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第5章
13 屈辱の日々
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小さな窓しかない部屋の中で、ジメジメして蒸し暑く汗が滲んむ。
流れる汗を、袖で拭いても拭いて出てくる。
「おい、女!
部屋から出て風呂に入れ!」
アリエールは牢屋に入って3日目で、その数日ですっかり窶れて薄汚れていた。
「風呂、お風呂に入れるの!」
彼女はやっと入れると、目を輝かせて喜んでいた。
牢屋から出て廊下を歩くと、別の牢にいる男たちがニヤニヤして彼女を見ていた。
「ここで入るんだ!
感謝しろよ!
俺たちが水をここまで、運んでやったんだからな」
人が一人入れる木製の丸い桶に水は半分ぐらい、ボロボロのタオルがその中に浮かんでいた。
「ちょっと、待って!
メイドは何処にいるの!」
寮でもお風呂では、背中とかを洗ってくれる専用のメイドがいた。
「メイドだと?!
そんな者は居るわけない!
ふざけてるのか」
「なんだ?
俺たちに、体を洗って欲しいんか?
隅々まで洗ってやろうか?」
厭らしい目で男たちは、アリエールをジロジロと見て笑っている。
「結構よ!
部屋から出ていってー!」
「いいか!
外で見張ってるから、逃げるなんて考えるな!」
『この人たち、扉の近くにいる。
まさか、盗み見しないわよね』
扉を閉めて出ていくが、アリエールは扉に鍵を閉めようと近づく。
「嘘でしょう。
鍵がかかってないわ!
いつ開けられるか分からないじゃない!」
お風呂に入りたいけど、裸になったら見られてしまうかもー。
タオルを絞って、服をいつでも着られるようにして拭くしかできなかった。
「家ならお湯に花の香がして、メイドが丁寧に髪や体を……。
それが、自分で冷たい水で拭くだけなんて…。
こんなんでは、綺麗にならないわ!」
扉を見つめて、男たちの気配に気をつける。
油断してたら本気、自分の裸体を覗かれてしまう。
ガチャガチャ!と、突然ドアノブの音がした。
「きゃあ~!
勝手に入って来ないでよ!」
ドカドカとあの2人がアリエールに灰色の踝までの服を投げつける。
「ちょっとは、キレイになった様だな。
ほら、服だ!
ボロボロな服と交換しろ」
床にある服を手に取ると、着ているドレスと見比べる。
「こんな木綿の服と、私の絹のドレスと交換だなんて!」
「土で汚れた服を着続けたいなら、俺は別に構わないぜ」
仕方がないと思い、男たちに着替えるから出て言ってと叫んだ。
「俺たちが居てもいいだろう。
下着姿なんだから、見ても減るワケじゃないしよ」
「出ていってよーー!!」
私が下衆な男たちにバカにされて、悔しい悔しいわー!
『お父様、お母様。
助けて!
こんな毎日、もういやよー』
会いたい人たちの名を呼びかけ、屈辱の日々に助けを求める。
瞳が涙で霞んで見える服を、手を伸ばしシワになるまで強く握る。
娘の声が聞こえた気がして、父は居眠りしていた目を開ける。
馬車はアリエールが居る所へ、憲兵たちが先導する馬について行くのだった。
その伯爵の馬車の後を、荷馬車に乗る伯爵夫人は気分が少し悪い。
「奥様、大丈夫ですか。
ミント水を用意してあります。
嗅げば、気分が和らぎますから」
「有り難う。助かるわ」
鼻に近づけてクンクンと嗅ぐと、スッーとして気が楽になってきた。
荷馬車が停まると馭者馭者が外から話しかけてくる。
「あの、伯爵様の馬車が食堂で食事をするようです。
どうしますか?」
顔を見せられない夫人は、帽子で隠している。
かわりにメイドが、馭者の話を聞いていた。
「奥様、伯爵様はお昼みたいです」
「お昼?私は食堂に入れない。
貴女たちは、食べてきてもいいわ。
食欲がないし……」
「食べないのは体に良くありません。
何か作って貰い、コチラに持って来ます。
ここでお待ちくださいませ」
二人が食堂に行ってしまうと、夫人は木の下の木陰に座る。
「今年は、いつもより暑いわね。
早く、あの子にアリエールに会いたいわ」
メイドが食べ物を運んでくるまで婦人は、風が吹いても熱風でぐったりして目を閉じて休んでいた。
娘がまさか、牢屋に入れられて居るとも知らずに。
流れる汗を、袖で拭いても拭いて出てくる。
「おい、女!
部屋から出て風呂に入れ!」
アリエールは牢屋に入って3日目で、その数日ですっかり窶れて薄汚れていた。
「風呂、お風呂に入れるの!」
彼女はやっと入れると、目を輝かせて喜んでいた。
牢屋から出て廊下を歩くと、別の牢にいる男たちがニヤニヤして彼女を見ていた。
「ここで入るんだ!
感謝しろよ!
俺たちが水をここまで、運んでやったんだからな」
人が一人入れる木製の丸い桶に水は半分ぐらい、ボロボロのタオルがその中に浮かんでいた。
「ちょっと、待って!
メイドは何処にいるの!」
寮でもお風呂では、背中とかを洗ってくれる専用のメイドがいた。
「メイドだと?!
そんな者は居るわけない!
ふざけてるのか」
「なんだ?
俺たちに、体を洗って欲しいんか?
隅々まで洗ってやろうか?」
厭らしい目で男たちは、アリエールをジロジロと見て笑っている。
「結構よ!
部屋から出ていってー!」
「いいか!
外で見張ってるから、逃げるなんて考えるな!」
『この人たち、扉の近くにいる。
まさか、盗み見しないわよね』
扉を閉めて出ていくが、アリエールは扉に鍵を閉めようと近づく。
「嘘でしょう。
鍵がかかってないわ!
いつ開けられるか分からないじゃない!」
お風呂に入りたいけど、裸になったら見られてしまうかもー。
タオルを絞って、服をいつでも着られるようにして拭くしかできなかった。
「家ならお湯に花の香がして、メイドが丁寧に髪や体を……。
それが、自分で冷たい水で拭くだけなんて…。
こんなんでは、綺麗にならないわ!」
扉を見つめて、男たちの気配に気をつける。
油断してたら本気、自分の裸体を覗かれてしまう。
ガチャガチャ!と、突然ドアノブの音がした。
「きゃあ~!
勝手に入って来ないでよ!」
ドカドカとあの2人がアリエールに灰色の踝までの服を投げつける。
「ちょっとは、キレイになった様だな。
ほら、服だ!
ボロボロな服と交換しろ」
床にある服を手に取ると、着ているドレスと見比べる。
「こんな木綿の服と、私の絹のドレスと交換だなんて!」
「土で汚れた服を着続けたいなら、俺は別に構わないぜ」
仕方がないと思い、男たちに着替えるから出て言ってと叫んだ。
「俺たちが居てもいいだろう。
下着姿なんだから、見ても減るワケじゃないしよ」
「出ていってよーー!!」
私が下衆な男たちにバカにされて、悔しい悔しいわー!
『お父様、お母様。
助けて!
こんな毎日、もういやよー』
会いたい人たちの名を呼びかけ、屈辱の日々に助けを求める。
瞳が涙で霞んで見える服を、手を伸ばしシワになるまで強く握る。
娘の声が聞こえた気がして、父は居眠りしていた目を開ける。
馬車はアリエールが居る所へ、憲兵たちが先導する馬について行くのだった。
その伯爵の馬車の後を、荷馬車に乗る伯爵夫人は気分が少し悪い。
「奥様、大丈夫ですか。
ミント水を用意してあります。
嗅げば、気分が和らぎますから」
「有り難う。助かるわ」
鼻に近づけてクンクンと嗅ぐと、スッーとして気が楽になってきた。
荷馬車が停まると馭者馭者が外から話しかけてくる。
「あの、伯爵様の馬車が食堂で食事をするようです。
どうしますか?」
顔を見せられない夫人は、帽子で隠している。
かわりにメイドが、馭者の話を聞いていた。
「奥様、伯爵様はお昼みたいです」
「お昼?私は食堂に入れない。
貴女たちは、食べてきてもいいわ。
食欲がないし……」
「食べないのは体に良くありません。
何か作って貰い、コチラに持って来ます。
ここでお待ちくださいませ」
二人が食堂に行ってしまうと、夫人は木の下の木陰に座る。
「今年は、いつもより暑いわね。
早く、あの子にアリエールに会いたいわ」
メイドが食べ物を運んでくるまで婦人は、風が吹いても熱風でぐったりして目を閉じて休んでいた。
娘がまさか、牢屋に入れられて居るとも知らずに。
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