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第6章
29 奥手な貴公子たち
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百合の花の飾りのついた黄金の鍵を落とさないようにクルクルと回し。
どう王妃様に、渡せばいいのか頭を痛める。
マティルダは割り当てられた部屋の中で、机の上に頭を乗せて伏せる。
「あの時、アドニス殿下がアホな事をしたのが悪いんだ。
あれさえしなかったら、今頃は鍵は手にしてなかったわ」
伏せて話しているから、他人が居たなら聞き取れない。
「約束しちゃったしなぁ~。
でも、勝手に強引に頼まれたから。
べつに、私が悩む立場でない」
ガバッて起きると、いつものたたきかたでない音がする。
一人で叩くノックじゃない。
恐る恐る返事をして、慎重に警戒して開けてみた。
「どなた様でございましょうか?」
メアリーとアドニスかと思ったら、予想は外れてもう一方のコンビだった。
「あーら~っ!
今度は何なんですか?
エドワード殿下にロバート様」
歓迎されてない感じに、アンゲロス公爵令息ロバートが先に返事した。
「会うなり何ですか。
用があったから来たのです。
つべこべ言わないで、私たちを入れてください」
男性たちをこの時間に部屋に入れるのは……。
マティルダのそわそわした態度で察した。
「案ずるな、君は私たちの好みではない」
エドワード殿下の一言で、どうぞと部屋の中へ招き入れた。
「ソファーにお座り下さい。
私はこの椅子に座ります」
机の椅子に座り、一応は空間を取る。
「心外だな、マティルダって人見知りなんだ」
「違いますよ!
女性としての危機管理です。
本来は、未婚の女性を訪ねる時間帯ではありませんからね!」
プーッと二人に同時に吹き出されて、何よって言い返す彼女。
「それで来た理由はなんですか?
私の顔を、見に来たなんて通りませんわよ」
「ほらっ、話せよ!
エドワード!」
殿下が、私に相談したい事柄があるようです。
「綺麗な女性に会ったのだ。
会ったというか気分を変えたく、外へ出たら目に映った」
「「……、だからなんだよ?
( なんですの )?」」
彼の話を聞いて、二人は同時に口に出してしまった。
「では、エドワード殿下はその女性はー。
目を合わせたり、会話をした訳ではないのですね」
「そんなの、当たり前だ!
木の陰から、こっそりと眺めていた」
「すまないな。
お前の話を聞いていて、寒気がしてきた」
ロバートは背筋をブルッとさせて、友人を不審な目で見ていた。
「なんとなく、分かりました。
殿下は、その方を好きになられたのです!
そうでしょう?そうなのよ!」
マティルダの迫力に、エドワードもそう思ってくる。
ついつい、洗脳されてくる。
「そうなのか? あっー!!
あの令嬢に、私は好意を寄せていたのか」
湯気が出そうな顔は、首まで真っ赤に染まっていた。
『それを相談しに来たでしょう?
エドワード殿下にとっては、もしやこれは初恋なのかしら。
私も経験がないけど、人のことはよく分かるのよ。
不思議ね……、恋って』
「君も女性で貴族の令嬢だ。
その令嬢だったとして君なら、どう男性が言い寄ってきたらトキメキか教えてやってくれ」
友人としてどうにかしてあげたいのは、素敵な行いだが頼み方が気に入らない。
「そんなのは、アンゲロス公爵令息がお考え遊ばされたら?」
つむじを曲げたマティルダは、意地悪げに焦らすと本人が素直にお願いしてきた。
「気になる令嬢なんだ。
どうしてなのか。
この気持ちが分かるには、どうしたらいいか教えて欲しい。
マティルダ・サンダース伯爵令嬢」
数分目を閉じてから、見開いてからお告げを告げるように言う。
「近々、歓迎の夜会があります。
そこで、エドワード殿下がそのご令嬢をダンスに誘いなさい」
「私からお願いする?
お互い挨拶もしてないのにか?」
「好きになったんだろう。
どう考えても、お前が誘わなくてどうするんだ」
上下に激しく頭を振るって、同意しまくるマティルダ。
「で、できない!
ダンスを誘った経験がない!」
「そんなはずないですわ。
婚約者候補たちの令嬢たちと、踊ってましたでしょう。
代わる代わる踊ってたのを、学園で噂になっていましたよ」
「婚約者候補たちを、自分だと置き換えてすればいける。
言葉遣いと態度を、男らしくにすれば良いのだ!」
キミらはもとから男性だろうがと、声には出せないで気持ちで指摘していた。
「ロバート、有り難う。
しかし……。あの者たちのように初対面で腕を触り、潤んだ瞳で上目使いで媚びれない」
「「するな!気持ち悪い!」」
またまた、気持ちが合致した。
二人は、表現さえも同じだった。
「エドワード殿下が、彼女を一目見て惹き付けられた。
あの感覚を思い出して、ダンスに誘うのです。
ロバート様、ここで私たちが見本を見せて差し上げましょう」
「見本を見せる?
俺が、マティルダに踊りを申し込むのか?
それこそ、気持ち悪い……」
言い終える前に言葉を重ねて、冗談じゃないと怒り出した。
「私だって、吐きそうですわ。
ですが、殿下は器用ではありません。
練習を重ねて、本番を舞台に立たなくては失敗します」
「失敗ならまだいい。
こいつは度胸ないから、逃げ出すと俺は思うぞ!」
けちょんけちょんに貶されて、立つ瀬なしの王子様。
「二人は黙って、どんな感じか見せてもらおうではないか!」
「「やってやる(やるわ)!」」
マティルダとロバートは、何故かエドワードから離れて部屋の片隅で打ち合わせを始めるのだった。
どう王妃様に、渡せばいいのか頭を痛める。
マティルダは割り当てられた部屋の中で、机の上に頭を乗せて伏せる。
「あの時、アドニス殿下がアホな事をしたのが悪いんだ。
あれさえしなかったら、今頃は鍵は手にしてなかったわ」
伏せて話しているから、他人が居たなら聞き取れない。
「約束しちゃったしなぁ~。
でも、勝手に強引に頼まれたから。
べつに、私が悩む立場でない」
ガバッて起きると、いつものたたきかたでない音がする。
一人で叩くノックじゃない。
恐る恐る返事をして、慎重に警戒して開けてみた。
「どなた様でございましょうか?」
メアリーとアドニスかと思ったら、予想は外れてもう一方のコンビだった。
「あーら~っ!
今度は何なんですか?
エドワード殿下にロバート様」
歓迎されてない感じに、アンゲロス公爵令息ロバートが先に返事した。
「会うなり何ですか。
用があったから来たのです。
つべこべ言わないで、私たちを入れてください」
男性たちをこの時間に部屋に入れるのは……。
マティルダのそわそわした態度で察した。
「案ずるな、君は私たちの好みではない」
エドワード殿下の一言で、どうぞと部屋の中へ招き入れた。
「ソファーにお座り下さい。
私はこの椅子に座ります」
机の椅子に座り、一応は空間を取る。
「心外だな、マティルダって人見知りなんだ」
「違いますよ!
女性としての危機管理です。
本来は、未婚の女性を訪ねる時間帯ではありませんからね!」
プーッと二人に同時に吹き出されて、何よって言い返す彼女。
「それで来た理由はなんですか?
私の顔を、見に来たなんて通りませんわよ」
「ほらっ、話せよ!
エドワード!」
殿下が、私に相談したい事柄があるようです。
「綺麗な女性に会ったのだ。
会ったというか気分を変えたく、外へ出たら目に映った」
「「……、だからなんだよ?
( なんですの )?」」
彼の話を聞いて、二人は同時に口に出してしまった。
「では、エドワード殿下はその女性はー。
目を合わせたり、会話をした訳ではないのですね」
「そんなの、当たり前だ!
木の陰から、こっそりと眺めていた」
「すまないな。
お前の話を聞いていて、寒気がしてきた」
ロバートは背筋をブルッとさせて、友人を不審な目で見ていた。
「なんとなく、分かりました。
殿下は、その方を好きになられたのです!
そうでしょう?そうなのよ!」
マティルダの迫力に、エドワードもそう思ってくる。
ついつい、洗脳されてくる。
「そうなのか? あっー!!
あの令嬢に、私は好意を寄せていたのか」
湯気が出そうな顔は、首まで真っ赤に染まっていた。
『それを相談しに来たでしょう?
エドワード殿下にとっては、もしやこれは初恋なのかしら。
私も経験がないけど、人のことはよく分かるのよ。
不思議ね……、恋って』
「君も女性で貴族の令嬢だ。
その令嬢だったとして君なら、どう男性が言い寄ってきたらトキメキか教えてやってくれ」
友人としてどうにかしてあげたいのは、素敵な行いだが頼み方が気に入らない。
「そんなのは、アンゲロス公爵令息がお考え遊ばされたら?」
つむじを曲げたマティルダは、意地悪げに焦らすと本人が素直にお願いしてきた。
「気になる令嬢なんだ。
どうしてなのか。
この気持ちが分かるには、どうしたらいいか教えて欲しい。
マティルダ・サンダース伯爵令嬢」
数分目を閉じてから、見開いてからお告げを告げるように言う。
「近々、歓迎の夜会があります。
そこで、エドワード殿下がそのご令嬢をダンスに誘いなさい」
「私からお願いする?
お互い挨拶もしてないのにか?」
「好きになったんだろう。
どう考えても、お前が誘わなくてどうするんだ」
上下に激しく頭を振るって、同意しまくるマティルダ。
「で、できない!
ダンスを誘った経験がない!」
「そんなはずないですわ。
婚約者候補たちの令嬢たちと、踊ってましたでしょう。
代わる代わる踊ってたのを、学園で噂になっていましたよ」
「婚約者候補たちを、自分だと置き換えてすればいける。
言葉遣いと態度を、男らしくにすれば良いのだ!」
キミらはもとから男性だろうがと、声には出せないで気持ちで指摘していた。
「ロバート、有り難う。
しかし……。あの者たちのように初対面で腕を触り、潤んだ瞳で上目使いで媚びれない」
「「するな!気持ち悪い!」」
またまた、気持ちが合致した。
二人は、表現さえも同じだった。
「エドワード殿下が、彼女を一目見て惹き付けられた。
あの感覚を思い出して、ダンスに誘うのです。
ロバート様、ここで私たちが見本を見せて差し上げましょう」
「見本を見せる?
俺が、マティルダに踊りを申し込むのか?
それこそ、気持ち悪い……」
言い終える前に言葉を重ねて、冗談じゃないと怒り出した。
「私だって、吐きそうですわ。
ですが、殿下は器用ではありません。
練習を重ねて、本番を舞台に立たなくては失敗します」
「失敗ならまだいい。
こいつは度胸ないから、逃げ出すと俺は思うぞ!」
けちょんけちょんに貶されて、立つ瀬なしの王子様。
「二人は黙って、どんな感じか見せてもらおうではないか!」
「「やってやる(やるわ)!」」
マティルダとロバートは、何故かエドワードから離れて部屋の片隅で打ち合わせを始めるのだった。
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