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第6章
7 二人の伯爵たち ③
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子供たちがお世話になっている令嬢を助けようとしたいが、王は立場の上で一方の片寄りは難しい。
和やかに終わらせたいと考えて、目を閉じて瞑想していたら雲行きがガラッと変わった。
「ゴーダン辺境伯爵様とベルガー伯爵様が、納得すれば宜しいのですね」
「ご令嬢、なんだその物言いはー!
女の癖に愛想ないな」
「ベルガー伯爵、だからですよ。
娘のケイシーの話では、妹に婚約者を寝取られたそうだぞ」
ニヤニヤして、爪先から顔までマティルダを値踏する。
彼女も負けずにその視線を、目を吊り上げて不満を隠さずに浮かべていた。
「それとこれとは、この場の話とは関係ございませんわ。
神のお告げは、そう頻繁には起こりません。
だから、奇跡でなのです!」
理路整然と説明する彼女を、可愛げないと考えて聞いている。
男尊女卑の頭の古い伯爵たち。
「その娘の申す通りじゃあ!
教会が探し当てた者を疑うのか?
卿等は教会と揉め事を起こす気ではないないであろうな」
教会で反応する二人の伯爵たちは、彼らとて宗教がらみでの争いの恐ろしさを知っていた。
主君の王とて、教会とは一線を置いていた。
「そこまではー。ただ……。
証拠を見せて下されば、私たちも納得致しましょう。
ベルガー伯爵もそうであろう」
「この娘の神のお告げで、我らの娘はこれから一から婚姻相手を探さなくてさならない。
親としてハイそうですかと、素直に頷けない」
王を筆頭にマティルダたち部屋にいた者たちも、この子を持つ親心に心を痛めた。
「相手は王家も手伝うので、許してくれないか。
ブルネール侯爵からは、何も文句のひとつも余に言っては来なかったぞ」
またしても燻っていた火種に、火がつきそうな空気になって行く。
『教会の権威で退けようとして、上手く行きかけたのにー。
ブルネール侯爵を出しては逆効果でしょう。王様ー』
彼女は最終手段の望み、空を隙あれば見て天気を予想する。
外は照りつけるギラギラしていて、昼近くなってきたせいで部屋が蒸すようだった。
「ブルネール侯爵ですかー。
侯爵のお嬢さんだけを、最初から婚約者にすれば問題はなかったはずだ」
「ゴーダン辺境伯に仰るとおりだ。
我が家なんて、所詮数あわせだったんでしょうからな」
あの娘の父親だけあって、チクチクと嫌みを言うのが上手だ。
国王はイラッとするが、当たっているので簡単には反論を言えない。
膠着状態になりかかって、マティルダは精神的に疲労し終わりにしたくなる。
「認めさせる証拠を、お二方に見せればよいのですね。
話を聞いていたら、誰かが呼びかける声がしました。
もし、それが当たっていたら信じて貰えますか!?」
「サンダース伯爵令嬢、それはまた神のお告げであるか!」
国王はこんな間近に神に触れる機会があるとは、驚きの中で神秘さを感じていた。
「急なお告げでいらっしゃる。
神も都合良く、お告げをさられるのだな」
「これは、ベルガー伯爵は手厳しい。
お告げの内容によってだな」
マティルダはムッと眉間に力を入れて、堪えていたいるのを国王も気持ちが分かる。
『余も我慢の限界だ。
息子たちの為に堪え忍んでおるが、牢屋にブチ込んでやりたい』
王の顔を見ると赤くなっていると、マティルダはコレはヤバイと急ぐ。
「コホン!ゴーダン辺境伯爵様のご領地には、高い山がこざいますわね」
「ああ、その山で隣国との境になる!
わがゴーダンは、建国より隣国の恐怖から国を守っておるのだ!」
国王の御前で偉そうに胸を張り、彼は祖先を自慢げに語っていた。
「やけに、偉そうにー。
今は昔と違って、国交にはなんの問題ない。
この国は戦争なんて、1度も起きてないぞ!」
ブチギレる一歩前の国王は、二人の伯爵に大声で話す。
「ええ!ゴーダン辺境伯と陛下のご助力の賜物ですわ!」
この中で年若い女性マティルダは王とゴーダン伯爵をヨイショして二人を立てていた。
『ああ胃が痛いし、心臓がドキドキしだしてきた。
もう早く、逃げ出したいよ』
「近日中に、ご領地に雨が降るでしょう。
それにより作物に被害が及ぶと、神様が私にお告げになりました」
両手を胸に当てて、それらしき雰囲気を醸し出して恭しく告げていた。
胡散臭げに私に投げ掛ける。
二人の伯爵たちの視線を外して、それだけを言うのがやっとだった。
和やかに終わらせたいと考えて、目を閉じて瞑想していたら雲行きがガラッと変わった。
「ゴーダン辺境伯爵様とベルガー伯爵様が、納得すれば宜しいのですね」
「ご令嬢、なんだその物言いはー!
女の癖に愛想ないな」
「ベルガー伯爵、だからですよ。
娘のケイシーの話では、妹に婚約者を寝取られたそうだぞ」
ニヤニヤして、爪先から顔までマティルダを値踏する。
彼女も負けずにその視線を、目を吊り上げて不満を隠さずに浮かべていた。
「それとこれとは、この場の話とは関係ございませんわ。
神のお告げは、そう頻繁には起こりません。
だから、奇跡でなのです!」
理路整然と説明する彼女を、可愛げないと考えて聞いている。
男尊女卑の頭の古い伯爵たち。
「その娘の申す通りじゃあ!
教会が探し当てた者を疑うのか?
卿等は教会と揉め事を起こす気ではないないであろうな」
教会で反応する二人の伯爵たちは、彼らとて宗教がらみでの争いの恐ろしさを知っていた。
主君の王とて、教会とは一線を置いていた。
「そこまではー。ただ……。
証拠を見せて下されば、私たちも納得致しましょう。
ベルガー伯爵もそうであろう」
「この娘の神のお告げで、我らの娘はこれから一から婚姻相手を探さなくてさならない。
親としてハイそうですかと、素直に頷けない」
王を筆頭にマティルダたち部屋にいた者たちも、この子を持つ親心に心を痛めた。
「相手は王家も手伝うので、許してくれないか。
ブルネール侯爵からは、何も文句のひとつも余に言っては来なかったぞ」
またしても燻っていた火種に、火がつきそうな空気になって行く。
『教会の権威で退けようとして、上手く行きかけたのにー。
ブルネール侯爵を出しては逆効果でしょう。王様ー』
彼女は最終手段の望み、空を隙あれば見て天気を予想する。
外は照りつけるギラギラしていて、昼近くなってきたせいで部屋が蒸すようだった。
「ブルネール侯爵ですかー。
侯爵のお嬢さんだけを、最初から婚約者にすれば問題はなかったはずだ」
「ゴーダン辺境伯に仰るとおりだ。
我が家なんて、所詮数あわせだったんでしょうからな」
あの娘の父親だけあって、チクチクと嫌みを言うのが上手だ。
国王はイラッとするが、当たっているので簡単には反論を言えない。
膠着状態になりかかって、マティルダは精神的に疲労し終わりにしたくなる。
「認めさせる証拠を、お二方に見せればよいのですね。
話を聞いていたら、誰かが呼びかける声がしました。
もし、それが当たっていたら信じて貰えますか!?」
「サンダース伯爵令嬢、それはまた神のお告げであるか!」
国王はこんな間近に神に触れる機会があるとは、驚きの中で神秘さを感じていた。
「急なお告げでいらっしゃる。
神も都合良く、お告げをさられるのだな」
「これは、ベルガー伯爵は手厳しい。
お告げの内容によってだな」
マティルダはムッと眉間に力を入れて、堪えていたいるのを国王も気持ちが分かる。
『余も我慢の限界だ。
息子たちの為に堪え忍んでおるが、牢屋にブチ込んでやりたい』
王の顔を見ると赤くなっていると、マティルダはコレはヤバイと急ぐ。
「コホン!ゴーダン辺境伯爵様のご領地には、高い山がこざいますわね」
「ああ、その山で隣国との境になる!
わがゴーダンは、建国より隣国の恐怖から国を守っておるのだ!」
国王の御前で偉そうに胸を張り、彼は祖先を自慢げに語っていた。
「やけに、偉そうにー。
今は昔と違って、国交にはなんの問題ない。
この国は戦争なんて、1度も起きてないぞ!」
ブチギレる一歩前の国王は、二人の伯爵に大声で話す。
「ええ!ゴーダン辺境伯と陛下のご助力の賜物ですわ!」
この中で年若い女性マティルダは王とゴーダン伯爵をヨイショして二人を立てていた。
『ああ胃が痛いし、心臓がドキドキしだしてきた。
もう早く、逃げ出したいよ』
「近日中に、ご領地に雨が降るでしょう。
それにより作物に被害が及ぶと、神様が私にお告げになりました」
両手を胸に当てて、それらしき雰囲気を醸し出して恭しく告げていた。
胡散臭げに私に投げ掛ける。
二人の伯爵たちの視線を外して、それだけを言うのがやっとだった。
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