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第4章
11 愚か者
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伯爵令嬢たちを探し求めてエドワードは怒りようを見て、王妃である母に会いに行ったのではと思った。
彼が王妃の部屋に訪れてノックをすると、掃除をしていたメイドが扉を開ける。
「これは、エドワード殿下!」
掃除の手を止めてお辞儀をして、黙っていると王妃の居所を聞くと驚きの返しが返ってきた。
「王妃様は、陛下にお会いに参りました。
そう言えばゴーダン辺境伯爵とベルガー伯爵令嬢が、殿下のようにコチラにお越しになりました」
のほほ~んと答える。
「なん、なんだとー!
彼女らが、この部屋に。
母上に、もう会いに来たのか!」
エドワードは一歩後ろに足を退くと、教えてくれたメイドたちに礼を言って駆け出す。
『絶対に今頃、父上や母上に話している。
私は…、国王に゙なりなくない。
弟のアドニスに、代わりになって貰うことをだ!』
そして、息切らして長い廊下をバタバタと走る。
一方の両陛下の部屋から出た令嬢たちは疲労し、ひとまずはゴーダン伯爵令嬢の部屋に避難していた。
「緊張したわ。
疲れに行っただけよ。
王妃様だけだと思っていたのに、国王様までもいらっしゃっていたなんて…」
「ゴーダン伯爵令嬢、そうでしたわね。
王妃様お一人だけなら、お話をできますけど…。
国王樣には、あんな話をとても伝えられません」
2人は勢いが無くなり、王太子妃の夢も砕けて将来に影が差してしまった。
「この王の世継ぎが、まさか玉座に座りたくないなんて。
挙げ句に弟本人に、後継ぎを頼むとは…」
「私たちは皆、王妃にはなれない。
うちのベルガー伯爵は、もとから望み薄だから。
でも、ゴーダン伯爵は違うんではない?」
「誰かが、選ばれる訳じゃない。
誰も選ばれない。
私たちはエドワード殿下のせいにして、#嘆_な__#げき泣いていればいいのよ」
「被害者ぶって、将来目をかけて貰うのね。
誰か良い人紹介してくれるかなぁ」
2人は椅子に腰をおろすと、この先をどうしたらいいかを相談し合う。
国王と王妃は、伯爵令嬢たちの不可解な来訪に胸が妙に騒いでいた。
「エドワードと令嬢たちの間に、何かあったようだ」
「なら、ブルネール侯爵令嬢。
彼女だけが居ないのが変ですわ」
「仲たがいでもしたんだろう。
女同士ならよくある。
王妃もそういう場を、かなり見ておるのではないか。ハハハ」
王は妻の王妃をからかっては、この時は上機嫌で笑っておられた。
「おからい遊ばして、妾を笑うになるなんて。
お人が悪いですわ。
陛下はー、クスクスッ」
王妃も王が声を出して笑い合っているのを、お付きの周りの者も小さく不敬にあたらないように見ている。
この朗らかな空気が、ガラリと逆になってしまう。
その原因の人が訪れようとしていた。
「父上と母上が、伯爵令嬢たちと会っているそうだな」
「これはエドワード殿下、ハイ……。
ですが、今はー」
側使いの女官が返事のハイだけを聞くと、彼は奥の部屋に入りながら話しかけた。
「父上、私は本気なのですよ!
今さらで申し訳ないですが、王太子にはアドニスに代えて頂きたい!
婚約者候補たちから、妻を選びたくないのです!」
いきなり愛息が意味不明な言語に、この国の1番尊い夫婦は微笑みを引っ込めた。
「エドワード!!
いきなり無礼なー!
挨拶もせずに、下らないことを申すな!」
「陛下、落ち着いて下さいませ。
エドワード、貴方……。
いまの話は本当の気持ちなの?
伯爵令嬢たちはー、それを教えに妾たちに会いに来たのか…」
夫が息子を殴りかかりそうな剣幕に、王妃には無意識に右腕に手をかける。
「なんと愚かな…。余たちに、先に相談しなかった!
親を信用できなかったのか!
息子が、こんな馬鹿者とは…。
お~ぉ、情けない……」
息子に振り上げた拳はブルブル震え、それを止めた王妃の美しい手もとが小刻みに動くのが振動として伝わっていた。
エドワードは伯爵令嬢たちが何も話してなかったのを、両親の話で驚き知ったのである。
『本当にー、私は愚か者だ!』
黙っていればよかったのだ。
自爆した自分に語りかけ、両膝と両手を突き絨毯の模様を唖然とし眺める。
この国で1番権威ある親子のいる豪華な部屋は、まるで牢屋に放り込まれた気分になった。
彼が王妃の部屋に訪れてノックをすると、掃除をしていたメイドが扉を開ける。
「これは、エドワード殿下!」
掃除の手を止めてお辞儀をして、黙っていると王妃の居所を聞くと驚きの返しが返ってきた。
「王妃様は、陛下にお会いに参りました。
そう言えばゴーダン辺境伯爵とベルガー伯爵令嬢が、殿下のようにコチラにお越しになりました」
のほほ~んと答える。
「なん、なんだとー!
彼女らが、この部屋に。
母上に、もう会いに来たのか!」
エドワードは一歩後ろに足を退くと、教えてくれたメイドたちに礼を言って駆け出す。
『絶対に今頃、父上や母上に話している。
私は…、国王に゙なりなくない。
弟のアドニスに、代わりになって貰うことをだ!』
そして、息切らして長い廊下をバタバタと走る。
一方の両陛下の部屋から出た令嬢たちは疲労し、ひとまずはゴーダン伯爵令嬢の部屋に避難していた。
「緊張したわ。
疲れに行っただけよ。
王妃様だけだと思っていたのに、国王様までもいらっしゃっていたなんて…」
「ゴーダン伯爵令嬢、そうでしたわね。
王妃様お一人だけなら、お話をできますけど…。
国王樣には、あんな話をとても伝えられません」
2人は勢いが無くなり、王太子妃の夢も砕けて将来に影が差してしまった。
「この王の世継ぎが、まさか玉座に座りたくないなんて。
挙げ句に弟本人に、後継ぎを頼むとは…」
「私たちは皆、王妃にはなれない。
うちのベルガー伯爵は、もとから望み薄だから。
でも、ゴーダン伯爵は違うんではない?」
「誰かが、選ばれる訳じゃない。
誰も選ばれない。
私たちはエドワード殿下のせいにして、#嘆_な__#げき泣いていればいいのよ」
「被害者ぶって、将来目をかけて貰うのね。
誰か良い人紹介してくれるかなぁ」
2人は椅子に腰をおろすと、この先をどうしたらいいかを相談し合う。
国王と王妃は、伯爵令嬢たちの不可解な来訪に胸が妙に騒いでいた。
「エドワードと令嬢たちの間に、何かあったようだ」
「なら、ブルネール侯爵令嬢。
彼女だけが居ないのが変ですわ」
「仲たがいでもしたんだろう。
女同士ならよくある。
王妃もそういう場を、かなり見ておるのではないか。ハハハ」
王は妻の王妃をからかっては、この時は上機嫌で笑っておられた。
「おからい遊ばして、妾を笑うになるなんて。
お人が悪いですわ。
陛下はー、クスクスッ」
王妃も王が声を出して笑い合っているのを、お付きの周りの者も小さく不敬にあたらないように見ている。
この朗らかな空気が、ガラリと逆になってしまう。
その原因の人が訪れようとしていた。
「父上と母上が、伯爵令嬢たちと会っているそうだな」
「これはエドワード殿下、ハイ……。
ですが、今はー」
側使いの女官が返事のハイだけを聞くと、彼は奥の部屋に入りながら話しかけた。
「父上、私は本気なのですよ!
今さらで申し訳ないですが、王太子にはアドニスに代えて頂きたい!
婚約者候補たちから、妻を選びたくないのです!」
いきなり愛息が意味不明な言語に、この国の1番尊い夫婦は微笑みを引っ込めた。
「エドワード!!
いきなり無礼なー!
挨拶もせずに、下らないことを申すな!」
「陛下、落ち着いて下さいませ。
エドワード、貴方……。
いまの話は本当の気持ちなの?
伯爵令嬢たちはー、それを教えに妾たちに会いに来たのか…」
夫が息子を殴りかかりそうな剣幕に、王妃には無意識に右腕に手をかける。
「なんと愚かな…。余たちに、先に相談しなかった!
親を信用できなかったのか!
息子が、こんな馬鹿者とは…。
お~ぉ、情けない……」
息子に振り上げた拳はブルブル震え、それを止めた王妃の美しい手もとが小刻みに動くのが振動として伝わっていた。
エドワードは伯爵令嬢たちが何も話してなかったのを、両親の話で驚き知ったのである。
『本当にー、私は愚か者だ!』
黙っていればよかったのだ。
自爆した自分に語りかけ、両膝と両手を突き絨毯の模様を唖然とし眺める。
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