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第5章
1 生け贄にされた令嬢
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湖は透明度があり、水面は太陽に照らされてキラキラという表現は当てはまらない。
「湖面がギラついていて、目がおかしくなりそう。
こんな湖の真ん中でボートを浮かべて儀式をやるのですか?
常識的に考えたら変でしょう?この状態は、普通じゃない!」
雨乞い儀式が始まる前から、マティルダは静まり返っている中で大声で文句を言っている。
「ウォーレン大司教、巫女が怒っておられます。
男性でも怖がる湖の真ん中は、場所的には如何なものでしょうか?」
「……、仕方なかろう。
教皇がこうしろと手引き書を書かれておるのだからー。
私だって最初は反対したが、前にした通りにしろと仰るのだ」
同行してきた神官が上司の大司教にそう忠告するのは、巫女のマティルダが怯えていると本気に思っていたからだ。
「文献をしらべて読みましたが、神殿でされたと書かれてました。
あのような場所じゃあなかったです。
落ちて溺れたら、責任問題になります。
場所を直ぐに代えましょう。
ウォーレン大司教ー!」
マティルダの耳にも微かに揉めているのが、聞こえて無謀な事をされているのを知ってしまう。
『これって、まさに生け贄にそれたの。
神殿の中央の柱に、処女の生娘が使われたとか噂があった。
雨乞いはー、水に命を捧げるのではないよな?!
そんな~、死にたくないよ!』
先程よりも、風邪が強くなっているとマティルダは焦りだす。
エドワードとロバートは次世代の統治者とその補佐として、儀式を目にする機会になった。
「エドワード王子、この儀式は必要なのですか?
彼女、嫌がってます」
「止めてあげたいが、私には権限がないんだ。
父と母が口添えをしてくれてば、なんとかなるかもしれん」
息子エドワードが頼っていた両親は、湖を見渡す絶好の場所でテントに貼られた中にいた。
4つの目が泳いでいて、特に王妃は青い顔になり夫に震えて言う。
「貴方ー、陛下ー~!!
あれは…、あれはないです!
もし、彼女が湖に落ちたらー。
どうするんですかぁ!?」
優しい彼女が、まさかこんな扱いにされるなんて…。
気軽に頼んだ訳ではないが、湖の真ん中でボートに1人乗せられている。
「余も、初めて知ったのだ。
王妃、落ち着いてくれ。
よく見よ、近くで兵士たちがボートで見守っている。
落ちても救助できる」
マティルダのボートを囲むように、4つのボートが湖に浮かんでいた。
注目を一身に向けられている、巫女であるマティルダ。
『とっとと、これを終わらせてしまおう』
腹を括った彼女は、不安定に揺れ動くボートの真ん中に立ち上がった。
そして、天に両手を挙げる。
両足を踏んばって、顔を天に太陽を見上げた。
「天よ!日照り続く地に、恵みの雨を我らにお与え下さい!
民を代表して、宿願を願う!
神よー!天よー~!
我が祈りを届けたまえー!!
慈雨をここへー、我らへ降らせたまえー~!!」
『これで、果たして降るんだろうか?!
ただ雨降らせよ!しか大声で叫ぶだけじゃん。
こんなんで、雨なんて降るか!ばぁーかぁー~!!』
ハッ!いけない!
こんな事を言っては……。
もうひとつ、お願い事がー。
「おおっ!神からの声が聞こえる~!
次期王には、次男アドニスと名が聞こえてきたー!!
天は彼に、天啓を与えたもうた!」
彼女の想いは神に通じたのか。
空が急に暗くなり、マティルダ含めその儀式を見ていた者たちが空を見続けているとー。
「ドッドドンー!どっかんー!ピカッ!ゴロゴロ…。ドーンーー!!」
考えるより早く、頭の上に向かって激しい稲妻が落ちてきた。
彼女の安否はどうなる……。
次回まで、乞うご期待と待って欲しい。
自分で実況してしまう、マティルダ。
それだけ、彼女なりに我を忘れてていた。
「湖面がギラついていて、目がおかしくなりそう。
こんな湖の真ん中でボートを浮かべて儀式をやるのですか?
常識的に考えたら変でしょう?この状態は、普通じゃない!」
雨乞い儀式が始まる前から、マティルダは静まり返っている中で大声で文句を言っている。
「ウォーレン大司教、巫女が怒っておられます。
男性でも怖がる湖の真ん中は、場所的には如何なものでしょうか?」
「……、仕方なかろう。
教皇がこうしろと手引き書を書かれておるのだからー。
私だって最初は反対したが、前にした通りにしろと仰るのだ」
同行してきた神官が上司の大司教にそう忠告するのは、巫女のマティルダが怯えていると本気に思っていたからだ。
「文献をしらべて読みましたが、神殿でされたと書かれてました。
あのような場所じゃあなかったです。
落ちて溺れたら、責任問題になります。
場所を直ぐに代えましょう。
ウォーレン大司教ー!」
マティルダの耳にも微かに揉めているのが、聞こえて無謀な事をされているのを知ってしまう。
『これって、まさに生け贄にそれたの。
神殿の中央の柱に、処女の生娘が使われたとか噂があった。
雨乞いはー、水に命を捧げるのではないよな?!
そんな~、死にたくないよ!』
先程よりも、風邪が強くなっているとマティルダは焦りだす。
エドワードとロバートは次世代の統治者とその補佐として、儀式を目にする機会になった。
「エドワード王子、この儀式は必要なのですか?
彼女、嫌がってます」
「止めてあげたいが、私には権限がないんだ。
父と母が口添えをしてくれてば、なんとかなるかもしれん」
息子エドワードが頼っていた両親は、湖を見渡す絶好の場所でテントに貼られた中にいた。
4つの目が泳いでいて、特に王妃は青い顔になり夫に震えて言う。
「貴方ー、陛下ー~!!
あれは…、あれはないです!
もし、彼女が湖に落ちたらー。
どうするんですかぁ!?」
優しい彼女が、まさかこんな扱いにされるなんて…。
気軽に頼んだ訳ではないが、湖の真ん中でボートに1人乗せられている。
「余も、初めて知ったのだ。
王妃、落ち着いてくれ。
よく見よ、近くで兵士たちがボートで見守っている。
落ちても救助できる」
マティルダのボートを囲むように、4つのボートが湖に浮かんでいた。
注目を一身に向けられている、巫女であるマティルダ。
『とっとと、これを終わらせてしまおう』
腹を括った彼女は、不安定に揺れ動くボートの真ん中に立ち上がった。
そして、天に両手を挙げる。
両足を踏んばって、顔を天に太陽を見上げた。
「天よ!日照り続く地に、恵みの雨を我らにお与え下さい!
民を代表して、宿願を願う!
神よー!天よー~!
我が祈りを届けたまえー!!
慈雨をここへー、我らへ降らせたまえー~!!」
『これで、果たして降るんだろうか?!
ただ雨降らせよ!しか大声で叫ぶだけじゃん。
こんなんで、雨なんて降るか!ばぁーかぁー~!!』
ハッ!いけない!
こんな事を言っては……。
もうひとつ、お願い事がー。
「おおっ!神からの声が聞こえる~!
次期王には、次男アドニスと名が聞こえてきたー!!
天は彼に、天啓を与えたもうた!」
彼女の想いは神に通じたのか。
空が急に暗くなり、マティルダ含めその儀式を見ていた者たちが空を見続けているとー。
「ドッドドンー!どっかんー!ピカッ!ゴロゴロ…。ドーンーー!!」
考えるより早く、頭の上に向かって激しい稲妻が落ちてきた。
彼女の安否はどうなる……。
次回まで、乞うご期待と待って欲しい。
自分で実況してしまう、マティルダ。
それだけ、彼女なりに我を忘れてていた。
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