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第6章

11 サンダース伯爵の本音

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    知らない部屋のベッド上に寝かされて、彼は意識を取り戻しまぶたを開く。
一瞬、記憶が飛んでしまい。
自分がしてきたことを思い出そうと、開いた目をパチパチさせてみる。

『ここは、いったい何処なんだ?!』

部下から目を覚ましたとの報告で、マイヤー伯爵に後を頼まれた彼は起きた伯爵に会いに行く。
寝かされたままのサンダース子爵は、開かれるとドアの音が聞こえてきた。

「サンダース伯爵、ご気分はどうですか?
過労との診断でしたので、数日安静にすれば体調は良くなるそうです」

見慣れた彼が部屋に入ってきて、ベッドから半身をあげてからお礼を言う。

「迷惑をかけたようで……。
これからどうなり、どうしたらいいのか。
自分でしておいて、考えがまとまらないのです」

倒れた時よりは顔色が改善されたが、弱々しい話す声と表情は沈んでいる。
初対面に近い彼は、答えにならない相談されてもっとムッとしているようだ。

「現在の伯爵夫人は平民ですよね。
この件はマイヤー伯爵を通して、今頃は陛下のお耳に入ってます。
素直に全てをお話された方が、今後の貴方の為に宜しいと思いますよ」

親切で丁寧な言い方をしていたが、突き放して自分で話して何とかしろと言うわけだ。

「サンダース伯爵家は、私の代で終わりになるのか。
祖先に対して、顔向けができぬ」

かわいた笑いが部屋に響いているが、窓を叩きつける雨の音がかき消される。
娘マティルダ、血の繋がりのない娘が願った雨がである。

「私は推測が好きなんです。
マイヤー伯爵に付き添っていて、話の流れはうかがっております」

「そうか…。
カーラは興奮していたが、私が倒れてどうしてる?」

ほったらかしにして放置しているが、構う者無しでは静かになるだろうと笑って話す。

「昔から起伏きふくの激しい女だった。
静かなものわかり良い令嬢より、彼女を新鮮に思えてしまったのだ」

「気取って裏表ある令嬢よりは、分かりやすくて面白味はあるでしょうな。
サンダース伯爵、人としての道を外してはいけませんな。
他人を死者の代わりにさせるとは、セリメーヌ様がうらんで出てきますよ」

背筋が寒気がしてゾッとして、彼女の死に顔が頭に浮ぶ。
頭を抱えて震えて、謝罪を必死にする。

「あんなに、産まれてくる子供の事を頼んでいた。
セリメーヌが…、死ぬなんて思わなかった。
魔が差したんだ。
カーラを伯爵夫人にすれば、必ず幸せになれると信じていた」

許してくれと何度も謝るが、死者にこの謝罪が聞こえてるのか。

「伯爵、罪のせいで終わってしまった。
サンダース伯爵夫人をともない、平民の彼女を下級でも貴族にして婚姻こんいんすればよかったのだ!」

ズバリ言われて、苛立いらだち怒りを吐き出す。

「分かっていたんだ!
私は彼女と、婚姻を望んでいなかった。
サンダースの祖先からの借金を、セリメーヌの持参金じさんきんまかなっただけだ!」

「おかしいと思ったが、金が目当てで婚姻したのか。
身籠っていたのを、伯爵は知っていたのか?」

「悪いか!マティルダは私の子ではないが、長女として育ててやったぞ!
サンダースの家も、継がせてやるつもりでいた。
責められるのはお門違いだ!」

サンダース伯爵の本音が聞けた。
彼は避暑地にいるマイヤー伯爵に、今の話を手紙に書けると誘導尋問ゆうどうじんもんの成功に満足をした。

「今までは幸せだっただろう。
聞けばマティルダ嬢をはぶいて、本当の家族で楽しんでいたそうじゃないか!」

「……、食わせてやった!
学園にも通わせてやった!
義務はたした!」

こんな男を実父と信じて、伯爵の仕事を手伝っていた彼女を哀れに思う。

「ふ~ん、学園は特待生で無料だったそうじゃないか。
ドレスも妹と差をつけて、差別していたんだろう。
その悪行を、神がお怒りになられたのだ。
これからが本番だ!
罪におびえて震えていろよ!」

「……!う、うるさい!黙れ」

サンダース伯爵は最後に怒鳴り付けると、それからは自虐的じぎゃくてきであり無表情な顔に変化する。

マティルダが、つい最近まで実父と信じきっていたサンダース伯爵。
伯爵家の今後は、マティルダがかぎを握っていた。


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