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第6章

3 真夜中の談話

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  フクロウがホウホウーと鳴く声が遠くから聞こえるくらい、夜の静けさが際立きわだっている。
声変わりしてない。
女の子のような声の主はー。

「どうして、ここに?
アドニス殿下、深夜にどうなされたのですか?」

「それは、先にこの僕が知りたいよ。
こんな夜中に、エド兄様となんで二人で一緒にいるさ!」

「おい、声が大きいぞ。
二人とも、少し静かに!」

「「殿下 ( 兄上 ) もです!」」

ここで我に返り、冷静になろうとした3人である。
あれからかなり時がつ、全然人が誰も通らない。

「しかし、警備は何してるんだ。
誰、独り通らないじゃないか」

エドワードは避暑地でもゆるゆるさに、警備する騎士たちの怠慢たいまんに不安を感じる。

「まぁまぁ。
だから、私たちは落ち着いて談話ができるのです。
許してあげて下さい」

「マティルダは優しいな。
それより何で、二人はここに居たんです」

二人の関係を疑る彼は、暗闇の中で顔を真っ赤にしていた。

『兄上とマティルダは、内緒で付き合っていたのか?
嘘をついて、何でもない振りをしていた』

頭の中は、怪しみ疑う事ばかりを考えていた。
イライラする感情は、嫉妬心である。

「お前こそ、真夜中にマティルダを探し回ってあやしいぞ」

マティルダもそれを不審ふしんに感じていて、どう聞き出そうかと考えていた矢先やさきであった。

『おお、エドワード殿下!
それをうかがいたかったのよ!』

マティルダは目を覚めながら、イヤッ目を爛々らんらんとして彼を見つめていた。

『兄をー。
あんな目で見てるなんて、まさかー!!
好きになってしまったのか?
僕より背も高いし、大人だからか?』

アドニスはマティルダに指摘されてから、僕から私呼びに代えていたのを忘れてしまう。
たまに、素に戻るのである。
感情が自制出来ずにいる時だ。

「夢の中で、君が泣いていた。
だから気になって…。
それで、健やかに寝てるか確認しに部屋に行ったら……。
マティルダがベッドに居なかった」

2人はアドニスの話を聞いて、ギョッとして同時に同じことを感じていた。

「お前!?
深夜に、令嬢の寝室に忍び込んだのか。
変態へんたい……、なのか?」 

「違う!初めてしたんだ!
行くのを躊躇ためらったけど、気になって寝られなくなって……。
だから、そっと覗こうと思ってー。
マティルダの様子を確認するだけだよ」

「アドニス王子、こんなことをするのは最後にして下さいませ。
私だから笑って許しますが、他人でしたら犯罪です。
思い込み激しい令嬢もおりますので、危険な行為でございます」

彼女は、まるで乳母のように言い聞かす。
二人の関係が微妙であるのを、エドワードは確認して苦笑いをした。

「そうでしたか。
偶然にマティルダが兄上を見つけて、ここで話をされていただけですか」

「彼女の夢の話を聞いていた。
夢の中でサンダース伯爵が倒れたの見て、眠れずにさ迷っていたそうだ」

お腹空いて調理場に忍び込もうとしたのは、二人には言わないでおこう。
都合のいい言われ方をしてもらい、彼女は微笑みでエドワードの話を肯定こうていする。

「私とメアリーは話を聞かされていないから、サンダース伯爵がどうして倒れた理由は詳しく知らない」

「そのうち、全部が判明したら噂されますわ。
こういう話は、皆様本当にお好きですからね」

お茶会やパーティーの話題になるだろう。
アリエールは学園に戻れないだろうし、ハロルドはどうするんだろうか。
私はハロルドと婚約破棄出来るだろうか?

「何もかも捨てて、新しく人生を歩みたくなりました。
私はこの先、どうなるか不安で寝れそうもありませんわ」

空腹で寝れないなんて、ご令嬢の彼女には口に出せない。

「マティルダ…、僕が守るよ」

「はいはい、アドニス殿下。
誰これ構わず言ってはダメですよ。王子様たちは特にね」

「ふう、眠くなってきたな。
誰にも見つからずに、そろそろ部屋に戻らないか?」

エドワード王子の提案に私たちも従って、立ち上がって部屋に帰るためにバラバラになる。

「サンダース伯爵令嬢。
留学の話を考えてくれないか。
君も満更まんざらではないだろう」

瞳を大きくした自分に目を細めてるエドワード殿下を、一礼してからきびし返す。

『私の考えなんて、彼には手に取るように分かってしまうのね。
生まれながらの王太子殿下だけあるわ』

悩んで考えても、どちらに転ぶか予想はできない。
なら、悩んでも仕方ないこと。
もう1度寝て忘れてしまおうと
、彼女は窓の外を見上げて夜空に輝く星たちに誓っていた。
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