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第7章
14 奇妙な組み合わせ
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踊ったりお喋りしたり、会場では思い思いに楽しむ。
仮面を被っていても私たちがよそ者だと知れてしまうが、それをあえて言わないで交流し話をしてくれる。
「マティルダ、私と踊ってくれないか?」
ブライオン王弟殿下が右手を差し出して、ダンスを誘ってくるのを聞いてしまった人たちは目を丸くする。
「戦争が終わってから、女性の噂ひとつ無かった王弟がー」
「お相手の方は、あの雨乞いの巫女様でしょう?!」
「青みがかった金髪の色は、見たことない珍しいお色よね」
二人が踊りだそうとするのを、興味ありげに語りながら目を追っている。
「マティルダを見ているね。
君を養女にするのは、もう少し後にする。
私は4人の令嬢たちに付き添って、君の国へ行くことにした。
下地を作ってからにした方が良いと、兄から言われたのだ」
「いきなりでは変に思われます。
それに……、サンダースの家も気になります」
明るい曲が流れる中で、娘の顔つきが曇るのを見て目を瞑る。
「君の父上にも会わないといけないな。
セリメーヌの話も聞きたいし、彼女の……。
彼女の墓にも行きたい」
「私も行きたいです。
母はまだ生存していることになっています。
だから、母がどこに埋葬されているか分からないのです」
マティルダは母セリメーヌの家族が、この夜会に来てないのかが気になっていた。
『伯爵の娘だったのよね。
縁を切って嫁がせたと聞いていたけど、失くなっているなんて知らないはずだわ』
ドレスを翻してブライオンと踊る令嬢を眺める人がいた。
仮面の下にある青い瞳が、マティルダの動く方向に動いている。
その瞳にはどんな感情が見え隠れしているのだろう。
「料理を取って座って食べよう。
多分、興味深い人が声をかけて貰いに側に来るよ」
「興味深い人ですか?」
ブライオン王弟殿下とマティルダは、人の目のない場所で二人で話をしていた。
もっぱら若き頃の母との思い出だ。
「戦争に行ったのが16歳だったんですか?
そんなに若かかったのですね」
彼女は自分と同じ年齢で、その男女の関係を結んでいたのを想像し顔が赤くなりそうになる。
「ブライオン殿下は、それでもまだ30台なんですね。
それなのに、婚姻されないのですか?」
「う~ん、色仕掛けで迫ってくるのが気持ち悪くて。
セリメーヌ以上に愛せる人はいないんだよ。
それに、いまは君がいる!」
『ヒェー~!!
父親と知っても、顔面良すぎて変なドキドキがしてくる。
ダメダメ!
そんな顔をしないでー!』
本物の父親と思えるのには、たくさんの時間が必要だとバクバク高鳴る心臓に言っていた。
そんな二人を離れてかろうじて後ろ姿を確認して、アドニスとメアリーと観察している。
「年上のおじさまが好みか。
私の方が青田刈りでこれから育つのに、顔なら負けないぞ!」
「そうじゃないと思う。
なんか親子見たいに見える。
こう真面目そうな雰囲気が、一緒に並んで似てるんだよね」
よくよくメアリーの言葉で、二人を見てみると父と娘のように重なる。
「知らない人たちが、マティルダたちに近づいて来た。
年配のおば様が、マティルダに感じが似てるわ」
「うん、マティルダが年取ったらああなるのかなぁ。
男性は頭髪は、白髪混じりだけど青みがかった銀髪だ」
アドニスとメアリーは目と目で会話をして、同じ考えをしてるとー。
「お兄様、マティルダの親戚かしら?
お母様は、この国の伯爵令嬢だったんでしょう?」
「……、血縁で間違いない」
「あっ!挨拶をしてから立ち上がったわ。
場所を変えて、何処か行くようよ」
メアリーがマティルダを追いかけようとしたのを、兄は腕を掴み止めた。
「いけないよ、メアリー。
何でも知ろうとしてはいけない。
マティルダが、話してくれるまで待とう!」
「はい!マドニスお兄様。
もう一曲、踊りませんか?
そろそろ、寝る時間よって呼びに来る前に」
マティルダと王弟ブライオンに注目していた貴族たちも、可愛らしい二人がくるくると躍り回ると微笑ましくて明るい気分になっていくのだ。
会場から消えていった人たちがいたことに誰も気づかなかった。
この世にはいない母親セリメーヌの家族と、娘マティルダは初めて顔を合わせて話をする。
仮面を被っていても私たちがよそ者だと知れてしまうが、それをあえて言わないで交流し話をしてくれる。
「マティルダ、私と踊ってくれないか?」
ブライオン王弟殿下が右手を差し出して、ダンスを誘ってくるのを聞いてしまった人たちは目を丸くする。
「戦争が終わってから、女性の噂ひとつ無かった王弟がー」
「お相手の方は、あの雨乞いの巫女様でしょう?!」
「青みがかった金髪の色は、見たことない珍しいお色よね」
二人が踊りだそうとするのを、興味ありげに語りながら目を追っている。
「マティルダを見ているね。
君を養女にするのは、もう少し後にする。
私は4人の令嬢たちに付き添って、君の国へ行くことにした。
下地を作ってからにした方が良いと、兄から言われたのだ」
「いきなりでは変に思われます。
それに……、サンダースの家も気になります」
明るい曲が流れる中で、娘の顔つきが曇るのを見て目を瞑る。
「君の父上にも会わないといけないな。
セリメーヌの話も聞きたいし、彼女の……。
彼女の墓にも行きたい」
「私も行きたいです。
母はまだ生存していることになっています。
だから、母がどこに埋葬されているか分からないのです」
マティルダは母セリメーヌの家族が、この夜会に来てないのかが気になっていた。
『伯爵の娘だったのよね。
縁を切って嫁がせたと聞いていたけど、失くなっているなんて知らないはずだわ』
ドレスを翻してブライオンと踊る令嬢を眺める人がいた。
仮面の下にある青い瞳が、マティルダの動く方向に動いている。
その瞳にはどんな感情が見え隠れしているのだろう。
「料理を取って座って食べよう。
多分、興味深い人が声をかけて貰いに側に来るよ」
「興味深い人ですか?」
ブライオン王弟殿下とマティルダは、人の目のない場所で二人で話をしていた。
もっぱら若き頃の母との思い出だ。
「戦争に行ったのが16歳だったんですか?
そんなに若かかったのですね」
彼女は自分と同じ年齢で、その男女の関係を結んでいたのを想像し顔が赤くなりそうになる。
「ブライオン殿下は、それでもまだ30台なんですね。
それなのに、婚姻されないのですか?」
「う~ん、色仕掛けで迫ってくるのが気持ち悪くて。
セリメーヌ以上に愛せる人はいないんだよ。
それに、いまは君がいる!」
『ヒェー~!!
父親と知っても、顔面良すぎて変なドキドキがしてくる。
ダメダメ!
そんな顔をしないでー!』
本物の父親と思えるのには、たくさんの時間が必要だとバクバク高鳴る心臓に言っていた。
そんな二人を離れてかろうじて後ろ姿を確認して、アドニスとメアリーと観察している。
「年上のおじさまが好みか。
私の方が青田刈りでこれから育つのに、顔なら負けないぞ!」
「そうじゃないと思う。
なんか親子見たいに見える。
こう真面目そうな雰囲気が、一緒に並んで似てるんだよね」
よくよくメアリーの言葉で、二人を見てみると父と娘のように重なる。
「知らない人たちが、マティルダたちに近づいて来た。
年配のおば様が、マティルダに感じが似てるわ」
「うん、マティルダが年取ったらああなるのかなぁ。
男性は頭髪は、白髪混じりだけど青みがかった銀髪だ」
アドニスとメアリーは目と目で会話をして、同じ考えをしてるとー。
「お兄様、マティルダの親戚かしら?
お母様は、この国の伯爵令嬢だったんでしょう?」
「……、血縁で間違いない」
「あっ!挨拶をしてから立ち上がったわ。
場所を変えて、何処か行くようよ」
メアリーがマティルダを追いかけようとしたのを、兄は腕を掴み止めた。
「いけないよ、メアリー。
何でも知ろうとしてはいけない。
マティルダが、話してくれるまで待とう!」
「はい!マドニスお兄様。
もう一曲、踊りませんか?
そろそろ、寝る時間よって呼びに来る前に」
マティルダと王弟ブライオンに注目していた貴族たちも、可愛らしい二人がくるくると躍り回ると微笑ましくて明るい気分になっていくのだ。
会場から消えていった人たちがいたことに誰も気づかなかった。
この世にはいない母親セリメーヌの家族と、娘マティルダは初めて顔を合わせて話をする。
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