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第6章
26 2人の王子の恋愛事情
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国王陛下の謁見後に、大勢でお茶を飲みながら思い出話や近況に花が咲く。
この中に入るのに気が引く伯爵令嬢マティルダは、雨乞いを儀式を理由にして席を皆より先に外した。
『ロバート様は公爵令息だけあり、あの中でも実に堂々としているな。
2か国の王族たちを前に、図太い神経をお持ちだわ』
退席する動作をしては、そんな彼に感心をする。
何年振りの再会に、集った人々のお喋りは終わりをしらない。
エドワード殿下は少し一人になりたくなり、トイレを理由にこの場を出て行く。
「部屋の中の熱気に当てられたみたいだ。
少し外の新鮮な空気が吸いたい」
エドワードは庭にいる令嬢に気づいた。
後ろ姿しか見えないが、金髪の髪がキラキラと美しく光輝いている。
薄みどりのドレスが爽やかで、半袖から出された細い白い腕が際立って見えた。
『後ろ姿だけでも、身分が良い令嬢に見える。
髪を結ってないし、既婚者ではないな』
近寄って顔を見てみたいという好奇心が勝り、彼は木々を使って姿を隠して正面に向かっていく。
庭師と笑って話をしている様子に、何故だが目が離せない彼であった。
『何をあんなに楽しげに話しているのだろう。
ここからでは、全然内容が聞こえてこない。
でも、この木から離れたら私が判ってしまうしー』
先程から令嬢は、あの植えている場所を指差している。
話を終えると、笑顔からガッカリと暗い顔になってしまう。
『あそこに、植えてあるのはどんな植物なんだ。
彼女は、あれが欲しかったのではないだろうか』
エドワードの想像はドンピシャだった。
亡き王太子が、自分の為に植えてくれた百合の花を一株譲り受けたかったのだ。
「いいんです。
王宮の物は、草木一本でも王の物ですから」
「すみません、許可が頂けましたらお渡しします」
名残惜しそうに見ていると、しばらくして彼女はエドワードの視界から消えて城の中に入ってしまった。
「あー!待ってくれ!!」
慌てて木の後ろから突然現れた彼に、庭師が驚いてしまっていた。
「いやっ、散歩していたら目について見ていただけだ」
奇妙がる庭師に自分の身柄を教えると、安心したようで百合にまつわる話をしてくれた。
「仲がおよろしかっただけに、可愛そうで…。
せめて、百合の花を差し上げたいのですが。
雇われの私には、こればかりはどうしようも出来ません」
「彼女が…。
姉上との間に問題があった、あの令嬢かー」
庭師の沈んだ様子に、先ほどここにいた令嬢を重ね合わせるエドワード。
彼の頬は暑い外に居たからか、それとも違う理由から赤くなっていたのか。
『急に、胸が高鳴ってきた。
なぜ、何故なんだ!?』
心臓がバクバクしてきた、これはあの有名な熱中症か?
一目惚れを生まれて初めて経験した。
兄弟揃って、一目で好きになる遺伝子らしい。
ここでは、他国の第1王子様。
これは、真夏の恋の始まりになるのか。
メアリー王女とエリザベス王妃は、キャピキャピとウフフと嬉しそうだ。
姉妹の離ていた時間の溝を、埋めるかのように話をしていた。
「メアリー、サンダース伯爵令嬢が我が国を救ってくれる。
雨を降らせて下さる巫女様だったのね」
「お姉様、そうですの。
偶然にもお母様が頼んだ先生が、巫女様でしたのよ。
ねっ!アドニスお兄様!」
「そうなんだ!
僕……。私のマティルダは、実に優秀で神秘的な力の持ち主なんです」
「私のマティルダ?」
今まで聞き役をしていた夫であるこの国の若き主君は、この言葉が引っ掛かったのか質問してきた。
「国王様、お兄様はマティルダがお好きなの。
一方的な片思いですけど、年齢と身分で難しいのです。
ですが、それがかえって燃えるようですの」
10歳のませた王女の説明に両陛下は笑い出した。
「クスクス、メアリーはアドニスをからかっているのね。
いつの間に、こんなことを話すようになったのかしらね」
からかわれたと思うと、アドニスは機嫌悪くなる。
冗談と思われて腹ただしいが、反論するのもバカバカしい。
マティルダのためにも、大人の対処をするつもりでダンマリを貫いていた。
2人の王子様たちは、それぞれに恋愛成就は叶うのだろうか。
その前に、王妃と侯爵令嬢の仲直り作戦が夜会の行われる。
この中に入るのに気が引く伯爵令嬢マティルダは、雨乞いを儀式を理由にして席を皆より先に外した。
『ロバート様は公爵令息だけあり、あの中でも実に堂々としているな。
2か国の王族たちを前に、図太い神経をお持ちだわ』
退席する動作をしては、そんな彼に感心をする。
何年振りの再会に、集った人々のお喋りは終わりをしらない。
エドワード殿下は少し一人になりたくなり、トイレを理由にこの場を出て行く。
「部屋の中の熱気に当てられたみたいだ。
少し外の新鮮な空気が吸いたい」
エドワードは庭にいる令嬢に気づいた。
後ろ姿しか見えないが、金髪の髪がキラキラと美しく光輝いている。
薄みどりのドレスが爽やかで、半袖から出された細い白い腕が際立って見えた。
『後ろ姿だけでも、身分が良い令嬢に見える。
髪を結ってないし、既婚者ではないな』
近寄って顔を見てみたいという好奇心が勝り、彼は木々を使って姿を隠して正面に向かっていく。
庭師と笑って話をしている様子に、何故だが目が離せない彼であった。
『何をあんなに楽しげに話しているのだろう。
ここからでは、全然内容が聞こえてこない。
でも、この木から離れたら私が判ってしまうしー』
先程から令嬢は、あの植えている場所を指差している。
話を終えると、笑顔からガッカリと暗い顔になってしまう。
『あそこに、植えてあるのはどんな植物なんだ。
彼女は、あれが欲しかったのではないだろうか』
エドワードの想像はドンピシャだった。
亡き王太子が、自分の為に植えてくれた百合の花を一株譲り受けたかったのだ。
「いいんです。
王宮の物は、草木一本でも王の物ですから」
「すみません、許可が頂けましたらお渡しします」
名残惜しそうに見ていると、しばらくして彼女はエドワードの視界から消えて城の中に入ってしまった。
「あー!待ってくれ!!」
慌てて木の後ろから突然現れた彼に、庭師が驚いてしまっていた。
「いやっ、散歩していたら目について見ていただけだ」
奇妙がる庭師に自分の身柄を教えると、安心したようで百合にまつわる話をしてくれた。
「仲がおよろしかっただけに、可愛そうで…。
せめて、百合の花を差し上げたいのですが。
雇われの私には、こればかりはどうしようも出来ません」
「彼女が…。
姉上との間に問題があった、あの令嬢かー」
庭師の沈んだ様子に、先ほどここにいた令嬢を重ね合わせるエドワード。
彼の頬は暑い外に居たからか、それとも違う理由から赤くなっていたのか。
『急に、胸が高鳴ってきた。
なぜ、何故なんだ!?』
心臓がバクバクしてきた、これはあの有名な熱中症か?
一目惚れを生まれて初めて経験した。
兄弟揃って、一目で好きになる遺伝子らしい。
ここでは、他国の第1王子様。
これは、真夏の恋の始まりになるのか。
メアリー王女とエリザベス王妃は、キャピキャピとウフフと嬉しそうだ。
姉妹の離ていた時間の溝を、埋めるかのように話をしていた。
「メアリー、サンダース伯爵令嬢が我が国を救ってくれる。
雨を降らせて下さる巫女様だったのね」
「お姉様、そうですの。
偶然にもお母様が頼んだ先生が、巫女様でしたのよ。
ねっ!アドニスお兄様!」
「そうなんだ!
僕……。私のマティルダは、実に優秀で神秘的な力の持ち主なんです」
「私のマティルダ?」
今まで聞き役をしていた夫であるこの国の若き主君は、この言葉が引っ掛かったのか質問してきた。
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「クスクス、メアリーはアドニスをからかっているのね。
いつの間に、こんなことを話すようになったのかしらね」
からかわれたと思うと、アドニスは機嫌悪くなる。
冗談と思われて腹ただしいが、反論するのもバカバカしい。
マティルダのためにも、大人の対処をするつもりでダンマリを貫いていた。
2人の王子様たちは、それぞれに恋愛成就は叶うのだろうか。
その前に、王妃と侯爵令嬢の仲直り作戦が夜会の行われる。
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