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第4章

6 国王を望む者

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    背を向けていて笑っていた私たちに、アドニス王子は悩める顔で尋ねてきた。

「兄上のお茶会は、もう終わったんだろうか。
あの令嬢お騒がせ、伯爵令嬢たちは何か問題を起こしてないないだろうか?」

「まだ終わるのは、早くないかしら?
令嬢たちは、どちらに居ますの?アドお兄様!」

私たちがその辺りの方角に視線を向けると、ドレスのすそを持ち上げて急ぎ足で城の中へ駆け込む姿。

「あはは、やっちゃったね。
エドお兄様は婚約する気があるの。
全員とお別れするつもりかしら?」

「お笑いになっては、王女様いけません。
私たちは平気ですが、他の人の前ではしてはなりませんよ!」

「しませんわよ。
そんな顔をして、マティルダだって思っているクセに」

アドニスは、令嬢たちの来た方向をじっと見ている。

「兄上とアンゲロス公爵令息だ。
此方に、エドお兄様と公爵令息が歩いてくるぞ!」

「あららら、どうしてコチラに来てしまうの。
面倒な事がなければ良いけど」

「…………、ウザイ!」

「マティルダの方が、人前に気を付けてね」

メアリーがお茶らけで言って、またいつもの高笑いをしている。

 2人並んで近づき、案の定現れ声をかけられてしまった。

「思ったより早く終わってね。
エドワードがやらかしてしまったんだよ。
アレじゃあ。
もう婚約者は、誰一人いないだろう」

「私が、いきなり話したのが悪かった。
夏の暑さで気が変になったと、ロバートも思ったか?」

「違うのかい?!
彼女らが言っていた通りに、今さら国王になりたくないなんて誰が思う?」

「「「えッ、えーえー!!!」」」

大きい声で叫ぶと、3人はどうしたらいいか話せずにいた。

「アドニス、お前は国王になりたいのか?
私に代わり、王になりたいと思ったことはないか?」

「兄上は何を言ってんだよ!
長男が継ぐって、決まってるんでしょう?
僕はスペアなんだ」

第2王子マドニス、生まれてから予備と言われたかはマティルダは知らない。
初めての友人にスペア予備と陰口言われて、ショックで部屋に引きこもった彼。

『それが原因で、熱中症で死にかけ一歩手前になってたのだ。それ知って言ったのか?
本人にしたら、これ鬼畜行為きちくこういだよ!』

マティルダの心からの声を聞き、エドワードは気付かされてしまう。

「私は弟に、なんてことを言ってしまったんだ!
鬼畜なんだ!私はー!
アドニスー~!
お願いだ!待ってくれー」

「お兄様たち!お待ちになってー!!マティルダ、ゴメン!」

弟を追いかける兄、兄たちを追う妹。

「あーあ~、行っちゃった!
騒動ばかりで、お茶をろくに飲めなくてね…。
マティルダ、話あるし座っていい?」

「とっくに座って入るじゃないですか。
アンゲロス公爵令息は、私が断っても座って話すんでしょう」

「冷たいな、でもいいや。
それよりも君は、エドワードが、国王になりなくないと言っても驚かなかったね」

ロバートにお茶を注ぐと、ちょっと渋くなったかなって思う。
冷めた白湯を、ちょっとだけれてみた。

「まだ渋いかもしれないけど、我慢して飲んで下さいね。
水分はとった方がいいです」

「有り難う。そうだ。
君が話してくれた夢ね。
気になったから、マイヤー伯爵令息に頼んだよ」

私の夢を信じてくれたの。
それもマイヤー伯爵令息を向かわせたなんて、彼も話を聞き信じてくれた?

「夢を、私を信じてアリエールたちを探しに行ってくれたのですね。
マイヤー伯爵令息、いい方だわ」

調子いい女好きと思って、悪いことをと心でひそかに謝罪していた。

「すまないが、夢の話はしていない。
ただ、君の妹に君の手紙を渡して欲しいと頼んだんだ」

「そんなー、無茶苦茶むちゃくちゃな。
嘘をついて、あんな道へ行かせたわけ。
お気の毒だわ」

エドワード殿下とこの人、どちらが私の変な夢を信じたのか。
眉間に皺寄せた表情を見て、彼は笑って話し出した。

どうして信じてくれたのかをー。

    
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