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第6章
6 二人の伯爵たち ②
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融通の利かない性質で、キチンとしてるから侍従長に上り詰めたのであろう。
時間通りにノックして迎えに来る彼に、部屋にいた者たちは冷たい目付きをしている。
「サンダース伯爵令嬢、お時間でございます。
皆様、お待ちになっておりますのでお早く願います」
行きたくない表情を、無理に隠して彼に微笑んで後を歩く。
「マティルダ、終わりましたらアフタヌーンしましょうね」
「メアリー王女殿下、その前に昼食ですわ。
私が居なくとも、お勉強して下さいませね」
えーって顔を崩すのを横目で確認を、してサボるつもりだったのかと思う。
マティルダの機嫌を損なうのをヨシとしない、メアリーの兄エドワード。
「私が責任をもって、メアリーを監視しよう。
サンダース伯爵令嬢、宜しく頼む!」
『宜しくって、何をだ!
私は…、何を彼に頼まれているのか?!
エドワード王子のお言葉は無視でいいわ。
気遣いない侍従長に、早くついて行かなくてはー』
スタスタ前を歩く侍従長に、ドレスの少し裾をあげて早歩きする。
「マティルダ、頑張れ~」
メアリー王女の応援の声に、この兄妹はよく似てるなと苦笑いをした。
部屋の前に警備の騎士が立って、侍従長と掛け合っている。
部屋の奥から、人の怒号が聞こえてくる。
「候補であるから、確定してないではないか!
それでもいいから、卿等は娘を寄越したのだろう?」
「王太子になるからだ!
途中で弟と交代なんて、詐欺だろう!」
「巫山戯てるではないか!
その雨乞いした令嬢の戯言だろう?」
「……( 絶句 )、この部屋に入らなくてはいけないの!?
私がー、ですか?」
「サンダース伯爵令嬢、お急ぎ下さい。
事態は思ったより、切羽詰まっているようです」
背後から、圧をかけられる促す声。
振り返ろうとしたら、扉が開かれて侍従長が軽く背中を押して部屋に入った。
「へーっ……、ああッ!」
前に転びそうになっても、かろうじて体勢を保ってすぐに直立する。
「おおー、マティルダ嬢。
遅かったが、よく参った!」
「マティルダ・サンダース。
陛下のお呼びで馳せ参じました」
頭を下げてカーテシーをする姿に、二人の伯爵は嫌味を言い出す。
「陛下をお待たせして、あの態度かー。
同じ伯爵でも、田舎者では礼儀を知らぬのか!」
「地味な娘だのう!
わが娘グレンダとは、大違いだな!」
ベルガー伯爵は、明らかにマティルダに聞こえるように話す。
「これ、よさないか。
突然、余が呼び出したのだ。
女性とは、支度に時間はかかるもの。
のう、雨乞いの巫女姫」
ほお~、ふ~んって顔付きでマティルダを下げずんでいた。
気分が悪くなる彼女は、無礼な伯爵たちに文句のひとつも言いたいが我慢している。
「……、雨乞いね~。
たまたま雨が降ったのを使って、天啓だと偽ったのではないか!?」
「ゴーダン辺境伯、言い過ぎですぞ!
お気持ちは同意しますがー。
ご令嬢は本当に、神のお声を聞こえたのですかなぁ?」
嘘つき呼ばわりしてるが、当たっているだけにマティルダは顔を赤くした。
ドキドキする鼓動に、落ち着けと自身に言い聞かせる。
「そちらは、余と教会にケンカを売ってるのか!
令嬢のお陰で雨が降り、作物が助かったのだ!
礼を申すのが筋だろう!」
立ち上がって、拳を握り振り上げる。
「陛下、興奮してはなりません。
伯爵たちは、臣下でございますよね。
私は勘違いしてますか?
文句でもございますか?」
侍従長は、身を呈して主の盾になる。
大人たちの下らない言い争いに、黙って静観していた。
「……、部屋に帰りたい」
消えるような小さな声で囁く、マティルダ。
耳が良いのかベンガー伯爵が、眼光鋭く質問してきた。
「雨乞い巫女様なら、今すぐ雨を降らせてみよ!
自分の目で見ないと、私は信じられないのだ!どうだ!」
「…………、どう?なにを?」
どうだって、顔に水でもぶっかけたら納得するかしら……。
怒られるから、やめておこう。
この展開を読めていた彼女は、窓に視線をやり空模様を見るため目を凝らす。
生暖かいジメとした空気が開いている場所からしてくる。
『時はいま!これから、夕立がが降る!』
マティルダは庭師の教えを忠実に観察していて、最近はお天気予想をしていたのである。
それと、一緒に鳥のような野生動物たちの観察もだ。
勝敗はなかなかの8割近くになっていた。
お天気お姉さんならぬ、お天気令嬢の誕生。
今まで伯爵たちに、ふざけた事を言われ続けて堪えていた。
マティルダは、彼らに倍返しをし始めた。
時間通りにノックして迎えに来る彼に、部屋にいた者たちは冷たい目付きをしている。
「サンダース伯爵令嬢、お時間でございます。
皆様、お待ちになっておりますのでお早く願います」
行きたくない表情を、無理に隠して彼に微笑んで後を歩く。
「マティルダ、終わりましたらアフタヌーンしましょうね」
「メアリー王女殿下、その前に昼食ですわ。
私が居なくとも、お勉強して下さいませね」
えーって顔を崩すのを横目で確認を、してサボるつもりだったのかと思う。
マティルダの機嫌を損なうのをヨシとしない、メアリーの兄エドワード。
「私が責任をもって、メアリーを監視しよう。
サンダース伯爵令嬢、宜しく頼む!」
『宜しくって、何をだ!
私は…、何を彼に頼まれているのか?!
エドワード王子のお言葉は無視でいいわ。
気遣いない侍従長に、早くついて行かなくてはー』
スタスタ前を歩く侍従長に、ドレスの少し裾をあげて早歩きする。
「マティルダ、頑張れ~」
メアリー王女の応援の声に、この兄妹はよく似てるなと苦笑いをした。
部屋の前に警備の騎士が立って、侍従長と掛け合っている。
部屋の奥から、人の怒号が聞こえてくる。
「候補であるから、確定してないではないか!
それでもいいから、卿等は娘を寄越したのだろう?」
「王太子になるからだ!
途中で弟と交代なんて、詐欺だろう!」
「巫山戯てるではないか!
その雨乞いした令嬢の戯言だろう?」
「……( 絶句 )、この部屋に入らなくてはいけないの!?
私がー、ですか?」
「サンダース伯爵令嬢、お急ぎ下さい。
事態は思ったより、切羽詰まっているようです」
背後から、圧をかけられる促す声。
振り返ろうとしたら、扉が開かれて侍従長が軽く背中を押して部屋に入った。
「へーっ……、ああッ!」
前に転びそうになっても、かろうじて体勢を保ってすぐに直立する。
「おおー、マティルダ嬢。
遅かったが、よく参った!」
「マティルダ・サンダース。
陛下のお呼びで馳せ参じました」
頭を下げてカーテシーをする姿に、二人の伯爵は嫌味を言い出す。
「陛下をお待たせして、あの態度かー。
同じ伯爵でも、田舎者では礼儀を知らぬのか!」
「地味な娘だのう!
わが娘グレンダとは、大違いだな!」
ベルガー伯爵は、明らかにマティルダに聞こえるように話す。
「これ、よさないか。
突然、余が呼び出したのだ。
女性とは、支度に時間はかかるもの。
のう、雨乞いの巫女姫」
ほお~、ふ~んって顔付きでマティルダを下げずんでいた。
気分が悪くなる彼女は、無礼な伯爵たちに文句のひとつも言いたいが我慢している。
「……、雨乞いね~。
たまたま雨が降ったのを使って、天啓だと偽ったのではないか!?」
「ゴーダン辺境伯、言い過ぎですぞ!
お気持ちは同意しますがー。
ご令嬢は本当に、神のお声を聞こえたのですかなぁ?」
嘘つき呼ばわりしてるが、当たっているだけにマティルダは顔を赤くした。
ドキドキする鼓動に、落ち着けと自身に言い聞かせる。
「そちらは、余と教会にケンカを売ってるのか!
令嬢のお陰で雨が降り、作物が助かったのだ!
礼を申すのが筋だろう!」
立ち上がって、拳を握り振り上げる。
「陛下、興奮してはなりません。
伯爵たちは、臣下でございますよね。
私は勘違いしてますか?
文句でもございますか?」
侍従長は、身を呈して主の盾になる。
大人たちの下らない言い争いに、黙って静観していた。
「……、部屋に帰りたい」
消えるような小さな声で囁く、マティルダ。
耳が良いのかベンガー伯爵が、眼光鋭く質問してきた。
「雨乞い巫女様なら、今すぐ雨を降らせてみよ!
自分の目で見ないと、私は信じられないのだ!どうだ!」
「…………、どう?なにを?」
どうだって、顔に水でもぶっかけたら納得するかしら……。
怒られるから、やめておこう。
この展開を読めていた彼女は、窓に視線をやり空模様を見るため目を凝らす。
生暖かいジメとした空気が開いている場所からしてくる。
『時はいま!これから、夕立がが降る!』
マティルダは庭師の教えを忠実に観察していて、最近はお天気予想をしていたのである。
それと、一緒に鳥のような野生動物たちの観察もだ。
勝敗はなかなかの8割近くになっていた。
お天気お姉さんならぬ、お天気令嬢の誕生。
今まで伯爵たちに、ふざけた事を言われ続けて堪えていた。
マティルダは、彼らに倍返しをし始めた。
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