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第6章
19 意外な組合せ
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目立たないよう家紋無しのごく普通の馬車を使うことにして、マティルダたちを乗せて隣国へ向けて移動することにした。
彼女は、斜め前に平然と座って居眠りしている人を気にしている。
『アンゲロス公爵が隣国に滞在してるから、息子の彼が帯同するのは分かるけど…。
正直、来て欲しくなかった』
視線を感じて気まずいのか、ロバートは薄目を開けてるとマティルダと目が合う。
「君、正直者で分かりやすいから気を付けた方がいい。
焦っても駄目だよ、俺が邪魔なんだね」
「はい?仰ってますか?
いきなり、変なことをー。
ロバート様、嫌でございますわ。ホホホ…」
ズバッと言われてキョドるマティルダに、他の者たちは彼女を滑稽に見える。
それよりも、憐れさを感じた。
「ロバート、よせ!
サンダース伯爵令嬢が困っているではないか。
私だって、君が隣国で仕出かさないか不安だ」
「エドお兄様、アンゲロス公爵令息が気の毒ですわ」
「メアリーの方が仕出かすなら、この中でお前が1番不安だ」
馬車の中は、和気あいあい。
ちょっとズレているが、殺伐とした空気よりはよっぽど良い。
特にエドワードは行きの馬車で苦労していたから余計だった。
隣国の王都までは、国境近くでも飛ばしても1週間かかる。
マティルダは学生の休みが足りなくなるのを気にしていたが、それは考えるだけ無駄であった。
「お父様、流石よねー!
学園の夏休みを2週間も伸ばしたのはー」
「メアリー殿下、陛下も暑さで職務するのがお嫌なのでしょう。
冬休みは短くして、授業時間を増やすそうですよ」
「「「「えー!」」」」
ロバート以外の四人は、惨劇に出会ったように絶叫に近い声を出す。
「たまたま庭で散歩していたら、陛下が話し合っているのを耳にしてね。
世の中、そんなに甘くないんだよ」
「「「「そうね ( だな ) 」」」」
メアリー王女の顔色が1番変化したのを、ロバートはすました顔をして見逃さなかった。
「でも、安心しましたわ。
急ぎすぎて事故を起こしたらと、内心は危惧してましたからー」
ホッと胸を撫で下ろす彼女の様子に、自然と笑いが発生する馬車の中である。
マティルダたちの旅は、メアリーとアドニスの勉強は馬車の中でもされている。
助かったのは私だけでなく、兄エドワードとアンゲロス公爵令息ロバートが手伝ってくれていた。
「メアリー王女、そこはこれを用いて計算するのです」
「あらっ、間違えてましたの?
女に数学って必要かしら?
特に、私はー。
命じたら、誰かがしてくれるでしょう」
「出来ないよりは、出来た方がいい。
令嬢は頭が空っぽだと、男性に思われがちですからね」
『ロバート様の物言いは、いつもながらキツイ物言いですこと。
メアリー王女にはこれぐらいが丁度いいですが、しかしこの二人は……』
マティルダがアドニスを教えながら思っていると、同じ考えの人がもう二人いた。
「メアリーは、アンゲロス公爵令息と気が合うのではないか」
「アドニスもそう思ったのか。
打たれ強いメアリーには、ロバートと上手くいきそうだな」
二人の兄たちが目の前にいるのに、仲をはやし立てていた。
「なっ!なに言ってるのよ!
お兄様たちは、私はこんなおじさんは嫌よ!」
「こんな子供のお守りなど嫌だ!変な事を言わないでくれ」
やり取りを見ていて、一人喋らない人は思うのだ。
『やっぱし、気が合っている。
もしかしたら、将来は夫婦になってたりして…?』
想像したら笑いそうになるので、誤魔化すように窓の外を見る。
毎日、お天気が良すぎると空を眺めていた。
「うちの国にはマティルダがいて助かったね。
隣国は喉から手が出るほど、雨が降って欲しいんだからさ」
アドニスの何気ない言葉で、こんどはマティルダに視線が集中した。
「マティルダは隣国でも、雨を降らせることができそう?
ごめん、重圧をかける話をして……」
「気にしないで下さい。
メアリー王女、平気ですよ。
隣国もそんなに、期待してないんではないかしら?
国民に頑張ってやりましたよって、何かを見せつけたいのでしょう」
雨乞いを巫女ことマティルダは、冷めた考えをして話して聞かせるのだった。
「だったら、ご自分の国の方を探せばいいと思うわ。
何も他国のマティルダに頼まなくてもいいのに」
「メアリー。
探すのが面倒だし、マティルダはすでに成功してる」
「エドお兄様、それにー。
他国だから責任を丸投げ出来るからね。
都合がいいんだよ」
兄妹たちの言い分に、ロバートは含み笑いして話に入る。
「隣国は楽でいいよね。
マティルダが雨を降らせたら、我が国はデカイ顔をできるな」
アンゲロス公爵令息ロバートの話に、話題の中心マティルダはギョっとして隣に首で動かした。
またまた、雨を降らす使命を受けてしまった。
彼女は胃がキリキリしそうになり、みぞおちを擦っていた。
馬車は北へ向かって走っていく。
彼女は、斜め前に平然と座って居眠りしている人を気にしている。
『アンゲロス公爵が隣国に滞在してるから、息子の彼が帯同するのは分かるけど…。
正直、来て欲しくなかった』
視線を感じて気まずいのか、ロバートは薄目を開けてるとマティルダと目が合う。
「君、正直者で分かりやすいから気を付けた方がいい。
焦っても駄目だよ、俺が邪魔なんだね」
「はい?仰ってますか?
いきなり、変なことをー。
ロバート様、嫌でございますわ。ホホホ…」
ズバッと言われてキョドるマティルダに、他の者たちは彼女を滑稽に見える。
それよりも、憐れさを感じた。
「ロバート、よせ!
サンダース伯爵令嬢が困っているではないか。
私だって、君が隣国で仕出かさないか不安だ」
「エドお兄様、アンゲロス公爵令息が気の毒ですわ」
「メアリーの方が仕出かすなら、この中でお前が1番不安だ」
馬車の中は、和気あいあい。
ちょっとズレているが、殺伐とした空気よりはよっぽど良い。
特にエドワードは行きの馬車で苦労していたから余計だった。
隣国の王都までは、国境近くでも飛ばしても1週間かかる。
マティルダは学生の休みが足りなくなるのを気にしていたが、それは考えるだけ無駄であった。
「お父様、流石よねー!
学園の夏休みを2週間も伸ばしたのはー」
「メアリー殿下、陛下も暑さで職務するのがお嫌なのでしょう。
冬休みは短くして、授業時間を増やすそうですよ」
「「「「えー!」」」」
ロバート以外の四人は、惨劇に出会ったように絶叫に近い声を出す。
「たまたま庭で散歩していたら、陛下が話し合っているのを耳にしてね。
世の中、そんなに甘くないんだよ」
「「「「そうね ( だな ) 」」」」
メアリー王女の顔色が1番変化したのを、ロバートはすました顔をして見逃さなかった。
「でも、安心しましたわ。
急ぎすぎて事故を起こしたらと、内心は危惧してましたからー」
ホッと胸を撫で下ろす彼女の様子に、自然と笑いが発生する馬車の中である。
マティルダたちの旅は、メアリーとアドニスの勉強は馬車の中でもされている。
助かったのは私だけでなく、兄エドワードとアンゲロス公爵令息ロバートが手伝ってくれていた。
「メアリー王女、そこはこれを用いて計算するのです」
「あらっ、間違えてましたの?
女に数学って必要かしら?
特に、私はー。
命じたら、誰かがしてくれるでしょう」
「出来ないよりは、出来た方がいい。
令嬢は頭が空っぽだと、男性に思われがちですからね」
『ロバート様の物言いは、いつもながらキツイ物言いですこと。
メアリー王女にはこれぐらいが丁度いいですが、しかしこの二人は……』
マティルダがアドニスを教えながら思っていると、同じ考えの人がもう二人いた。
「メアリーは、アンゲロス公爵令息と気が合うのではないか」
「アドニスもそう思ったのか。
打たれ強いメアリーには、ロバートと上手くいきそうだな」
二人の兄たちが目の前にいるのに、仲をはやし立てていた。
「なっ!なに言ってるのよ!
お兄様たちは、私はこんなおじさんは嫌よ!」
「こんな子供のお守りなど嫌だ!変な事を言わないでくれ」
やり取りを見ていて、一人喋らない人は思うのだ。
『やっぱし、気が合っている。
もしかしたら、将来は夫婦になってたりして…?』
想像したら笑いそうになるので、誤魔化すように窓の外を見る。
毎日、お天気が良すぎると空を眺めていた。
「うちの国にはマティルダがいて助かったね。
隣国は喉から手が出るほど、雨が降って欲しいんだからさ」
アドニスの何気ない言葉で、こんどはマティルダに視線が集中した。
「マティルダは隣国でも、雨を降らせることができそう?
ごめん、重圧をかける話をして……」
「気にしないで下さい。
メアリー王女、平気ですよ。
隣国もそんなに、期待してないんではないかしら?
国民に頑張ってやりましたよって、何かを見せつけたいのでしょう」
雨乞いを巫女ことマティルダは、冷めた考えをして話して聞かせるのだった。
「だったら、ご自分の国の方を探せばいいと思うわ。
何も他国のマティルダに頼まなくてもいいのに」
「メアリー。
探すのが面倒だし、マティルダはすでに成功してる」
「エドお兄様、それにー。
他国だから責任を丸投げ出来るからね。
都合がいいんだよ」
兄妹たちの言い分に、ロバートは含み笑いして話に入る。
「隣国は楽でいいよね。
マティルダが雨を降らせたら、我が国はデカイ顔をできるな」
アンゲロス公爵令息ロバートの話に、話題の中心マティルダはギョっとして隣に首で動かした。
またまた、雨を降らす使命を受けてしまった。
彼女は胃がキリキリしそうになり、みぞおちを擦っていた。
馬車は北へ向かって走っていく。
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