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第4章
23 儀式前の出来事
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この夏は、人生の中で特別になる。
雨乞いの儀式の服を着て、鏡に写る自分を見ていた。
バタバタと足音が聞こえて、メアリー王女だとわかる。
私の部屋にこんな音を立てるのは、この国で彼女しか居ないからだ。
鏡越しに飛び込んでくる、美少女を咎める顔つきをする。
「メアリー王女殿下。
そんな足音を立ててはいけませんよ」
「マティルダは、頭が固い~。
お小言を言うのは、お母様とマティルダだけよ。クスクス」
可愛いのは正義だ。
彼女に甘くなるのも、納得出来る。
「緊張している時に、からかうのをよせよ!
適当に肩の力を抜いてすれば、マティルダなら出来るはずだ」
お二人も、こんな私を思って励ましてくれている。
そんなに、私の表情が固いのかなぁ。
口元を上下にして、目を大きくしてみた。
「「ぶーっ、笑えるー!」」
笑いあっていると、神官服に身を包む男性たちがマテリアルに声をかけていた。
「サンダース伯爵令嬢、支度は出来たようですね。
そろそろ、参りましょう」
笑い顔からひきつり顔に、パッと変わるのを心配する幼い王子と王女。
「マティルダ、終わったらアフタヌーンティーしましょう!」
「良いね、女官に頼んでおくからな!」
「はい、楽しみにしてます。
きっと、疲れてるから美味しく頂けそう」
あまり会話をすると、覚えたのを忘れてしまう。
雨乞いの呪文じゃなくて、神にお願いする言葉をー。
ため息を吐き出したいが、叱られそうなので我慢した。
神聖な行事なので、付き添う者は厳選される。
今から彼女は雨乞いだけでなく、それ以外にも誰にも秘密のことをする。
前日の午前中のお勉強時間のアドニス殿下との会話を思い返す。
問題を解くのが難しいのか、彼は迷い顔で話しかけてきた。
「どうかされましたか?
これは難しい問題じゃないのに」
珍しい、彼がこんな簡単な問題に悩むなんてー。
「マティルダは…、僕が。私が国王に相応しいと思うか?
兄上は自分よりも、私が適性があると言ってくれたのだ」
「エドワード王子は、本当に継ぎたくなかったのは本心からでしたのね」
「……、資格があると思うか?」
『アドニス殿下はずっと成りたかったのだろう。国王にー』
「う~ん?資格とか相応しいかなんて、やってみないとね。
後世の人々が語るから、生きている間は分からないわよ」
こんな答えなのって、呆気になっている。
マティルダは、彼のこの表情がおかしくて笑いたい。
真面目な質問だから笑ってはいけない。
「やってないのに…、確かにそうだ。
私は予備だと思っていた。
兄は、国王にヤル気満々だと思っていたから」
「土壇場になって、逃げたくなったんでしょう。
やりたい人が、やった方がうまくいくわ。
何でも、そんなもんよ」
意地悪だったかなぁ~。
やれるよとか頑張れって言って欲しいって、分かりやすく顔に書いてある。
優しい言葉を言っても、それは彼の為にはならない。
「殿下は家族よりも、国民を大切にできますか?
国民の為にー。
酷ですが、それぐらいの気概がないといけませんわ」
首を捻る素振りをして、キッパリと言い切った。
「私は欲張りだから、どちらも大事だ!
国民も家族も両方、大切にする。
これが、私の答えだ!
マティルダ」
「立派な考えです。
そのお心をいつまでもお忘れにならないで下さい」
首を縦に振って、笑顔から暗い表情に変わってゆく。
「こう話していても、王はエドワード兄様だよ。
長年の継承は変わりはしない。
いくら父上に訴えてみても、無理なんだと思う。
言うだけムダだなんだ」
「お二人のお心は固まっているのですね。
人では無理でも、奇跡は起こる時もあります。
だから、希望を捨ててはなりません」
自信ある言い方で彼女を、いつものと違う人に見せる。
一介の伯爵令嬢の私が、この国の王を決めてしまう。
恐ろしさに武者震いをする。
周辺にいた人たちは、彼女は雨乞いの儀式に緊張してるのだと思っていた。
『山に雲がかかっている。
きっと必ず、雨は降るわ。
そして、未来も変わる』
山の頂を見つめながら、雨乞いする湖の前へ立つ。
正面のその山と空を、自分の瞳に入れて写し込んでいた。
青み帯びた珍しい金髪の長い髪が、激しく吹く風に揺れて翻る。
雨乞いの儀式の服を着て、鏡に写る自分を見ていた。
バタバタと足音が聞こえて、メアリー王女だとわかる。
私の部屋にこんな音を立てるのは、この国で彼女しか居ないからだ。
鏡越しに飛び込んでくる、美少女を咎める顔つきをする。
「メアリー王女殿下。
そんな足音を立ててはいけませんよ」
「マティルダは、頭が固い~。
お小言を言うのは、お母様とマティルダだけよ。クスクス」
可愛いのは正義だ。
彼女に甘くなるのも、納得出来る。
「緊張している時に、からかうのをよせよ!
適当に肩の力を抜いてすれば、マティルダなら出来るはずだ」
お二人も、こんな私を思って励ましてくれている。
そんなに、私の表情が固いのかなぁ。
口元を上下にして、目を大きくしてみた。
「「ぶーっ、笑えるー!」」
笑いあっていると、神官服に身を包む男性たちがマテリアルに声をかけていた。
「サンダース伯爵令嬢、支度は出来たようですね。
そろそろ、参りましょう」
笑い顔からひきつり顔に、パッと変わるのを心配する幼い王子と王女。
「マティルダ、終わったらアフタヌーンティーしましょう!」
「良いね、女官に頼んでおくからな!」
「はい、楽しみにしてます。
きっと、疲れてるから美味しく頂けそう」
あまり会話をすると、覚えたのを忘れてしまう。
雨乞いの呪文じゃなくて、神にお願いする言葉をー。
ため息を吐き出したいが、叱られそうなので我慢した。
神聖な行事なので、付き添う者は厳選される。
今から彼女は雨乞いだけでなく、それ以外にも誰にも秘密のことをする。
前日の午前中のお勉強時間のアドニス殿下との会話を思い返す。
問題を解くのが難しいのか、彼は迷い顔で話しかけてきた。
「どうかされましたか?
これは難しい問題じゃないのに」
珍しい、彼がこんな簡単な問題に悩むなんてー。
「マティルダは…、僕が。私が国王に相応しいと思うか?
兄上は自分よりも、私が適性があると言ってくれたのだ」
「エドワード王子は、本当に継ぎたくなかったのは本心からでしたのね」
「……、資格があると思うか?」
『アドニス殿下はずっと成りたかったのだろう。国王にー』
「う~ん?資格とか相応しいかなんて、やってみないとね。
後世の人々が語るから、生きている間は分からないわよ」
こんな答えなのって、呆気になっている。
マティルダは、彼のこの表情がおかしくて笑いたい。
真面目な質問だから笑ってはいけない。
「やってないのに…、確かにそうだ。
私は予備だと思っていた。
兄は、国王にヤル気満々だと思っていたから」
「土壇場になって、逃げたくなったんでしょう。
やりたい人が、やった方がうまくいくわ。
何でも、そんなもんよ」
意地悪だったかなぁ~。
やれるよとか頑張れって言って欲しいって、分かりやすく顔に書いてある。
優しい言葉を言っても、それは彼の為にはならない。
「殿下は家族よりも、国民を大切にできますか?
国民の為にー。
酷ですが、それぐらいの気概がないといけませんわ」
首を捻る素振りをして、キッパリと言い切った。
「私は欲張りだから、どちらも大事だ!
国民も家族も両方、大切にする。
これが、私の答えだ!
マティルダ」
「立派な考えです。
そのお心をいつまでもお忘れにならないで下さい」
首を縦に振って、笑顔から暗い表情に変わってゆく。
「こう話していても、王はエドワード兄様だよ。
長年の継承は変わりはしない。
いくら父上に訴えてみても、無理なんだと思う。
言うだけムダだなんだ」
「お二人のお心は固まっているのですね。
人では無理でも、奇跡は起こる時もあります。
だから、希望を捨ててはなりません」
自信ある言い方で彼女を、いつものと違う人に見せる。
一介の伯爵令嬢の私が、この国の王を決めてしまう。
恐ろしさに武者震いをする。
周辺にいた人たちは、彼女は雨乞いの儀式に緊張してるのだと思っていた。
『山に雲がかかっている。
きっと必ず、雨は降るわ。
そして、未来も変わる』
山の頂を見つめながら、雨乞いする湖の前へ立つ。
正面のその山と空を、自分の瞳に入れて写し込んでいた。
青み帯びた珍しい金髪の長い髪が、激しく吹く風に揺れて翻る。
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