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第6章
22 思い違いのすれ違い
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車窓を通り過ぎる景色を、暗い表情で見つめるメアリー王女。
二人の王子も目と口を閉じて、寝ているように見える。
マティルダとロバートは、王族の子供たちは姉を慕って考えているのだろう。
『メアリー王女の話では、お相手のと仲はよいと教えてくれた。
夫婦仲でなく、それよりも厄介なのは噂された令嬢が問題だわ』
マティルダはありそうな事だと、ゴタゴタしているのを考察するとため息をつきそうになる。
「周りも亡くなった王太子の婚約者なら、無下には扱えないだろう。
兄の大切な人なら、姉のように慕っているかもしれない」
アンゲロス公爵令息は、遠慮しないでグイグイ話す人なのね。
この空気は息苦しいから、さらけ出してくれるのは良いような。
私としては、触れて欲しくないような。
「「「…………」」」
『あーっ!
誰も話さないじゃない。
これは、三人にお話してるんでしょう』
前に座るロバートは、マティルダに何か話しかけようと目で話しかける。
「コッホン、エリザベス王妃様に謁見されたら様子が分かりますわ。
案外今頃は、侯爵令嬢とお茶でもしていたりしてー」
「…………、そんな事ない。
エリザベスお姉様は、貴族たちの派閥に弄ばれているんだ」
「アドニスお兄様、どういう意味なの?」
「王妃は挨拶をしようとしていたが、周りがそれをさせなかったと話していただろう。
つまり、周りの者が侯爵令嬢を良く思ってない。
エリザベスお姉様はその者たちに振り回されてしまってるんだ」
「そんな、どうしたら仲良くできるのよ!」
メアリー王女はアドニス殿下に質問するが、その答えはでないよう。
「マティルダ!
マティルダは、どうしたらいいと思う?」
「え?どうしたらいい?
えっと、二人きりで腹を割って話すしかないのでは。
他人がいると、本音を話せませんからね」
「なるほど、良い考えだ。
我々が力を貸して、エリザベス王妃をお助けしましょう」
ロバートがホッとした様に、賛同してこの作戦を練り始めるのだった。
馬車の中は、やっと明るい雰囲気になれた。
時を同じくしてアンゲロス公爵は、友人からその話を相談されていた。
「エリザベス王妃がー。
この国に嫁がれて、幸せに暮らしているとばかり思っていた。
その侯爵令嬢がエリザベス王妃に先に頭を下げて下されば、お声もかけやすいのではないか」
「侯爵令嬢は次期王妃として、宮廷では幅を効かせている。
どちらも教示をお持ちで、折れてはくれないで陛下も頭痛の種なのだ」
「「はぁ~、……」」
公爵同士はそれぞれの女性たちに話を聞き、穏便に済ませようと画策しようとしていた。
話題の主役のエリザベス王妃は、夫である国王から雨乞いを成功させた巫女を呼ぶことを伝える。
「その巫女様と一緒に、弟妹たちが来訪するのですね。
嫁いでから1度も会ってませんので、とても嬉しいですわ」
「君が喜んでくれて良かった。
王宮に泊まって貰うので、滞在中は何時でも会える」
エリザベスの久しぶりの晴れやかな笑顔を見れて、コチラも微笑み返す。
夫婦円満のその様子に、側仕えの人たちも明るい表情になる。
隣国から雨を降らせに不思議力を持つ巫女が来るという話が駆け巡った。
もちろん、侯爵令嬢の耳にも入っていた。
「それは本当なの?
雨乞いをしに隣国から人が来る。
それもエリザベス王妃の弟妹たちも…」
「そうでございます。
宮廷だけでなく、今頃は貴族の間でも噂になっているでしょう」
扇で半分顔を隠して聞いているので、表情は読み取れない。
話していた伯爵夫人は、それを恐ろしく感じて生唾を飲み込む。
「教えてくれて、ありがとう。
王妃様は、ご家族と会えて嬉しいでしょうね」
無難な返事に拍子抜けするが、昨今の宮廷内の噂話を本人が存じない筈はない。
「どうされますの。
ご訪問を機会にして、貴女から王妃様に頭を下げさせるつもりなの?」
「私は、あの時。
あの方に、微笑んでちゃんと頭を下げたわ。
急に振り返って、背を向けて去ったのはあの人よ!
あの後に、私がその場にいた方々にどんな視線を向けられたか…」
「存じておりますわ。
貴族の皆さまは、貴女を悪く言う人はいません」
侯爵令嬢は顔を、扇で全て隠してうつむき話す。
全く心の中が読めない。
伯爵夫人は、この女同士の微妙な関係に心を痛めた。
『勝手に周りが騒いでいるのかしら?
私も、その一人なのかも……』
「私、もうお暇致しますわね。王太子殿下をムリに忘れなさいって、私は言いませんがー。
貴女は自分の幸せを、そろそろ考えた方がいいわ」
「……、それはそうだけどー」
これ以上は、まだ心が傷ついている彼女を追い込めない。
主役の彼女たちは、実はそんなに何も考えていないのではと、伯爵夫人は楽観的に想像するのだった。
二人の王子も目と口を閉じて、寝ているように見える。
マティルダとロバートは、王族の子供たちは姉を慕って考えているのだろう。
『メアリー王女の話では、お相手のと仲はよいと教えてくれた。
夫婦仲でなく、それよりも厄介なのは噂された令嬢が問題だわ』
マティルダはありそうな事だと、ゴタゴタしているのを考察するとため息をつきそうになる。
「周りも亡くなった王太子の婚約者なら、無下には扱えないだろう。
兄の大切な人なら、姉のように慕っているかもしれない」
アンゲロス公爵令息は、遠慮しないでグイグイ話す人なのね。
この空気は息苦しいから、さらけ出してくれるのは良いような。
私としては、触れて欲しくないような。
「「「…………」」」
『あーっ!
誰も話さないじゃない。
これは、三人にお話してるんでしょう』
前に座るロバートは、マティルダに何か話しかけようと目で話しかける。
「コッホン、エリザベス王妃様に謁見されたら様子が分かりますわ。
案外今頃は、侯爵令嬢とお茶でもしていたりしてー」
「…………、そんな事ない。
エリザベスお姉様は、貴族たちの派閥に弄ばれているんだ」
「アドニスお兄様、どういう意味なの?」
「王妃は挨拶をしようとしていたが、周りがそれをさせなかったと話していただろう。
つまり、周りの者が侯爵令嬢を良く思ってない。
エリザベスお姉様はその者たちに振り回されてしまってるんだ」
「そんな、どうしたら仲良くできるのよ!」
メアリー王女はアドニス殿下に質問するが、その答えはでないよう。
「マティルダ!
マティルダは、どうしたらいいと思う?」
「え?どうしたらいい?
えっと、二人きりで腹を割って話すしかないのでは。
他人がいると、本音を話せませんからね」
「なるほど、良い考えだ。
我々が力を貸して、エリザベス王妃をお助けしましょう」
ロバートがホッとした様に、賛同してこの作戦を練り始めるのだった。
馬車の中は、やっと明るい雰囲気になれた。
時を同じくしてアンゲロス公爵は、友人からその話を相談されていた。
「エリザベス王妃がー。
この国に嫁がれて、幸せに暮らしているとばかり思っていた。
その侯爵令嬢がエリザベス王妃に先に頭を下げて下されば、お声もかけやすいのではないか」
「侯爵令嬢は次期王妃として、宮廷では幅を効かせている。
どちらも教示をお持ちで、折れてはくれないで陛下も頭痛の種なのだ」
「「はぁ~、……」」
公爵同士はそれぞれの女性たちに話を聞き、穏便に済ませようと画策しようとしていた。
話題の主役のエリザベス王妃は、夫である国王から雨乞いを成功させた巫女を呼ぶことを伝える。
「その巫女様と一緒に、弟妹たちが来訪するのですね。
嫁いでから1度も会ってませんので、とても嬉しいですわ」
「君が喜んでくれて良かった。
王宮に泊まって貰うので、滞在中は何時でも会える」
エリザベスの久しぶりの晴れやかな笑顔を見れて、コチラも微笑み返す。
夫婦円満のその様子に、側仕えの人たちも明るい表情になる。
隣国から雨を降らせに不思議力を持つ巫女が来るという話が駆け巡った。
もちろん、侯爵令嬢の耳にも入っていた。
「それは本当なの?
雨乞いをしに隣国から人が来る。
それもエリザベス王妃の弟妹たちも…」
「そうでございます。
宮廷だけでなく、今頃は貴族の間でも噂になっているでしょう」
扇で半分顔を隠して聞いているので、表情は読み取れない。
話していた伯爵夫人は、それを恐ろしく感じて生唾を飲み込む。
「教えてくれて、ありがとう。
王妃様は、ご家族と会えて嬉しいでしょうね」
無難な返事に拍子抜けするが、昨今の宮廷内の噂話を本人が存じない筈はない。
「どうされますの。
ご訪問を機会にして、貴女から王妃様に頭を下げさせるつもりなの?」
「私は、あの時。
あの方に、微笑んでちゃんと頭を下げたわ。
急に振り返って、背を向けて去ったのはあの人よ!
あの後に、私がその場にいた方々にどんな視線を向けられたか…」
「存じておりますわ。
貴族の皆さまは、貴女を悪く言う人はいません」
侯爵令嬢は顔を、扇で全て隠してうつむき話す。
全く心の中が読めない。
伯爵夫人は、この女同士の微妙な関係に心を痛めた。
『勝手に周りが騒いでいるのかしら?
私も、その一人なのかも……』
「私、もうお暇致しますわね。王太子殿下をムリに忘れなさいって、私は言いませんがー。
貴女は自分の幸せを、そろそろ考えた方がいいわ」
「……、それはそうだけどー」
これ以上は、まだ心が傷ついている彼女を追い込めない。
主役の彼女たちは、実はそんなに何も考えていないのではと、伯爵夫人は楽観的に想像するのだった。
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