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第7章
13 生まれ変わる
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静かな気まずい空間は、これから華やかな仮面舞踏会には似つかわしくない。
誰もがそう感じている。
こういう時に利用しなくて、いつするんだろうか。
嘘が真実になるかもしれない。
「神からの天啓が聞こえた。
この哀れな者たちを、違う地で再生させろとのお告げをー」
マティルダは、天井のシャンデリアの光を見つめて告げる。
「我が国へ来なさい。
この国よりは殿方はいらっしゃいます。
新しく生まれ変わるのです。
神はそれをお望みでおる!」
「他国ですって!」
くるくる令嬢が、ビックリ仰天してマティルダに聞き返す。
「言葉は片言くらい話せるでしょう?
修道院に入るなら、国の架け橋になり役立ってみたら。
神はそう私に言われたのです」
怪しむ3人組の令嬢たちと違ってイブリン一人は、なにかボーゼンとしていたが…。
「私!行きます!
ここに居たら、吹っ切らない気がします」
「そうね。修道院も他国も変わらないわ。
私も行く!」
残る二人も、返事をして決心を固めた。
「宜しいのですか?
私の祖国ですが、他国には家族はいないのですよ」
エリザベス王妃は、イブリンの目を合わせて尋ねる。
「エリザベス王妃様…。
ご挨拶をできずにいて失礼を致しました。
だから行くのです!
惨めに可哀想と見られたくないから…」
正式なお辞儀をすると、3人の令嬢たちは憮然とする。
彼女たちはエリザベス王妃を王妃と認めたくないようで、様子を見てマティルダたちは感じた。
本来なら、イブリンがその座にいたのだから。
「謝罪はいらないわ。
行き違いがあったのですから」
王妃はチラリと令嬢たちに目をやると、流石に気まずそうな態度をとる。
「どうしていいか、私自身悩んでいました。
立ち止まる中、神がそう言うなら従います!」
ここでイブリンを含めた4人の令嬢たちは、両国の王から2国間の交流を深める使命を正式に下された。
二人の王は並び立つと、夜会の始まりを宣言する。
「2国の結びつきが深まるのを期待し、歓迎を兼ねた仮面舞踏会を始める!」
「緊張を無くすために、仮面を使用することにした。
さぁ!踊り、楽しく語り合おうではないか!」
楽団の音楽が流れ出すと、両国の両陛下が真ん中に行き踊りだす。
「メアリー王女とアドニス殿下も踊って下さい。
エドワード殿下もイブリン様をお誘いするんでしょう?」
「サンダース伯爵令嬢!
あれを見て、どう誘えばいいんだ」
くるくる令嬢とイブリン様が、端でダンスをしていた。
「あらあら、女同士で踊るなんてやりますわね。クスッ」
「笑ってないで知恵を貸してくれ!」
「長い目で見れば、我が国へイブリン様は来られるのです。
いまダンスができないかもしれませんが、もっと話す機会が与えられたのです」
「そうだぞ、エドワード!
マティルダに感謝しなくてはならない。
雨乞いの巫女様にだ!」
力の活用は、ここまでにしなくてはならない。
この夏が終わったら、うまく力を失ったとしなくてはと考えていた。
「ロバート様は口がお上手ですから、どなたかお誘い下さい」
「エドワード殿下はメアリー王女と、私とアドニス殿下が踊りましょう!」
「うん、私と踊ってくださいませんか?
マティルダ嬢!」
「喜んでアドニス第2王子」
「エドお兄様!
いつまでも恨めしそうに、アチラを見ないで下さい!
私たちも行きますわよ!」
王族たちの踊りを見て、他の貴族たちも次々にダンスに加わったのである。
「メアリー、アドニスたちは仲良さそうだな。
姉と弟にしか見えないがー」
「アドお兄様は、お兄様と違って積極的ですからね。
お兄様は、全て受け身でしょう」
小さい子供だと思っていたが、私のことを的確に指摘してくれた。
「いつの間にか成長してるんだな…」
「はぁ?私のことはいいのです。
生まれ変わったつもりで、ご自分で頑張って下さい。
ご自分の恋なんですから、機会をチャンスに変えた下さいね!」
『一番変わりたいと思うのは自分だ!
一目みて何かが走った。
恋なのかは、これから証明していけばいい。
焦らずゆっくりと、彼女には忘れられない想う人が心にいるんだからな』
エドワードも気づいていない。
自信も成長したことにー。
気づけばアンゲロス公爵令息は、知らない令嬢と踊っていた。
前で鼻の下を伸ばして踊る彼を見て、メアリーはイライラしてつい兄の足をヒールで踏んでしまう。
「い、痛!
お前はダンス下手だな。
相手は私だから許すが、慎重に踊れるようにしなさい。
王女は特に厳しく見られるのだから、分かったか!?」
「ごめんなさい、エドお兄様」
王女の謝る声は弱々しい。
『あんな、女と嬉しそうに踊っているわ。
今日だけは、許してあげるけど。
な、なんで私が許すわけ!
関係ない、ロバート様のことなんて!!』
王族たちの恋は前途多難のようだった。
音楽が流れて笑い声が響く舞踏会場は、やっとそれらしい形となっていく。
誰もがそう感じている。
こういう時に利用しなくて、いつするんだろうか。
嘘が真実になるかもしれない。
「神からの天啓が聞こえた。
この哀れな者たちを、違う地で再生させろとのお告げをー」
マティルダは、天井のシャンデリアの光を見つめて告げる。
「我が国へ来なさい。
この国よりは殿方はいらっしゃいます。
新しく生まれ変わるのです。
神はそれをお望みでおる!」
「他国ですって!」
くるくる令嬢が、ビックリ仰天してマティルダに聞き返す。
「言葉は片言くらい話せるでしょう?
修道院に入るなら、国の架け橋になり役立ってみたら。
神はそう私に言われたのです」
怪しむ3人組の令嬢たちと違ってイブリン一人は、なにかボーゼンとしていたが…。
「私!行きます!
ここに居たら、吹っ切らない気がします」
「そうね。修道院も他国も変わらないわ。
私も行く!」
残る二人も、返事をして決心を固めた。
「宜しいのですか?
私の祖国ですが、他国には家族はいないのですよ」
エリザベス王妃は、イブリンの目を合わせて尋ねる。
「エリザベス王妃様…。
ご挨拶をできずにいて失礼を致しました。
だから行くのです!
惨めに可哀想と見られたくないから…」
正式なお辞儀をすると、3人の令嬢たちは憮然とする。
彼女たちはエリザベス王妃を王妃と認めたくないようで、様子を見てマティルダたちは感じた。
本来なら、イブリンがその座にいたのだから。
「謝罪はいらないわ。
行き違いがあったのですから」
王妃はチラリと令嬢たちに目をやると、流石に気まずそうな態度をとる。
「どうしていいか、私自身悩んでいました。
立ち止まる中、神がそう言うなら従います!」
ここでイブリンを含めた4人の令嬢たちは、両国の王から2国間の交流を深める使命を正式に下された。
二人の王は並び立つと、夜会の始まりを宣言する。
「2国の結びつきが深まるのを期待し、歓迎を兼ねた仮面舞踏会を始める!」
「緊張を無くすために、仮面を使用することにした。
さぁ!踊り、楽しく語り合おうではないか!」
楽団の音楽が流れ出すと、両国の両陛下が真ん中に行き踊りだす。
「メアリー王女とアドニス殿下も踊って下さい。
エドワード殿下もイブリン様をお誘いするんでしょう?」
「サンダース伯爵令嬢!
あれを見て、どう誘えばいいんだ」
くるくる令嬢とイブリン様が、端でダンスをしていた。
「あらあら、女同士で踊るなんてやりますわね。クスッ」
「笑ってないで知恵を貸してくれ!」
「長い目で見れば、我が国へイブリン様は来られるのです。
いまダンスができないかもしれませんが、もっと話す機会が与えられたのです」
「そうだぞ、エドワード!
マティルダに感謝しなくてはならない。
雨乞いの巫女様にだ!」
力の活用は、ここまでにしなくてはならない。
この夏が終わったら、うまく力を失ったとしなくてはと考えていた。
「ロバート様は口がお上手ですから、どなたかお誘い下さい」
「エドワード殿下はメアリー王女と、私とアドニス殿下が踊りましょう!」
「うん、私と踊ってくださいませんか?
マティルダ嬢!」
「喜んでアドニス第2王子」
「エドお兄様!
いつまでも恨めしそうに、アチラを見ないで下さい!
私たちも行きますわよ!」
王族たちの踊りを見て、他の貴族たちも次々にダンスに加わったのである。
「メアリー、アドニスたちは仲良さそうだな。
姉と弟にしか見えないがー」
「アドお兄様は、お兄様と違って積極的ですからね。
お兄様は、全て受け身でしょう」
小さい子供だと思っていたが、私のことを的確に指摘してくれた。
「いつの間にか成長してるんだな…」
「はぁ?私のことはいいのです。
生まれ変わったつもりで、ご自分で頑張って下さい。
ご自分の恋なんですから、機会をチャンスに変えた下さいね!」
『一番変わりたいと思うのは自分だ!
一目みて何かが走った。
恋なのかは、これから証明していけばいい。
焦らずゆっくりと、彼女には忘れられない想う人が心にいるんだからな』
エドワードも気づいていない。
自信も成長したことにー。
気づけばアンゲロス公爵令息は、知らない令嬢と踊っていた。
前で鼻の下を伸ばして踊る彼を見て、メアリーはイライラしてつい兄の足をヒールで踏んでしまう。
「い、痛!
お前はダンス下手だな。
相手は私だから許すが、慎重に踊れるようにしなさい。
王女は特に厳しく見られるのだから、分かったか!?」
「ごめんなさい、エドお兄様」
王女の謝る声は弱々しい。
『あんな、女と嬉しそうに踊っているわ。
今日だけは、許してあげるけど。
な、なんで私が許すわけ!
関係ない、ロバート様のことなんて!!』
王族たちの恋は前途多難のようだった。
音楽が流れて笑い声が響く舞踏会場は、やっとそれらしい形となっていく。
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