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第5章
14 愛娘との再会
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伯爵は初めて通る危険な道を、娘を案じながら走って行く。
彼には娘が二人はいたが一人は愛せるのに、もう一人は愛せずにいた。
「婚姻などしなければ良かった。
いくら家が、金に困っていたからとはいえ。
そして、あんな事をしなければー」
馬車で独りだけだから、言える後悔と罪への告白だった。
揺れが止まると目的地に到着した。
「サンダース伯爵様、到着致しました」
馭者にそう言われて自分さら扉を開けると、馭者の後ろに憲兵たちが立って愛想悪く私を見ていた。
「うむっ、分かった」
降り立った前は古びた石造りの塔に、3人はアリエールの居る中に進んでいく。
「ウッ、なんだ蒸し暑い!
こんな場所に娘が居るのか」
「罪人は、ここに収監されてます。
例え、貴族の令嬢もです。
彼女はそれだけの事をしてしまった」
「……、そうであるか」
彼は一言だけ返事をして、絶句絶句ぎみになり階段を下っている。
夕暮れに差し掛かるせいかもあるのか。
どんどん、薄暗く蒸し暑い。
「この部屋にお嬢様は居ますが、ちょっとサンダース伯爵お待ち下さい」
ドアを開けられて中に入ると、中から話し声がする。
「アリエール・サンダース!特別に面会を許可する。
良いか我々も立ち会うが、話す内容をよくよく考えて話すのだ」
「誰がー。ああ~、お父様!
お父様とお母様なのね!
私を、二人が助けに来てくれたのね!」
椅子から立ち上がり、鉄格子に向かい近寄ってヨタヨタと歩く。
キーッッと音がすると、嬉しさと懐かしさで彼女は涙を溜めて大声で呼ぶ。
「お父様!お父様なの!!」
「あーあ、アリエール!
こんなに痩せて…、可哀想に!
すぐにここから、お前を出してやるからな!」
見ずぼらしい格好をされて、以前よりガリガリに見えた娘に驚き鉄格子にまた一歩近づく。
「お父様ー!出してください!
私はハロルドを殺そうとしてません。
崖から落ちそうになったのでー、ついしてしまったの!」
涙ながらに言ってくるのを信じて、父は娘の話に耳を傾けて怒るのである。
「それでは、正当防衛ではないか!
今すぐに娘を釈放しろ!」
後ろで父娘の話を聞いているのかは知らないが、二人は表情ひとつ変えずに返答する。
「いくら言っても、無理だ!
実際に、彼女は人を傷つけたのです。
法により、裁かれなくてはならない!」
「未成年と擁護しても無駄だ!
殺人は何があっても、極刑!
未遂であるが、私らは現行犯してるのを見ているのだからな!」
次々に自分の頼みを蹴ってくる彼らに、サンダース伯爵は怒りが止まらない。
「わ、私はサンダース伯爵だ!お前たちは、憲兵ごときではないか!
言うことを聞くのだ!」
今にも飛びつきそうな勢いで、伯爵は身分差で命令をしてくる。
「それは強要罪にあたる。
サンダース伯爵、貴方も暫くは別室に入って頂こう!」
「私がー、強要罪だって?
ふざけたことを言うでない!!」
会えたばかりの父とまた別れるのを察知して、娘アリエールは嬉し泣きから驚きと不安の涙になり声を荒げた。
「お父様に何をするつもり!
言いがかりをつけて、私たちを罪を擦り付けようとするのね」
鉄格子から右腕を伸ばして、父を助けようとするがー。
時すでに遅しで、男たちに後ろに両手を縄で括られている。
「なっ、何をするんだ!
この無礼者めがー!
伯爵と知っての狼藉か?!」
彼より背が高く威圧感のある方が、身分差で騒ぐサンダース伯爵を黙らせた。
「さっきから聞けば、伯爵伯爵って喧しい!
憲兵だと平民で身分無しとでも言いたいのか?!」
「ぷっー、ハハハ!
そこまでにされたらどうだ。
マイヤー伯爵!」
「マイヤー伯爵だと?!
貴公がー、あのマイヤー伯爵なのか?!」
同列の身分といえ片田舎の伯爵と、王都で王家の側でお声を掛けて頂く伯爵とでは差があったのである。
「お、お父様ー!
お願い助けてー!」
肩を落とし沈黙している父に、アリエールは懇願するが彼女には話の事情を理解していない。
娘の助けを求める声に、返事さえ出来ないでいる。
「む、娘にー。
もう一度だけ。声を掛けさせてはくれぬか?」
マイヤー伯爵は同僚を無言で見つめると、彼はコクりと頷いた。
情けをかけて縄を伸ばして、2人は扉の外へ出ていったのだ。
父娘は何の話をしたかは、彼らにはわからない。
だが、泣き声だけは中から漏れ聞こえていた。
彼には娘が二人はいたが一人は愛せるのに、もう一人は愛せずにいた。
「婚姻などしなければ良かった。
いくら家が、金に困っていたからとはいえ。
そして、あんな事をしなければー」
馬車で独りだけだから、言える後悔と罪への告白だった。
揺れが止まると目的地に到着した。
「サンダース伯爵様、到着致しました」
馭者にそう言われて自分さら扉を開けると、馭者の後ろに憲兵たちが立って愛想悪く私を見ていた。
「うむっ、分かった」
降り立った前は古びた石造りの塔に、3人はアリエールの居る中に進んでいく。
「ウッ、なんだ蒸し暑い!
こんな場所に娘が居るのか」
「罪人は、ここに収監されてます。
例え、貴族の令嬢もです。
彼女はそれだけの事をしてしまった」
「……、そうであるか」
彼は一言だけ返事をして、絶句絶句ぎみになり階段を下っている。
夕暮れに差し掛かるせいかもあるのか。
どんどん、薄暗く蒸し暑い。
「この部屋にお嬢様は居ますが、ちょっとサンダース伯爵お待ち下さい」
ドアを開けられて中に入ると、中から話し声がする。
「アリエール・サンダース!特別に面会を許可する。
良いか我々も立ち会うが、話す内容をよくよく考えて話すのだ」
「誰がー。ああ~、お父様!
お父様とお母様なのね!
私を、二人が助けに来てくれたのね!」
椅子から立ち上がり、鉄格子に向かい近寄ってヨタヨタと歩く。
キーッッと音がすると、嬉しさと懐かしさで彼女は涙を溜めて大声で呼ぶ。
「お父様!お父様なの!!」
「あーあ、アリエール!
こんなに痩せて…、可哀想に!
すぐにここから、お前を出してやるからな!」
見ずぼらしい格好をされて、以前よりガリガリに見えた娘に驚き鉄格子にまた一歩近づく。
「お父様ー!出してください!
私はハロルドを殺そうとしてません。
崖から落ちそうになったのでー、ついしてしまったの!」
涙ながらに言ってくるのを信じて、父は娘の話に耳を傾けて怒るのである。
「それでは、正当防衛ではないか!
今すぐに娘を釈放しろ!」
後ろで父娘の話を聞いているのかは知らないが、二人は表情ひとつ変えずに返答する。
「いくら言っても、無理だ!
実際に、彼女は人を傷つけたのです。
法により、裁かれなくてはならない!」
「未成年と擁護しても無駄だ!
殺人は何があっても、極刑!
未遂であるが、私らは現行犯してるのを見ているのだからな!」
次々に自分の頼みを蹴ってくる彼らに、サンダース伯爵は怒りが止まらない。
「わ、私はサンダース伯爵だ!お前たちは、憲兵ごときではないか!
言うことを聞くのだ!」
今にも飛びつきそうな勢いで、伯爵は身分差で命令をしてくる。
「それは強要罪にあたる。
サンダース伯爵、貴方も暫くは別室に入って頂こう!」
「私がー、強要罪だって?
ふざけたことを言うでない!!」
会えたばかりの父とまた別れるのを察知して、娘アリエールは嬉し泣きから驚きと不安の涙になり声を荒げた。
「お父様に何をするつもり!
言いがかりをつけて、私たちを罪を擦り付けようとするのね」
鉄格子から右腕を伸ばして、父を助けようとするがー。
時すでに遅しで、男たちに後ろに両手を縄で括られている。
「なっ、何をするんだ!
この無礼者めがー!
伯爵と知っての狼藉か?!」
彼より背が高く威圧感のある方が、身分差で騒ぐサンダース伯爵を黙らせた。
「さっきから聞けば、伯爵伯爵って喧しい!
憲兵だと平民で身分無しとでも言いたいのか?!」
「ぷっー、ハハハ!
そこまでにされたらどうだ。
マイヤー伯爵!」
「マイヤー伯爵だと?!
貴公がー、あのマイヤー伯爵なのか?!」
同列の身分といえ片田舎の伯爵と、王都で王家の側でお声を掛けて頂く伯爵とでは差があったのである。
「お、お父様ー!
お願い助けてー!」
肩を落とし沈黙している父に、アリエールは懇願するが彼女には話の事情を理解していない。
娘の助けを求める声に、返事さえ出来ないでいる。
「む、娘にー。
もう一度だけ。声を掛けさせてはくれぬか?」
マイヤー伯爵は同僚を無言で見つめると、彼はコクりと頷いた。
情けをかけて縄を伸ばして、2人は扉の外へ出ていったのだ。
父娘は何の話をしたかは、彼らにはわからない。
だが、泣き声だけは中から漏れ聞こえていた。
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