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第4章

9  2人の密談

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 中庭で婚約者候補たちは、エドワード王子とお茶をしようとしていたはずだった。
その相手の伯爵令嬢たちは、プンプン怒り庭から城の中へ入って行く。

怪訝けげんそうに顔で女官たちは下に向けて、不穏ふおんな怒りと言う原因の嵐が通りすぎていくのを待っていた。

「どうなさったのかしら?
知らないメイドたちは、お菓子やお茶を準備しているんではない」

「私、お茶席の様子を見てくるわ」

「悪いけどお願いね。
じゃあ、私は女官に知らせに行くわ」

従事する者は仕える方々の気まぐれに、毎度まいどつき合わされて大変だった。

「すまぬ、そこの者たち!
令嬢たちが通らなかったか?」

今度はエドワード王子殿下にお声をかけられて、また2人は壁際かべぎわりついて顔を下にしてお答えする。

「はい、ご令嬢二人がお通りになりました。
エドワード殿下」

短く返事すると、有り難うと礼を言うと慌ただしく横を通り過ぎる。

「大事になりそうだわ」

「急ぎましょう!」

メイドたちは空気を読み、自分たちが出来ることを率先そっせんした。

    伯爵令嬢たちはプライドがズタズタにされ、頭に血が上っている。

「私たちは、王家にだまされたのよ!
何がー、未来の王太子妃候補よ!
ただの間抜まぬけじゃない」

「お声が大きくてよ、ベンガー伯爵令嬢。
お気持ちは分かるわ。
こんなになるなら、もっと早く言って欲しかった。
これから、私たちどうします?」

興奮して前を歩いていたベンガー伯爵令嬢は、急に立ち止まって後ろに付いてきていた彼女に振り返る。

「貴女は今でも、あんなエドワード王子と婚姻したい?
私は、あの話を聞き御免ごめんだわ」

「我が父は、王太子妃にー。
未来の王妃になれる可能性があるから、私を寄越よこしたのよ。
本音を言えば、振り回されるのはもう懲り懲りよ」

ゴーダン辺境伯爵令嬢に近づき、耳元に言葉をささやく。

「…………に、…………言いに行きましょう」

「で、でも!不敬ふけいにあたらないかしら?」

「不敬と嘘つきでは、どちらが悪いのかしらね。
とにかく、私たちが有利にしなくてはならないわ」

「……、先に訴えた者が勝ちよね。
私たちは同じ立場ですもの」

彼女たちは、これから何をするのか。
不気味な笑みを互いに浮かべて、何処かへドレスをひるがえしてその場を去る。

彼女たちは、意外な人物と鉢合はちあわせしてしまう。

   
    アドニス王子は、兄のエドワードの勝手な言い分に納得できずにいた。

「アドお兄様…。
エドお兄様を怒ってますよね」

心配になり兄の後に付いてきた妹メアリーは、オドオドして声をかける。

「メアリー、心配かけた。
もう、怒ってないよ。
だから、そんな顔をしなくていいからね」

妹の暗い顔立ちにあの場所で、兄エドワードに怒鳴り散らしたのが恥ずかしくなってきた。

「ほん…、とう?アドお兄様。
でも、エドお兄様は国王にならないのかなぁ?」 

「どうするんだろうね。
私もどうなるんだろう。
兄上の希望は無理だと思う。
長男が代々、継承けいしょうされているからー」

王女は今にも泣きそうな隣にいるアドニスに、お母様に会いに行こうと腕をチョイチョイと引っ張る。
不安がる可愛い妹に、イヤな思いをさせた。
彼は罪滅ぼしで、一緒に母の部屋を訪れることにした。

最悪なゴタゴタが発生してるとは知らず。
二人は仲良く手を繋ぎ、母のいる部屋へ向かって歩いていた。


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