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第7章
19 姉への執着
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王のお膝元に馬車が入ると、群衆が道の両側に一目見たい願望に前に出ようとしていた。
「凄い人手ですわ。
行きよりも帰りの方が増えております。
お、お父様……」
「そのどもって呼ぶのを聞くと、こちらまで照れてしまうよ。
マティルダが進言した制度が国民にとってよかったんだろう。
人気が出るのも納得した」
制度とは午前中の休息の王命を意味することである。
あれは、マティルダが考え付いた案であった。
「あんなに暑かった日々が、嘘みたいに涼しくなりました。
毎年するかは分かりませんが、今年みたいでしたら続けて欲しいですわ」
「我が国でも来年から真似てするつもりだよ。
生産性が鈍化していて、昼に休んで後に時間を延ばしてまで働く。
人の体に優しい、良い考えだと思ったからだ」
良いものは国が違っても取り入れるという、柔軟で寛大な大きな心を持っている。
「互いに交流しあって2国が、ますます繁栄できたらいいですね。
そうすれば、もう攻めて戦争なんて考えをしないでしょう」
頷き微笑み合う父娘は、左右に別れて手を振り続ける。
気恥ずかしいが民が王を慕っているのを嬉しくて、マティルダもその想いに答えたいと思っていた。
父ブライオンが、娘に手を貸して馬車から降ろす。
「ブライオン王弟殿下とマティルダ嬢。
折り入って話があるのだ」
他人がいないのでアンゲロス公爵が、サンダース伯爵親子が王宮に来ることを伝える。
「あの3人がここへですか?
陛下が呼びつけたのですか」
「こちらから行く手間が省けて、マティルダ良いじゃないか。
いままで娘を、可愛がってくれたお礼を言わなくてはいけんな」
ブライオンの瞳の奥底にギラッと光ったのを偶然に見てしまった。
マティルダとアンゲロス公爵は、見ない聞かないふりしてを苦笑いをする。
犯罪を犯して牢屋に入れられた二人は、別々の部屋でただ椅子に座り食事をし寝る。
その繰り返し。
あれから何日経ったのか。
日数すら忘れてしまった。
突然、鉄格子の扉が開けられる。
「おい、人殺し令嬢!
早く、外に出ろ!」
鎖骨がくっきり浮かび上がり、艶のある柔らかい長い髪は絡んでベトベトになっている。
「外、外に出ていいのですか?」
牢番を怒鳴りつけて文句しか言わない彼女が、彼らに敬語を使うようになっていた。
『出たら殺されるかも。
ここより酷い場所へ送られるかもしれないわ』
アリエールはおどおどし牢屋をでると、母が同じようにガリガリにやつれて立っていた。
「お母様!夢ではないのね!」
「アリエール!貴女なのね!」
喜び抱き合うと、薄くなった肩に背中に驚く。
お互いに骨と皮になり果てた姿を確かめ合うと、自然に涙が流れ出て止まらない。
「いつまでそうしてるんだ!
邪魔だ、早く行け!
もう戻ってくるんじゃないぞ」
汚い者を見る目付きで、持っていた棒に手をかける。
アリエールは最初の頃に逆らっていた時、棒で服で見えない箇所を殴られていた。
その痛さと恐怖が、体と頭に甦っていく。
「いやっ、打たないで!
出て行くから、叩かないで!」
「大丈夫よ、守ってあげるから!
殴るなら私を殴りなさい!」
「うるさい!早く行けー!」
腰に縄をされながら、二人は牢屋から違う部屋に案内された。
そこには目を潤ませたサンダース伯爵が、妻と娘を待っていた。
「貴方ー!」
「お父様ー!」
薄汚れた自分たちと、綺麗な服を着た目の前にいる人に抱きつかない。
「二人とも、痩せて苦労したな。
これから陛下に呼ばれて、私たちはこれから王宮へ行く」
王さまが私たちを王宮へ?
「マティルダ!
あの子が呼びつけたのね!」
「お姉様が、私たちをこんな風にしたのね!」
サンダース伯爵の離れて後ろに立っていたマイヤー伯爵が、金切り声を出して怒鳴る2人を唖然として信じられないと首を振った。
「お前たちは、どうしてそんなことを言える!
罪を犯したのを忘れていたのか?」
「貴方はどこの誰よ!」
牢屋に入れられてから、礼儀を忘れてしまった彼女。
父親は、そんな娘に息をするのも止める。
「黙るんだ、アリエール!
これ以上は言ってはならない」
「私は君たちを陛下の元へ連れていくために来た、マイヤーと言う名前だ」
「マイヤー伯爵、ご無礼を致しました。
アリエール!
謝罪をするんだ、今すぐに!」
「すみませんでした。
でも、マティルダお姉様がしたんですよね。
陛下のお名を出すなんて、なんて無礼者でしょう!」
マイヤー伯爵には謝罪はするが、あくまでもマティルダを悪者に仕立てあげる。
この令嬢は双子の姉しか興味ないようで、マイヤーは本当の姉でないと知ったときにどうなるかと考えた。
『これから、自分がどこまで落ちるか。
自分の身の振り方を考えるのに、蓋をしている様にみえる。
サンダース伯爵を、陛下はどうするおつもりなのか』
サンダース伯爵だけがげっそりと痩せた暗い表情から、この先の未来が見えているようだ。
マイヤー伯爵は、不潔な姿の女性たちを見られる格好にするように部下に命じた。
この面倒な役目を終わられることだけに集中するのだ。
「凄い人手ですわ。
行きよりも帰りの方が増えております。
お、お父様……」
「そのどもって呼ぶのを聞くと、こちらまで照れてしまうよ。
マティルダが進言した制度が国民にとってよかったんだろう。
人気が出るのも納得した」
制度とは午前中の休息の王命を意味することである。
あれは、マティルダが考え付いた案であった。
「あんなに暑かった日々が、嘘みたいに涼しくなりました。
毎年するかは分かりませんが、今年みたいでしたら続けて欲しいですわ」
「我が国でも来年から真似てするつもりだよ。
生産性が鈍化していて、昼に休んで後に時間を延ばしてまで働く。
人の体に優しい、良い考えだと思ったからだ」
良いものは国が違っても取り入れるという、柔軟で寛大な大きな心を持っている。
「互いに交流しあって2国が、ますます繁栄できたらいいですね。
そうすれば、もう攻めて戦争なんて考えをしないでしょう」
頷き微笑み合う父娘は、左右に別れて手を振り続ける。
気恥ずかしいが民が王を慕っているのを嬉しくて、マティルダもその想いに答えたいと思っていた。
父ブライオンが、娘に手を貸して馬車から降ろす。
「ブライオン王弟殿下とマティルダ嬢。
折り入って話があるのだ」
他人がいないのでアンゲロス公爵が、サンダース伯爵親子が王宮に来ることを伝える。
「あの3人がここへですか?
陛下が呼びつけたのですか」
「こちらから行く手間が省けて、マティルダ良いじゃないか。
いままで娘を、可愛がってくれたお礼を言わなくてはいけんな」
ブライオンの瞳の奥底にギラッと光ったのを偶然に見てしまった。
マティルダとアンゲロス公爵は、見ない聞かないふりしてを苦笑いをする。
犯罪を犯して牢屋に入れられた二人は、別々の部屋でただ椅子に座り食事をし寝る。
その繰り返し。
あれから何日経ったのか。
日数すら忘れてしまった。
突然、鉄格子の扉が開けられる。
「おい、人殺し令嬢!
早く、外に出ろ!」
鎖骨がくっきり浮かび上がり、艶のある柔らかい長い髪は絡んでベトベトになっている。
「外、外に出ていいのですか?」
牢番を怒鳴りつけて文句しか言わない彼女が、彼らに敬語を使うようになっていた。
『出たら殺されるかも。
ここより酷い場所へ送られるかもしれないわ』
アリエールはおどおどし牢屋をでると、母が同じようにガリガリにやつれて立っていた。
「お母様!夢ではないのね!」
「アリエール!貴女なのね!」
喜び抱き合うと、薄くなった肩に背中に驚く。
お互いに骨と皮になり果てた姿を確かめ合うと、自然に涙が流れ出て止まらない。
「いつまでそうしてるんだ!
邪魔だ、早く行け!
もう戻ってくるんじゃないぞ」
汚い者を見る目付きで、持っていた棒に手をかける。
アリエールは最初の頃に逆らっていた時、棒で服で見えない箇所を殴られていた。
その痛さと恐怖が、体と頭に甦っていく。
「いやっ、打たないで!
出て行くから、叩かないで!」
「大丈夫よ、守ってあげるから!
殴るなら私を殴りなさい!」
「うるさい!早く行けー!」
腰に縄をされながら、二人は牢屋から違う部屋に案内された。
そこには目を潤ませたサンダース伯爵が、妻と娘を待っていた。
「貴方ー!」
「お父様ー!」
薄汚れた自分たちと、綺麗な服を着た目の前にいる人に抱きつかない。
「二人とも、痩せて苦労したな。
これから陛下に呼ばれて、私たちはこれから王宮へ行く」
王さまが私たちを王宮へ?
「マティルダ!
あの子が呼びつけたのね!」
「お姉様が、私たちをこんな風にしたのね!」
サンダース伯爵の離れて後ろに立っていたマイヤー伯爵が、金切り声を出して怒鳴る2人を唖然として信じられないと首を振った。
「お前たちは、どうしてそんなことを言える!
罪を犯したのを忘れていたのか?」
「貴方はどこの誰よ!」
牢屋に入れられてから、礼儀を忘れてしまった彼女。
父親は、そんな娘に息をするのも止める。
「黙るんだ、アリエール!
これ以上は言ってはならない」
「私は君たちを陛下の元へ連れていくために来た、マイヤーと言う名前だ」
「マイヤー伯爵、ご無礼を致しました。
アリエール!
謝罪をするんだ、今すぐに!」
「すみませんでした。
でも、マティルダお姉様がしたんですよね。
陛下のお名を出すなんて、なんて無礼者でしょう!」
マイヤー伯爵には謝罪はするが、あくまでもマティルダを悪者に仕立てあげる。
この令嬢は双子の姉しか興味ないようで、マイヤーは本当の姉でないと知ったときにどうなるかと考えた。
『これから、自分がどこまで落ちるか。
自分の身の振り方を考えるのに、蓋をしている様にみえる。
サンダース伯爵を、陛下はどうするおつもりなのか』
サンダース伯爵だけがげっそりと痩せた暗い表情から、この先の未来が見えているようだ。
マイヤー伯爵は、不潔な姿の女性たちを見られる格好にするように部下に命じた。
この面倒な役目を終わられることだけに集中するのだ。
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