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第7章
15 悲しい過去と今後の未来
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目を赤くさせてハンカチを当てる貴婦人は、隣に座っていた夫に恨み言を言う。
マティルダが娘セリメーヌの子供だと知ると複雑な表情をし、娘の面影を求めているようだった。
話はすべて王弟ブライオンがしてくれたが、婚姻する前に手をつけて妊娠させたことに両親は怒りを感じていた。
「殿下と貴方を憎みます。
あの子がこの世を去ったのは、二人のせいですわ!」
母親として娘が亡くなった真実を、どう受け止めていいのか混乱して見えた。
『この夫人は、サンダースに嫁がせるのに反対だったんだ。
それでも夫に逆らえなかった。なら、今までその後どうしているかは調べなかったの』
人は自分を優先し、娘は幸せに暮らしていると信じていたのか。
互いに気まずいままに 、別れてしまったからか。
「他人を責めるのは簡単です。
気にしていたなら、なぜ娘に会いに行かなかったのですか?
私がこうしてココに来なかったら、知ることもなくあの世で母と会えると思っていたのですか?」
唯一物言えるのは、セリメーヌの娘マティルダだった。
「あの子が子を宿し、相手を聞けば教えてくれない。
産みたいと言って、どうしてあげればいいか分からなかった。
結局は最後は人任せで、母親として私は失格だった」
「どこの馬の骨か分からない子を生むのが許せなかった。
金にものを言わせて、セリメーヌを放り出したのは私だ」
話してから後悔して咳払いをする伯爵は、正直で裏表はない人物に感じた。
「この彼女に渡した指輪を見るまで、ここにいるマティルダの存在を知らなかった。
セリメーヌが……、私との子を授かっていたこともだ」
死と背中合わせの戦場で、その時は考えられないだろう。
綺麗ごとを言えば、全ては無益な戦いが運んだ悲劇が原因だ。
「過去は巻き戻せない。
しかし、未来は前にあります。
サンダース伯爵の娘ではないのを知ってしまった。
どうなるのかどうするのか。
自分でも不安でなりません」
孫娘の微妙な立場に祖父母は、哀れみと苛立ちが混ざり合う。
「マティルダ嬢、そなたはセリメーヌの娘で私の孫だ!
伯爵家は息子が継いでいるが、サンダースから出てこちらに来ないか?」
「それがいいわ。
この国にいらっしゃいな!」
目尻のシワを深くさせて、いとおしそうに優しい声で誘いかける。
「伯爵、マティルダは私の養女として来てもらう予定だ」
「「養女ですって(だと)!」」
下げていた目を見開くと、王弟だろうが細めて鋭い視線で激しく攻める。
「そんな目で見ないで下さい。
本当の娘としたいが、そうすると兄に子が出来た時に問題が発生する」
しょうがないと老夫婦は、同時に顔の眉間に溝を作ってうつ向く。
「セリメーヌはどこにいるの?
あの子に、あの子に会いたい。
お墓参りに行きたいわ」
「帰国する際に連れていってくれないか。
花を手向けて、詫びたいのだ」
このささやかな願いに、マティルダは答えられない。
葬られている場所すら知らない。
知っているのは、以前父だと信じていたサンダース伯爵のみ。
「あの男は約束を破った!
セリメーヌを愛せないが、妻としては大切にすると約束した!
だから、助けてやった!
それを死なせて、ましてや偽って他の女をー。許せない!」
「平民の愛人を、セリメーヌとして入れ替わったの!?
可哀想なセリメーヌ!
もしや…、あの子は二人に…」
これ以上の言葉はなく、夫人は倒れそうな顔色に変わっていく。
座っていてくれて良かったと、正面にいる彼女はその姿を見るのが辛かった。
「今日はここまでにしましょう。
マティルダの件がありますので、私が先に行きサンダース伯爵と話し合います。
それまで待っていてくれませんか?」
妻の肩に手を置いて、目を伏せていた目を閉じたまま返答をした。
「ブライオン殿下に全てを委ねます。
孫をこの国に連れて帰って下さい。
約束を守って下され、今度こそお願いする」
「マティルダと呼んでいい?
まだ無理かもしれないけど、いつかおばあ様と呼んでくれる?
それまでは、神様の所へは行かないわ」
冗談を自分で言っては、小さく笑うと青白かった顔に仄かに赤みが差した様で安心する。
一緒に釣られて笑うと、男性たちも声を出さずに笑っていた。
サンダース伯爵の家族と最後に向き合うために、過去を受け入れて未来に向けて動き出すのを感じていた。
マティルダが娘セリメーヌの子供だと知ると複雑な表情をし、娘の面影を求めているようだった。
話はすべて王弟ブライオンがしてくれたが、婚姻する前に手をつけて妊娠させたことに両親は怒りを感じていた。
「殿下と貴方を憎みます。
あの子がこの世を去ったのは、二人のせいですわ!」
母親として娘が亡くなった真実を、どう受け止めていいのか混乱して見えた。
『この夫人は、サンダースに嫁がせるのに反対だったんだ。
それでも夫に逆らえなかった。なら、今までその後どうしているかは調べなかったの』
人は自分を優先し、娘は幸せに暮らしていると信じていたのか。
互いに気まずいままに 、別れてしまったからか。
「他人を責めるのは簡単です。
気にしていたなら、なぜ娘に会いに行かなかったのですか?
私がこうしてココに来なかったら、知ることもなくあの世で母と会えると思っていたのですか?」
唯一物言えるのは、セリメーヌの娘マティルダだった。
「あの子が子を宿し、相手を聞けば教えてくれない。
産みたいと言って、どうしてあげればいいか分からなかった。
結局は最後は人任せで、母親として私は失格だった」
「どこの馬の骨か分からない子を生むのが許せなかった。
金にものを言わせて、セリメーヌを放り出したのは私だ」
話してから後悔して咳払いをする伯爵は、正直で裏表はない人物に感じた。
「この彼女に渡した指輪を見るまで、ここにいるマティルダの存在を知らなかった。
セリメーヌが……、私との子を授かっていたこともだ」
死と背中合わせの戦場で、その時は考えられないだろう。
綺麗ごとを言えば、全ては無益な戦いが運んだ悲劇が原因だ。
「過去は巻き戻せない。
しかし、未来は前にあります。
サンダース伯爵の娘ではないのを知ってしまった。
どうなるのかどうするのか。
自分でも不安でなりません」
孫娘の微妙な立場に祖父母は、哀れみと苛立ちが混ざり合う。
「マティルダ嬢、そなたはセリメーヌの娘で私の孫だ!
伯爵家は息子が継いでいるが、サンダースから出てこちらに来ないか?」
「それがいいわ。
この国にいらっしゃいな!」
目尻のシワを深くさせて、いとおしそうに優しい声で誘いかける。
「伯爵、マティルダは私の養女として来てもらう予定だ」
「「養女ですって(だと)!」」
下げていた目を見開くと、王弟だろうが細めて鋭い視線で激しく攻める。
「そんな目で見ないで下さい。
本当の娘としたいが、そうすると兄に子が出来た時に問題が発生する」
しょうがないと老夫婦は、同時に顔の眉間に溝を作ってうつ向く。
「セリメーヌはどこにいるの?
あの子に、あの子に会いたい。
お墓参りに行きたいわ」
「帰国する際に連れていってくれないか。
花を手向けて、詫びたいのだ」
このささやかな願いに、マティルダは答えられない。
葬られている場所すら知らない。
知っているのは、以前父だと信じていたサンダース伯爵のみ。
「あの男は約束を破った!
セリメーヌを愛せないが、妻としては大切にすると約束した!
だから、助けてやった!
それを死なせて、ましてや偽って他の女をー。許せない!」
「平民の愛人を、セリメーヌとして入れ替わったの!?
可哀想なセリメーヌ!
もしや…、あの子は二人に…」
これ以上の言葉はなく、夫人は倒れそうな顔色に変わっていく。
座っていてくれて良かったと、正面にいる彼女はその姿を見るのが辛かった。
「今日はここまでにしましょう。
マティルダの件がありますので、私が先に行きサンダース伯爵と話し合います。
それまで待っていてくれませんか?」
妻の肩に手を置いて、目を伏せていた目を閉じたまま返答をした。
「ブライオン殿下に全てを委ねます。
孫をこの国に連れて帰って下さい。
約束を守って下され、今度こそお願いする」
「マティルダと呼んでいい?
まだ無理かもしれないけど、いつかおばあ様と呼んでくれる?
それまでは、神様の所へは行かないわ」
冗談を自分で言っては、小さく笑うと青白かった顔に仄かに赤みが差した様で安心する。
一緒に釣られて笑うと、男性たちも声を出さずに笑っていた。
サンダース伯爵の家族と最後に向き合うために、過去を受け入れて未来に向けて動き出すのを感じていた。
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