上 下
109 / 207
第5章

21 出生の秘密

しおりを挟む
  窓からピカッと光り、その後に雷鳴がとどろいた。
サンダース伯爵の話で雷とは、タイミングがあまりにもよすぎて驚く。
雨が激しく降り、窓ガラスが割れてしまうのではと心配するほどである。

「マティルダ嬢。
君は母上が、自分の本当の産みの母でないと王妃様に訴えていたな」

「はい…。乳母が実の母が亡くなっていると、本人から直接教えてくれました」
  
これは私に、調査してくれた伯爵は再度確認したかったんだろう。

「マイヤー伯爵、サンダース伯爵夫妻に伺ったんのでしょう?」

王妃はこれ以上何があるのって、疑問を表情に表してくる。

「……、王妃様。
マティルダ嬢はー。
マティルダ嬢、驚かないでくれ」

しかめた顔は苦しげでマイヤー伯爵は、何を声を出して話すのだろうか。

「ハッ!まさか!
母が違うだけでないのですか?!」

自然に出てきた言葉は、自分でも驚く内容。

『まさか、私はー。
ここまでの考えはしなかった。
それでは、私は誰なの?
私こそが、赤の他人だったの?』

マティルダの体は座っていても、グラッと左右に揺れて落ちかけそうになる。
隣にいたロバートは手を差しのべて支えようとしたが、彼女は右手の掌を見せて大丈夫という態度をした。

部屋全体が、ますます息苦しくなる。
私の考えと皆の思っていることは同じだろう。

「そうです。
マティルダ・サンダースは、サンダース伯爵と血の繋がりがない。
伯爵と貴女の母上は、そう行為をしていない」

「マティルダは誰の子なのだ!?」

1度も声を出してはいなかった、アンゲロス公爵令息ロバート。
 
「実に言い辛い。
君は、誰が見ても賢い令嬢だ。
だからー、真実を述べよう!」

マイヤー伯爵は想像通りに、サンダース伯爵からの事情を語る。
娘アリエールと妻カーラが罪を犯し牢屋に別々に入れられ、伯爵は頭も心も混乱していた。

「我がサンダース伯爵の領地は、田舎で特産物もない。
不作が続いたら借金して、何とか貴族としての対面に保っていたのです」

落ち着けさせようと、これまでの根元こんげんを話し始める。

「その借金がどうにもならなくなったそうだ。
タイミング良く隣国の知り合いから、ある話が持ち上がった」

話とは借金を全て肩代わりする代わりに、隣国の伯爵令嬢と婚姻をすることだ。
問題はひとつある。

「伯爵令嬢は、すで身籠みごもっていたのだ。
君の実母はこのような理由の中で、サンダース伯爵の妻になった」

サンダース伯爵も、平民の女性との間に子を宿していた。
偶然にも、産み月も一緒。

「私はこれを利用した。
カーラは、平民で本妻には出来ない。
せめて子供だけでも、私の子として育てたかったのです」

『こうして、私たちに双子が生まれたのだ。
母は違うのは分かっていたが、父も違っていたなんて思わなかった』

血の繋がらないのは自分だったという話を聞き、斜め上以上過ぎる内容に笑いたくなってくる。
気が触れて見えるので、マティルダは耐えていた。

「貴族の令嬢は、婚姻前に身籠っているのははばかれる。
よって婚姻届けを先に出していて、此方に出し忘れた事にしたそうで神の祝福だけはされたようだな」

この祝福で、神父は母を知っていたのか。
王妃も納得して、静かに話に聞き入っていた。

「神が、二人の女性に情けをお与えになられたのか。
君と妹君は偶然にも同じ日に生まれ。
そして、先に君が生まれたのだ」

「……、そうでしたか。
なぜ、似ていなかったのか。
両親に愛情を貰えなかったのか。
やっと、長い間の疑念が分かりましたわ」

心にあった霧が晴れた気がしたが、また新たな深い霧が現れた。
父親は隣国の人、誰なのだろうか。
マティルダは、不思議と知りたいとも別に思わない。

「父上の手がかりはある。
婚姻の時、神父に家宝と神父に話していた。
サファイアの指輪だ」

「でも、マイヤー伯爵様。
そのサファイアの指輪は、亡き母と一緒に棺に納められてます」

棺を開けて、指輪を出して調べれば分かるがー。
以前は王妃様に許可したが、自分の父がサンダース伯爵でないと知ると迷ってしまう。

彼女は戸惑って悩んでしまうと、マイヤー伯爵は驚愕きょうがくの真実をまたもや話し出してきた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...