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第4章
21 構ってられない
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真夏の殺人的な暑さに負けそうになり、急ぎ中へ入ると人の気配がない。
汗で体の水分を奪われ、喉を潤すのを最優先にする。
彼女は部屋へ戻ろうとしたが、そこへ弱々しい声で名を呼ばれた。
瞬間的に振り返ると、仲が悪くなってバラバラになっていたはずのエドワード殿下の婚約者候補たち。
「あ…、皆様どうなさったのですか?」
「サンダース伯爵令嬢に、折り入って御相談したいのです。
当事者でなく関係のない貴女なら、冷静にお考えになられると思いまして…」
この手の事は、なるべく関わらない方がいい。
「ブルネール侯爵令嬢。
満足できる御相談のお答えは、わたしには無理ございます」
ブルネール侯爵令嬢サラ様は、マイヤー伯爵令息に好意を持っていた。
「マティルダ様ー、そんなー!
突き放すように仰らないで!」
「エドワード殿下が、王太子をご辞退するなんて…。
そんなのは嘘ですよね?マティルダ様」
後から話し出してきた2人の伯爵令嬢は、まだ王妃の座を諦めてなさそうだった。
侯爵令嬢のサラより、令嬢たちは顔色が冴えない。
「ここで、話を誰かに聞かれたらまずいでしょう?
私の部屋に行きましょう」
3人は黙り、周辺に人がいないのを見て彼女と後ろについて部屋へ歩きだす。
そして、部屋の中へ入るとエドワード王子の話を始めた。
「どうぞ、座ってください。
将来の王太子の座を、アドニス王子に譲るかどうかですか。
その事に関しての質問ですね」
「エドワード殿下が本気で仰っていると、サンダース伯爵令嬢は考えていますか?」
「サラ様。エドワード殿下は、本気で言われていると私は思います」
「え!」「えっ!」「そう?」
違うと言って欲しいみたいな、彼女たちの言葉と表情。
「世襲は、嫡男であり長男。
ましてや、次期国王様です。
交代するには、特別な説明が必要になると思いますがー」
他人事なので、至極当たり前に話して聞かせていた。
「じゃあ!エドワード殿下の立場は、このままって言うのね!」
ゴーダン伯爵令嬢ケイシーは自身の考えに、マティルダも同じだろうと同意を求めた。
「彼がイヤだと仰っても、普通は誰も賛同しないでしょう。
このまま、何も変わらないわ」
ベルガー伯爵令嬢グレンダは当然という顔をして、3人に魅力的な色気を私たちに向けてていた。
マティルダは、思わず同性同士なのにドキッとしてしまう。
「失礼な質問をします。
婚約者候補になられた時から、エドワード殿下を男性として好意を持っていたのですか」
「「「……、う~ん?」」」
可哀想でお気の毒、男より未来の王としか見ていなかった。
彼が外交官にでもなって、外へ行きたいのも気持ちがわかる。
「もしも、もしもですよ。
彼が王ならなくとも、3人の内で誰か嫁ぐ気持ちはおありでしたか?」
「マティルダ様は、ご存知でしょう。
私は別の方が…。(ゴニョゴニョ) 」
「私も父の命令で、仕方なくでして…。
王家は権威はありますが、あんな面倒で窮屈なのは御免ですわ」
「私も!私もですわー!
自由恋愛して、お嫁に行きたいですもの」
サラ、グレンダ、ケイシー。
自分のことしか考えない。
『ですわ、ですわってウザイですわ!
愛ない婚姻はあるが、若い令嬢ならそんな気持ちになるのも当然と思う』
だんだんと面倒くさくなり、マティルダは投げやりになりかかる。
「はいはい!
奇跡でも起きて、殿下がただの人になっても怒らないようにして下さい。
エドワード王子様だって、皆様と同じで自由になりたい気持ちがあるかもしれないですね~」
「そうすると婚約者を私たちは、また新たに探さなくてはならないの」
「ベルガー伯爵令嬢は色っぽいから、男の方が近づいて寄ってきますよ。
いっそ、後妻なんて如何ですか」
「貴女方はー!
どうしてケンカばかりしてるの?」
「なんで、いつも偉そうなのよ!」
「そうよ!どうせ殿下の婚約者になれないんだから、猫被らなくてももう構わないじゃない」
この場にいても何も良いことなし、言い争っている令嬢たちからそっと離れ部家を出る。
『こんな見かけだけは綺麗な人たちと、婚約する前に逃げられて良かったわ。
私も逃げよう、やってられるか!』
まだあの方々の金切り声が耳に残り、自分の部屋から飛び出してしまう。
精神的に疲れて喉がカラカラで、これからどうしょうか立ち止まる。
廊下で窓の空を見て、しばらくは黄昏っていた。
こんな魂の脱けがら状態の彼女は、後ろから誰かに突然肩を叩かれた。
マティルダは体を大きくビクってなり、追いかけてきた令嬢たちの誰かだとイヤな顔をして後ろを振り向く。
振り向き様にしかめっ面をされて、驚きの表情を浮かべていたのは予想外の人だった。
汗で体の水分を奪われ、喉を潤すのを最優先にする。
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瞬間的に振り返ると、仲が悪くなってバラバラになっていたはずのエドワード殿下の婚約者候補たち。
「あ…、皆様どうなさったのですか?」
「サンダース伯爵令嬢に、折り入って御相談したいのです。
当事者でなく関係のない貴女なら、冷静にお考えになられると思いまして…」
この手の事は、なるべく関わらない方がいい。
「ブルネール侯爵令嬢。
満足できる御相談のお答えは、わたしには無理ございます」
ブルネール侯爵令嬢サラ様は、マイヤー伯爵令息に好意を持っていた。
「マティルダ様ー、そんなー!
突き放すように仰らないで!」
「エドワード殿下が、王太子をご辞退するなんて…。
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後から話し出してきた2人の伯爵令嬢は、まだ王妃の座を諦めてなさそうだった。
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私の部屋に行きましょう」
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そして、部屋の中へ入るとエドワード王子の話を始めた。
「どうぞ、座ってください。
将来の王太子の座を、アドニス王子に譲るかどうかですか。
その事に関しての質問ですね」
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「サラ様。エドワード殿下は、本気で言われていると私は思います」
「え!」「えっ!」「そう?」
違うと言って欲しいみたいな、彼女たちの言葉と表情。
「世襲は、嫡男であり長男。
ましてや、次期国王様です。
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ゴーダン伯爵令嬢ケイシーは自身の考えに、マティルダも同じだろうと同意を求めた。
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このまま、何も変わらないわ」
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マティルダは、思わず同性同士なのにドキッとしてしまう。
「失礼な質問をします。
婚約者候補になられた時から、エドワード殿下を男性として好意を持っていたのですか」
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可哀想でお気の毒、男より未来の王としか見ていなかった。
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