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第6章
8 二人の伯爵たち ④
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自分の領地を言われゴーダン伯爵は、不機嫌さでしかめっ面でマティルダを直視する。
ご令嬢を襲うのではと、王の側にいた騎士たちは緊張感が走った。
「小娘……、ではなく。
サンダース伯爵令嬢、近日中って何時なんだ!
あやふやな事言って、その場しのぎしてるんだろ」
「ー、ブチ切れそう!
数日から一週間ぐらいですかね」
ゴーダン伯爵とマティルダの話に、ベルガー伯爵が薄ら笑いをして小馬鹿に割って入る。
娘グレンダと似た性格、自分に関係なければ別にいい。
「ゴーダン伯爵、こんな話を信じなくて別にイイですよ。
国王陛下は令嬢を信じて、エドワード殿下からアドレス殿下に鞍替えを本当にするおつもりか?」
「エドワードは前から、王太子より外交をしたいと申していた。
アドニスはああ見えても、国を思いやる子である。
迷惑かけるが余と共に、二人を助けてはくれないか。頼む!」
子を思う親心に、こんな伯爵たちもほだされてくる。
「主君が臣下に、頭をむやみに下げてはなりませんぞ!
娘ケイシーが、幸せに慣れればよいのだ」
「良縁を紹介してくれるんですよね!陛下!」
良い方向に話は進み、彼女は自分のお告げ話は要らないのだったと思ってくる。
『早まったのか。
言ってしまったし、夢で大雨降るんだよね。ゴーダン伯爵の山の上でー』
3人の顔を見ていて頬に手を当てながら、 自分が見た正夢を思い出していた。
「和解できて安心した。
伯爵たちの令嬢たちに
妻の王妃がいい相手がおると言っておった。
場を代えて話をせぬか!」
「「良いですな!ハハハ」」
私の存在を居ないものとされて、3人は笑って出ていく。
その後ろ姿を、マティルダはカーテシーして見送った。
「なんだかもう、私はなんだったの?
あんなに、不満と怒りを露にしていたのに。
最後は機嫌は良くなったけど、私は無視をされて声すらかけられなかった」
地味な小娘だとか言われ放題で、それを身分と歳のためにグッと我慢していたのである。
「サンダース伯爵令嬢、お疲れさまでした。
ご令嬢が、陛下と伯爵たちの仲を取り持ってくださったのです」
侍従長だけが彼女を労ってくれたのは、せめてもの安らぎだっただろう。
「いえ、侍従長さんも大変でしたね。
ですが…、あれでいいのですか?」
明確な和解とは思えずに、またぶり返すのではと不安になる。
「国王や貴族の気まぐれは、我々には理解がし難いのです。
あれが、あの方たちの落としどころなんでしょう。
いやはや、凡人には分からないものです」
目じりのシワに、彼のこれまでの苦労が見え隠れする。
ホッとして笑い会うマティルダと、侍従長に分かち合う何かが芽生えていた。
部屋を出てトボトボと自分の部屋に戻る時、窓の外の遠い空に黒い雲が見えていた。
「正夢、また当たりそうね。
ゴーダン伯爵様、私のお告げを忘れていそうで平気かしら?
まぁいいか!
私を嘘つき呼ばわりした人だ。
うん、助けるのをやめた!」
マイヤー伯爵に領地の伝言をやめない彼女は、案外性格が些かお悪いようだ。
自分の部屋に戻ると、王族兄妹たちが私を待っていた。
「ご苦労だったね。
連絡が来てから、お茶の準備をさせているよ」
「ちゃんと私たちは、エドお兄様の言うとおりに勉強したの。メアリー、偉いでしょう?」
「ふふふ、偉いですわ!」
「マティルダ、お父様たちとの話はどうだった?
意地悪されたりしなかったか」
心配そうなアドニス殿下を見て、吹き出し笑いをし出したマティルダ。
不可解な笑いに兄妹たちは、不思議がってかえって彼女が心配になった。
一通りあった内容を話すと、案の定メアリーが1番先に怒りだす。
「そんな失礼なことをマティルダに言ったの!
あの令嬢たちの親だけあって、流石ね!」
「ゴーダン伯爵は、そのマティルダのお告げを信じてないのだろう。
実際、本当に雨は降るのだろうか?」
「アドニス殿下、知りません。
大雨が降らないと被害はないし、大丈夫ですよ。
ゴーダン辺境伯は、私の話はお忘れのようですからね」
「お母様、あんな令嬢たちを誰に紹介するのだろう。
お相手の方々が気の毒ですわ」
昼食前の話し合いが終わったのが遅くなり、サンドイッチとケーキでも何でも頂けたらいい。
疲労には甘いものが欲しくなるのよね。
「お待たせしました~」
メイドたちが入室し、用意した物をテーブルに綺麗に並べている。
腹立つ伯爵たちと対峙したマティルダは、その様子をまだかまだかと待ち望んでいた。
「クスッ、ご飯を待たせられている番犬のようですわ」
「番犬とは、酷い例えだ。
なぁ、マティルダ……」
いただきますって先に言われて嬉しいそうに食べ始める彼女に、アドニスは目を丸くしメアリーたちは笑い声を立てていた。
夢中になっていて食べている最中、遠くてゴロゴロと雷みたいな音が鳴っている。
その雨雲がだんだん巨大になり、ゴーダン辺境領地へ流れて行くのを誰も予想できずにいた。
ご令嬢を襲うのではと、王の側にいた騎士たちは緊張感が走った。
「小娘……、ではなく。
サンダース伯爵令嬢、近日中って何時なんだ!
あやふやな事言って、その場しのぎしてるんだろ」
「ー、ブチ切れそう!
数日から一週間ぐらいですかね」
ゴーダン伯爵とマティルダの話に、ベルガー伯爵が薄ら笑いをして小馬鹿に割って入る。
娘グレンダと似た性格、自分に関係なければ別にいい。
「ゴーダン伯爵、こんな話を信じなくて別にイイですよ。
国王陛下は令嬢を信じて、エドワード殿下からアドレス殿下に鞍替えを本当にするおつもりか?」
「エドワードは前から、王太子より外交をしたいと申していた。
アドニスはああ見えても、国を思いやる子である。
迷惑かけるが余と共に、二人を助けてはくれないか。頼む!」
子を思う親心に、こんな伯爵たちもほだされてくる。
「主君が臣下に、頭をむやみに下げてはなりませんぞ!
娘ケイシーが、幸せに慣れればよいのだ」
「良縁を紹介してくれるんですよね!陛下!」
良い方向に話は進み、彼女は自分のお告げ話は要らないのだったと思ってくる。
『早まったのか。
言ってしまったし、夢で大雨降るんだよね。ゴーダン伯爵の山の上でー』
3人の顔を見ていて頬に手を当てながら、 自分が見た正夢を思い出していた。
「和解できて安心した。
伯爵たちの令嬢たちに
妻の王妃がいい相手がおると言っておった。
場を代えて話をせぬか!」
「「良いですな!ハハハ」」
私の存在を居ないものとされて、3人は笑って出ていく。
その後ろ姿を、マティルダはカーテシーして見送った。
「なんだかもう、私はなんだったの?
あんなに、不満と怒りを露にしていたのに。
最後は機嫌は良くなったけど、私は無視をされて声すらかけられなかった」
地味な小娘だとか言われ放題で、それを身分と歳のためにグッと我慢していたのである。
「サンダース伯爵令嬢、お疲れさまでした。
ご令嬢が、陛下と伯爵たちの仲を取り持ってくださったのです」
侍従長だけが彼女を労ってくれたのは、せめてもの安らぎだっただろう。
「いえ、侍従長さんも大変でしたね。
ですが…、あれでいいのですか?」
明確な和解とは思えずに、またぶり返すのではと不安になる。
「国王や貴族の気まぐれは、我々には理解がし難いのです。
あれが、あの方たちの落としどころなんでしょう。
いやはや、凡人には分からないものです」
目じりのシワに、彼のこれまでの苦労が見え隠れする。
ホッとして笑い会うマティルダと、侍従長に分かち合う何かが芽生えていた。
部屋を出てトボトボと自分の部屋に戻る時、窓の外の遠い空に黒い雲が見えていた。
「正夢、また当たりそうね。
ゴーダン伯爵様、私のお告げを忘れていそうで平気かしら?
まぁいいか!
私を嘘つき呼ばわりした人だ。
うん、助けるのをやめた!」
マイヤー伯爵に領地の伝言をやめない彼女は、案外性格が些かお悪いようだ。
自分の部屋に戻ると、王族兄妹たちが私を待っていた。
「ご苦労だったね。
連絡が来てから、お茶の準備をさせているよ」
「ちゃんと私たちは、エドお兄様の言うとおりに勉強したの。メアリー、偉いでしょう?」
「ふふふ、偉いですわ!」
「マティルダ、お父様たちとの話はどうだった?
意地悪されたりしなかったか」
心配そうなアドニス殿下を見て、吹き出し笑いをし出したマティルダ。
不可解な笑いに兄妹たちは、不思議がってかえって彼女が心配になった。
一通りあった内容を話すと、案の定メアリーが1番先に怒りだす。
「そんな失礼なことをマティルダに言ったの!
あの令嬢たちの親だけあって、流石ね!」
「ゴーダン伯爵は、そのマティルダのお告げを信じてないのだろう。
実際、本当に雨は降るのだろうか?」
「アドニス殿下、知りません。
大雨が降らないと被害はないし、大丈夫ですよ。
ゴーダン辺境伯は、私の話はお忘れのようですからね」
「お母様、あんな令嬢たちを誰に紹介するのだろう。
お相手の方々が気の毒ですわ」
昼食前の話し合いが終わったのが遅くなり、サンドイッチとケーキでも何でも頂けたらいい。
疲労には甘いものが欲しくなるのよね。
「お待たせしました~」
メイドたちが入室し、用意した物をテーブルに綺麗に並べている。
腹立つ伯爵たちと対峙したマティルダは、その様子をまだかまだかと待ち望んでいた。
「クスッ、ご飯を待たせられている番犬のようですわ」
「番犬とは、酷い例えだ。
なぁ、マティルダ……」
いただきますって先に言われて嬉しいそうに食べ始める彼女に、アドニスは目を丸くしメアリーたちは笑い声を立てていた。
夢中になっていて食べている最中、遠くてゴロゴロと雷みたいな音が鳴っている。
その雨雲がだんだん巨大になり、ゴーダン辺境領地へ流れて行くのを誰も予想できずにいた。
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