルダから聞かされた以上に、この親子は異常だと一目みて見抜いていた。
『陛下もゴミを見る目付きになられている。
マティルダに知らせずに、始末するおつもりかもしれない』
誰もが次の言葉を待つなか、王が臣下であるサンダース伯爵に直接質問をしてくる。
普段は人を介しての会話であるから、滅多にない展開である。
「サンダースよ!
お前は貴族の決まりを破り、平民を妻に仕立てあげたな。
正確に話すと、亡くなった隣国から嫁いだ者を生かたままにした。
違うか!」
人を制する声で話し、伯爵の隣にいるカーラを射るように睨む。
「ヒィ!」、彼女は変な短い声を出して恐れて一歩後退した。
「見に覚えがあるから、そのように怯えているのか。
平民カーラよ!
なぜサンダースの行いを、正しく止めなかったのだ」
立っていられなくなり、腰を抜かすようにその場に崩れ落ちた。
「カ、カーラ!大丈夫か?」
「カーラ、お前の名前はセリメーヌではない!
よくも名を騙り、彼女に成り代わってサンダース伯爵夫人を偽っていたな!」
ブライオンは椅子から立ち上がると、床に手をつく女に指を指して怒鳴る。
「お許しをー。
私が私がそうしろと言ったのです。
カーラと夫婦になりたかった。
私との間に授かった子を、貴族として育てたかったのです!」
夫人の肩に手を置き、王に対して情けを乞うように言い訳をする。
「それがそちの罪だ!
貴族と平民の婚姻は、今は認められていない。
それを望むなら、伯爵の地位を降りるしかないのを分かってしたな!」
「陛下、死者を蔑ろにする行為。
本当の子ではないから、お前たちは辛く当たっていたのでしょう。
あの娘マティルダは、自分だけ家族から仲間外れにされていたのか。
悩んでいたようでした」
マティルダが真実を知るまで、幼い頃からどんなに心を痛めたことか。
王妃は同じ子を持つ、同じ母として黙っていられない。
「お姉様は性格が悪い!
自分はココに居ないで、偉い方をお願いして私たちを追い込もうとしている!」
アリエールだけが両陛下に食って掛かり、全部はマティルダのせいでこうなったとばかりに恨み言を言う。
「性根が腐りきっておる!
最後の裁きは、余がしてやろう!
サンダース伯爵はー」
話題にされている本人は、出入り口で貴族たちを観察しては自国とのちがいを話し合っては楽しんでいる。
「こちらでお茶をしてましたの。
なかなか、すてきな場所を探し当てましたわね」
「マティルダ様、ごきげんよう」
「ご家族の方々が、貴女に会いにいらっしゃったのでしょう?」
「先ほど、マイヤー伯爵様とこちらを通りました。
ご家族の皆さまとお会いしましたか?」
「家族?
そんなはずはないです。
今、あの人たちはココに来れませんわ」
罪を犯して牢屋に入っている。
そんな二人は、王宮に来れないはずだ。
「マティルダ様のご活躍を讃えるために、貴女に秘密にお呼びになられたのではない?
きっと、驚かそうとしているのよ」
いがみ合っていたが令嬢たちと一緒に意見を言うと、良かったですねって喜んでくれていた。
「あ、そうでしたか。
知らせて貰ってないので、すごく驚いております」
驚きすぎて彼女は、この先の言葉が出てこないが咄嗟に疑問が口に出た。
「サンダース伯爵は、どちらに行かれましたか?
3人はどこに……」
「女官にでも伺えば、教えて頂けるでしょう。
マティルダ様のお部屋にでも居て、お待ちしているかもしれませんよ」
サーっと血の気が引くようになり、どう探せばいいのか焦りを感じていた。
「探しに…、行って参ります。
素晴らしい情報を有り難うございました」
「ええ、私たちも楽しかったですわ」
楽しかったって言葉が気になったが、行き交う貴族たちを指しているのかと深く考えなかった。
「失礼します、皆さま」
早く彼らを見つけなくては、目にした女官たちに聞いてみるが答えはみな同じ。
「すみません、存じ上げません」
「いいのよ。
仕事中にごめんなさいね」
立ち止まり深呼吸すると、上下する背中を見て自分の名前を呼ぶ。
「マティルダ、どうかしたのか?」
中性的な天使、アドニスが振り向いた顔を見てビックリした。
「そんな顔をして、なにがあった?!
マティルダ、話してくれ」
彼は、彼女のいるところへ走るように近づいた。
これからも起きる、奇想天外な展開は堅物なマティルダについていけるのか。
役に立たないと期待はしなかった彼が、斜め上の物凄い活躍をしてくれるのである。
王妃はマティルダから聞かされた以上に、この親子は異常だと一目みて見抜いていた。
『陛下もゴミを見る目付きになられている。
マティルダに知らせずに、始末するおつもりかもしれない』
誰もが次の言葉を待つなか、王が臣下であるサンダース伯爵に直接質問をしてくる。
普段は人を介しての会話であるから、滅多にない展開である。
「サンダースよ!
お前は貴族の決まりを破り、平民を妻に仕立てあげたな。
正確に話すと、亡くなった隣国から嫁いだ者を生かたままにした。
違うか!」
人を制する声で話し、伯爵の隣にいるカーラを射るように睨む。
「ヒィ!」、彼女は変な短い声を出して恐れて一歩後退した。
「見に覚えがあるから、そのように怯えているのか。
平民カーラよ!
なぜサンダースの行いを、正しく止めなかったのだ」
立っていられなくなり、腰を抜かすようにその場に崩れ落ちた。
「カ、カーラ!大丈夫か?」
「カーラ、お前の名前はセリメーヌではない!
よくも名を騙り、彼女に成り代わってサンダース伯爵夫人を偽っていたな!」
ブライオンは椅子から立ち上がると、床に手をつく女に指を指して怒鳴る。
「お許しをー。
私が私がそうしろと言ったのです。
カーラと夫婦になりたかった。
私との間に授かった子を、貴族として育てたかったのです!」
夫人の肩に手を置き、王に対して情けを乞うように言い訳をする。
「それがそちの罪だ!
貴族と平民の婚姻は、今は認められていない。
それを望むなら、伯爵の地位を降りるしかないのを分かってしたな!」
「陛下、死者を蔑ろにする行為。
本当の子ではないから、お前たちは辛く当たっていたのでしょう。
あの娘マティルダは、自分だけ家族から仲間外れにされていたのか。
悩んでいたようでした」
マティルダが真実を知るまで、幼い頃からどんなに心を痛めたことか。
王妃は同じ子を持つ、同じ母として黙っていられない。
「お姉様は性格が悪い!
自分はココに居ないで、偉い方をお願いして私たちを追い込もうとしている!」
アリエールだけが両陛下に食って掛かり、全部はマティルダのせいでこうなったとばかりに恨み言を言う。
「性根が腐りきっておる!
最後の裁きは、余がしてやろう!
サンダース伯爵はー」
話題にされている本人は、出入り口で貴族たちを観察しては自国とのちがいを話し合っては楽しんでいる。
「こちらでお茶をしてましたの。
なかなか、すてきな場所を探し当てましたわね」
「マティルダ様、ごきげんよう」
「ご家族の方々が、貴女に会いにいらっしゃったのでしょう?」
「先ほど、マイヤー伯爵様とこちらを通りました。
ご家族の皆さまとお会いしましたか?」
「家族?
そんなはずはないです。
今、あの人たちはココに来れませんわ」
罪を犯して牢屋に入っている。
そんな二人は、王宮に来れないはずだ。
「マティルダ様のご活躍を讃えるために、貴女に秘密にお呼びになられたのではない?
きっと、驚かそうとしているのよ」
いがみ合っていたが令嬢たちと一緒に意見を言うと、良かったですねって喜んでくれていた。
「あ、そうでしたか。
知らせて貰ってないので、すごく驚いております」
驚きすぎて彼女は、この先の言葉が出てこないが咄嗟に疑問が口に出た。
「サンダース伯爵は、どちらに行かれましたか?
3人はどこに……」
「女官にでも伺えば、教えて頂けるでしょう。
マティルダ様のお部屋にでも居て、お待ちしているかもしれませんよ」
サーっと血の気が引くようになり、どう探せばいいのか焦りを感じていた。
「探しに…、行って参ります。
素晴らしい情報を有り難うございました」
「ええ、私たちも楽しかったですわ」
楽しかったって言葉が気になったが、行き交う貴族たちを指しているのかと深く考えなかった。
「失礼します、皆さま」
早く彼らを見つけなくては、目にした女官たちに聞いてみるが答えはみな同じ。
「すみません、存じ上げません」
「いいのよ。
仕事中にごめんなさいね」
立ち止まり深呼吸すると、上下する背中を見て自分の名前を呼ぶ。
「マティルダ、どうかしたのか?」
中性的な天使、アドニスが振り向いた顔を見てビックリした。
「そんな顔をして、なにがあった?!
マティルダ、話してくれ」
彼は、彼女のいるところへ走るように近づいた。
これからも起きる、奇想天外な展開は堅物なマティルダについていけるのか。
役に立たないと期待はしなかった彼が、斜め上の物凄い活躍をしてくれるのである。
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