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第5章
22 衝撃的な報告
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側仕えが王に耳打ちをすると、やがてそこには旅姿をした男性が現れた。
国王の前に片ひざを付き、頭を下げ続ける。
少し間を置き王が発言を許すと、サンダース伯爵の屋敷の中を探して指輪を探して持ってきたのを報告する。
『指輪?
母の指にはめて、棺に納められたのではなかったの』
王が指輪を確認し、ほぉ~とため息をつく姿を色々考えて様子を見ていた。
「これは…、サファイアではない。
ブルーダイヤモンドだ!
これだけの物は、伯爵が持つものではないと思うぞ」
こう仰ると王から、この場を取り仕切るマイヤー伯爵の手に渡る。
「指輪は現在伯爵夫人を名乗ってる者が、屋敷に隠し持っていた。
母上の棺を調べる前に、もしかしたらと探してみたのだ」
そう言ってマイヤー伯爵がわざわざ私の側に来て、亡き母が亡くなる前まで大切にしていた指輪を渡す。
「なんて綺麗!
宝石は間近で見たことはないですけど、これはキラキラして美しい。
青い色は、サファイアと覚えてました」
掌の中で、青空のような指輪。
「亡くなった者から外された、この指輪を伯爵は偽りの夫人に授けた。
本物の妻の持ち物を、彼女が持っていたらと渡したみたいだな」
「男は形から入るのですね!
人の持ち物を他の女に渡すなんて、なんと甲斐性なしでしょう。
受け取る、その女も女だわ!」
王妃は不満満々で、自分の夫をチラリと見て嫌みを言ってみた。
「余はそなただけだ、王妃!
他所に女性はいないぞ!」
別に誰も疑っていないのに、王は妻に取り繕うのに必死だ。
「陛下のお言葉にあったが、ブルーダイヤモンドは高位貴族でもなかなか持てぬ品」
微妙な空気の両陛下を無視して、話を進める伯爵は鈍感なのかと息子はドキドキしている。
家宝と言われていたブルーダイヤモンドの指輪の裏には、文字が裏に掘ってあった。
調べたらこう書かれていた。
「愛する君の証しに 」
名前も書かれてない。
誰が贈ったのかはわからない。
「これって侯爵以上の方から探してみれば、すぐに手がかりがあるのではないだろうか」
アンゲロス公爵は、自分の隣国の知り合いの伝をと申し出てくれる。
「公爵様にご足労をおかけするのは、心苦しく申し訳けないです。
母は……。私を身ごもっていて、この国へ嫁いだのですね」
複雑な気持ちで、亡き実母や現サンダース夫妻はどんな関係だったのだろうか。
「サンダースは、それを分かって婚姻したのだ。
全ては祖先からあった借金を終わらし、自分の子を授かったもう1人の女のためにー」
ひときわ威厳ある態度で堂々と声を響かせるのは、先ほど狼狽えを見せた王であった。
横目で王妃がマティルダに、同じ位の年齢である彼女が心情を述べ出す。
「女として、愛する人の子を産みたいと思うもの。
2人の女性の立場を考えて、サンダース伯爵も決断したのでしょう」
「お言葉ですが…。
男としては気持ちは複雑で、愛情で差別的な冷遇はあったのでしょう。
最低限の人として、理性は残されていたみたいですがー」
直接取り調べをしてきたマイヤー伯爵は、そのやり取りで想像して話している。
「そう、最低限……。
他国から嫁がれて、ましてや初産。
どんなにか、心寂しかったことか」
出産経験が唯一ある彼女は、自身と彼女を重ね合わせていた。
まっ平らのお腹を、両手で大事そうに触っていた。
その場でこれを見ていた者は、その悲しくも慈愛に満ちた表情に目が離せない。
『母もあんな表情で、私の誕生を待ちわびてくれたのか。
生きていて一目でもお会いして、声を聞き話をしたかった』
叶えられない想いを、マティルダはこのとき残念に感じた。
「しかし、平民の出の者を貴族の夫人にしたのは不味い。
姉妹の出生を偽ったのもだ」
公爵は公平な立場で、この場を仕切るように助言する。
あくまでも供述で裏はとれてない。
マティルダの父親を探してからにしようと、部屋にいた大人たちの意見だった。
三人の男、エドワードとロバート。
そして、ジョージはこの男女の複雑に絡み合う愛をどうとっていたのだろう。
静かにただ聞いていた彼らには、これからの恋愛観に支障をきたさなければいいとマティルダは祈っていた。
本人の彼女が1番、心に打撃を与えたのに気づいていない。
驚きの報告をお開き終わると、部屋では全員が脱力感に襲われたのだった。
国王の前に片ひざを付き、頭を下げ続ける。
少し間を置き王が発言を許すと、サンダース伯爵の屋敷の中を探して指輪を探して持ってきたのを報告する。
『指輪?
母の指にはめて、棺に納められたのではなかったの』
王が指輪を確認し、ほぉ~とため息をつく姿を色々考えて様子を見ていた。
「これは…、サファイアではない。
ブルーダイヤモンドだ!
これだけの物は、伯爵が持つものではないと思うぞ」
こう仰ると王から、この場を取り仕切るマイヤー伯爵の手に渡る。
「指輪は現在伯爵夫人を名乗ってる者が、屋敷に隠し持っていた。
母上の棺を調べる前に、もしかしたらと探してみたのだ」
そう言ってマイヤー伯爵がわざわざ私の側に来て、亡き母が亡くなる前まで大切にしていた指輪を渡す。
「なんて綺麗!
宝石は間近で見たことはないですけど、これはキラキラして美しい。
青い色は、サファイアと覚えてました」
掌の中で、青空のような指輪。
「亡くなった者から外された、この指輪を伯爵は偽りの夫人に授けた。
本物の妻の持ち物を、彼女が持っていたらと渡したみたいだな」
「男は形から入るのですね!
人の持ち物を他の女に渡すなんて、なんと甲斐性なしでしょう。
受け取る、その女も女だわ!」
王妃は不満満々で、自分の夫をチラリと見て嫌みを言ってみた。
「余はそなただけだ、王妃!
他所に女性はいないぞ!」
別に誰も疑っていないのに、王は妻に取り繕うのに必死だ。
「陛下のお言葉にあったが、ブルーダイヤモンドは高位貴族でもなかなか持てぬ品」
微妙な空気の両陛下を無視して、話を進める伯爵は鈍感なのかと息子はドキドキしている。
家宝と言われていたブルーダイヤモンドの指輪の裏には、文字が裏に掘ってあった。
調べたらこう書かれていた。
「愛する君の証しに 」
名前も書かれてない。
誰が贈ったのかはわからない。
「これって侯爵以上の方から探してみれば、すぐに手がかりがあるのではないだろうか」
アンゲロス公爵は、自分の隣国の知り合いの伝をと申し出てくれる。
「公爵様にご足労をおかけするのは、心苦しく申し訳けないです。
母は……。私を身ごもっていて、この国へ嫁いだのですね」
複雑な気持ちで、亡き実母や現サンダース夫妻はどんな関係だったのだろうか。
「サンダースは、それを分かって婚姻したのだ。
全ては祖先からあった借金を終わらし、自分の子を授かったもう1人の女のためにー」
ひときわ威厳ある態度で堂々と声を響かせるのは、先ほど狼狽えを見せた王であった。
横目で王妃がマティルダに、同じ位の年齢である彼女が心情を述べ出す。
「女として、愛する人の子を産みたいと思うもの。
2人の女性の立場を考えて、サンダース伯爵も決断したのでしょう」
「お言葉ですが…。
男としては気持ちは複雑で、愛情で差別的な冷遇はあったのでしょう。
最低限の人として、理性は残されていたみたいですがー」
直接取り調べをしてきたマイヤー伯爵は、そのやり取りで想像して話している。
「そう、最低限……。
他国から嫁がれて、ましてや初産。
どんなにか、心寂しかったことか」
出産経験が唯一ある彼女は、自身と彼女を重ね合わせていた。
まっ平らのお腹を、両手で大事そうに触っていた。
その場でこれを見ていた者は、その悲しくも慈愛に満ちた表情に目が離せない。
『母もあんな表情で、私の誕生を待ちわびてくれたのか。
生きていて一目でもお会いして、声を聞き話をしたかった』
叶えられない想いを、マティルダはこのとき残念に感じた。
「しかし、平民の出の者を貴族の夫人にしたのは不味い。
姉妹の出生を偽ったのもだ」
公爵は公平な立場で、この場を仕切るように助言する。
あくまでも供述で裏はとれてない。
マティルダの父親を探してからにしようと、部屋にいた大人たちの意見だった。
三人の男、エドワードとロバート。
そして、ジョージはこの男女の複雑に絡み合う愛をどうとっていたのだろう。
静かにただ聞いていた彼らには、これからの恋愛観に支障をきたさなければいいとマティルダは祈っていた。
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