【完結】すべては、この夏の暑さのせいよ! だから、なにも覚えておりませんの

愚者 (フール)

文字の大きさ
上 下
150 / 207
第7章

6 夜会はご辞退

しおりを挟む
   王宮では王弟のブライオン殿下が、二人の国王と秘密の相談事をしている。
娘のマティルダの今後を、どうしたらよいのか悩んでいた。

「娘として、この国へ来てほしい。
だが、そうすると次の王となるかもしれない」

「余としては、我が娘エリザベスの子を世継ぎにして貰いたい」

義理の息子に本音を話す。
自分の父を亡くし、近くにいる義父に父の影と被さり聞いていた。

「あの子はそれを気にして、このままでと話していた。
そうすると、ここでは別れになる。
愛する娘の存在を知り、ずっと一緒に暮らしていきたい。
それは…、ワガママなのだろうか」

『『………。( この父娘をどうにかしてあげたい ) 』』

「しかしなぁ~、現実の父親はサンダース伯爵だからな。
それも、母親と妹は犯罪起こして牢屋の入っている」

「冗談じゃないのですか?」

「兄上が、驚かれるのは無理はありません。
マティルダから聞かさせて、呆れて同じ反応をしました」

父親と呼ばれているサンダース伯爵も、亡くなったセリメーヌと偽り平民出身のカーラを伯爵夫人にさせていた罪状もある。

「マティルダとは血の繋がらないが一滴もない。
しかし、世間はそれを知らない。
家族の全員が、犯罪者になったしまうわけだ」

姪を心配して、彼女がどうしたら幸せになるか。
そしてひらめいたように、二人に提案を出してみた。

「彼女を、いっそお前の養女にしたらどうだ!
神のお告げだと言うのだ!
そうすれば、父娘は離れなくて良い」

「養女?
マティルダを、本当の娘を養女としてか」

「それに、もしエリザベスと子が出来なかったら。  
ブライオン。
お前の養女になった彼女を、正式に女王に出来る。
無論、私たちに子ができなかったらの話だがな」

「兄上……」

兄弟の会話の背中を押すように、もう一人の国王が決断を決めさせる。

「マティルダ嬢は、このまま国に帰らない方がいい。 
サンダース伯爵は、貴族として禁忌を犯した。
死者を生かし続け、貴族として平民と婚姻していたのだ」

ここにいる全員が、サンダース伯爵家が最悪お取り潰しになることをー。

     朝方まで激しい雨が一晩中降り続いたのを、起こしに来たメイドが感謝を言いながら支度をしてくれた。

「伯爵令嬢のお力で、我が国の危機をお救い下さりお礼を申し上げます」

偉そうにするのも嫌だし、マティルダは何も言わず微笑む。
これが正解だったのか、謙虚に見えたみたいでメイドがこの時の態度を喋ると周りに広がってしまった。
評判があっという間に、貴族まで噂として散らばっていく。

濡れた雨の水滴がキラッと光ると、すっかり外気温が下がった気がする。

「今晩の夜会が終わったら、この国ともお別れなのね。
帰国したら学園が始まるけど、通常に通えるのかしら」

血縁関係のない家族は、いったいどうなるんだろう?
アリエールと母は、まだ牢屋生活をしてるの?
ハロルドは自分の領地へ戻ったようだけど、手は元通りになるのかしら?

国に戻れば、嫌なこと全てを知ることになる。

「あーーっ!
ドレスを持ってきてない。
どうしよう、夜会なんて1度も参加したこともないわ!」

持ってきた服は、最低限の貴族の令嬢の対面を保つぐらい。
それも、王妃様が用意してくれたものだ。

『夢ではダンスをしていた。
なら、ドレスは用意してあるってことか?』

頭を抱えて考えると、夢は当てにならない。

「出れるわけない!
こんなドレスでは、他国の貴族たちに見せられないわよ。
うん、急病になって仮病しよう」

このマティルダの独り言を、お茶を持ってきたメイドが偶然に聞いてしまった。

『伯爵令嬢がドレスがないなんて!』

お礼を言われながらお茶を出すと、マティルダは具合悪そうにしている。
仮病をしているのを知って、メイドは可哀想になってしまう。

『時間がない!
誰でもいいから、早く女官に伝えなくてはー。
この人は、今日の主役の一人なのよ』

急いでいる様子に、夜会の準備が大変でなのかと何故かマティルダも支度の手伝いをする。

「それ、それでは私は失礼致します」

「ええ、ありがー」、お礼を言う途中に戻って行ってしまった。
呑気に彼女は紅茶のカップを手にして、ちょっとしたお菓子に舌鼓したづつみをうって癒されていた。

本人が夢中になっている間に、周辺がバタバタするとは思ってなかったのだ。

『うーん、このチョコのかかったクッキー!おいしい~!』

この様子をメイドがこれを知ったら、後頭部を思わず叩きたくなるだろう。
それほど夜会の準備は忙しいのであった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】双子の入れ替わりなんて本当に出来るのかしら、と思ったら予想外の出来事となりました。

まりぃべる
恋愛
シェスティン=オールストレームは、双子の妹。 フレドリカは双子の姉で気が強く、何かあれば妹に自分の嫌な事を上手いこと言って押し付けていた。 家は伯爵家でそれなりに資産はあるのだが、フレドリカの急な発言によりシェスティンは学校に通えなかった。シェスティンは優秀だから、という理由だ。 卒業間近の頃、フレドリカは苦手な授業を自分の代わりに出席して欲しいとシェスティンへと言い出した。 代わりに授業に出るなんてバレたりしないのか不安ではあったが、貴族の友人がいなかったシェスティンにとって楽しい時間となっていく。 そんなシェスティンのお話。 ☆全29話です。書き上げてありますので、随時更新していきます。時間はばらばらかもしれません。 ☆現実世界にも似たような名前、地域、名称などがありますが全く関係がありません。 ☆まりぃべるの独特な世界観です。それでも、楽しんでいただけると嬉しいです。 ☆現実世界では馴染みの無い言葉を、何となくのニュアンスで作ってある場合もありますが、まりぃべるの世界観として読んでいただけると幸いです。

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

処理中です...