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第4章
2 会いたくない人たち
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アドニス殿下から貰った赤い大輪の薔薇を両手に大事に持つ彼女は、本当に嬉しげに歩き自分の部屋に戻る。
昨日の暗い気持ちが、中庭の散歩で明るく軽くなっていた。
コップに水に挿しての水を入れて、赤い薔薇を差して眺める。
「綺麗で良い匂いだわ。
花って眺めているだけで、何故かに癒されるわ」
コンコン、コンコン。
扉を叩く音でマティルダは、薔薇の花から目を離す。
開けるとメアリー王女とブルネール侯爵令嬢が、心配げに私の顔を見つめている。
「おはようございます。
メアリー王女様、ブルネール侯爵令嬢。
昨夜はご心配をおかけしました」
「マティルダ、具合どう?
朝は食べられそう?」
「サンダース伯爵令嬢…。
あの夢が原因ですの?」
二人は彼女に会うなり、気になる事を質問してきた。
「はい、メアリー王女。
昨夜は食事を抜いたので、朝食は美味しく頂けそうです。
ブルネール侯爵令嬢、無いとは言えません。
所詮は夢ですから、私が大袈裟に気にしすぎたんですよ」
「うん、いっぱい食べて!」
「はい!食後にちょっと休んだら、お庭でも歩きましょう」
「では、私もお二人と御一緒に散歩したいですわ。
宜しいでしょうか?」
「ええ、いいわよ。
ねえ~、マティルダ!」
ブルネール侯爵令嬢サラの願いをアッサリ聞き入れた王女は、マティルダのお誘いに上機嫌になっていた。
「もちろんでございます。
ここのお庭は涼しく気候のせいか、お花が生き生きして綺麗でございますよ」
「もう散策を致しましたの。
サンダース伯爵令嬢は」
「早く寝てしまったので、陽が昇る前に目が覚めました。
それで中庭を散策しましたわ」
「ええ~、私をお誘いしてくれれば宜しかったのに~。
マティルダたら、私につれないですわ」
「御一人ですか?
まぁ、この城の中では危険はありませんけど」
「クスクス、一人ではございませんでした。
偶然に、中庭でアドニス王子とお会いしましたわ」
思い出し笑いをして彼女は、アドニスとのやり取りに再びトキメキを感じていた。
「「アドお兄様 (アドニス殿下) と!」」
同時に驚く二人に、またクスクスと笑ってばかりいるマティルダであった。
『赤い薔薇を、アドニス王子から貰ったのは内緒にしよう。
うっかり口にしたら煩そうですもの』
ニコニコしてる彼女をメアリーは、どうしてこんなにご機嫌なのか気になるのだ。
『アドお兄様と散歩しただけで、マティルダがこんなに笑っているなんて。
おかしい、何かあったんだわ』
3人はお喋りしながら、朝食を食べに食堂に向かう。
その途中で、2人の若い令嬢の笑い声が聞こえてくる。
「あれはゴーダン伯爵令嬢とベンガー伯爵令嬢だわ」
苦々しい声色をして侯爵令嬢は、彼女らにされた事を許していないように感じられた。
「私が側におりますから、ブルネール侯爵令嬢」
「王女の私もおります!
何かあの者たちが無礼な態度をしたら、私が注意し助けてあげるわ」
「お二人の言葉は心強いです。感謝を申し上げますわ」
立ち止まって話したりして、伯爵令嬢たちとマティルダたちがかち合ってしまった。
「皆様、おはようございます。
あらっ、サンダース伯爵令嬢!お身体は、もう平気ですの?」
「お食事出来ないくらい、具合がお悪いって伺い心配しておりましたのよ」
『嘘つき!全然心配している顔つきではないじゃない。
この手の類いは当たり障りなく接しよう』
演技でもしているように、感情を込めて令嬢たちに話しかける。
「私をそんなに思っていたとは、なんて優しいのでしょう。
ゴーダン辺境伯爵令嬢にベンガー伯爵令嬢、お心遣いに感謝しますわ」
「ご丁寧に有り難う。
そんなに感謝されたら、かえって恐縮しますわ。
そうでございましょう、ベンガー伯爵令嬢」
「そ、そうでございますね。
ゴーダン伯爵令嬢!
サンダース伯爵令嬢、お元気そうでなりよりでしたわ。
では、私たちはお先に失礼します」
そそくさと退散する後ろ姿に、笑いを堪えた三人。
「ふふん、逃げ足が早いこと。
あんな方々が、お兄様の婚約者候補に選ばれたのは納得しませんわ。
お父様もお母様も、どこを見て選んでいたのか」
「メアリー王女、お声が少し大きいですよ。
あの方々に聞こえでもしたら、また厄介になります」
幼い彼女は声が甲高い、実によく通る声をしていた。
小さな声で屈んで彼女に注意すると、ワザとよって平然と仰ってきた。
「三人の中では、ブルネール侯爵令嬢。
貴女様が1番良い方です。
エドワードお兄様を、末永くお願いしたいですわ」
「申し訳ございません。
メアリー王女、私は…」
彼女は、エドワード王子との関係を精算する。
私に話した、彼女の意志は固そうだった。
あの伯爵令嬢のどちらが婚約者になるのか。
もう考えなくもないわ。
謝る侯爵令嬢をメアリー王女は、変な顔で見て私に聞きたそうに見てくる。
苦笑いするしかない、私は侯爵令嬢の気持ちが痛いぐらい理解できる。
婚約者ハロルドの顔が頭に浮かび、あの不吉な夢を思い出しそうになった。
いま彼らは、どうなっているのか…。
昨日の暗い気持ちが、中庭の散歩で明るく軽くなっていた。
コップに水に挿しての水を入れて、赤い薔薇を差して眺める。
「綺麗で良い匂いだわ。
花って眺めているだけで、何故かに癒されるわ」
コンコン、コンコン。
扉を叩く音でマティルダは、薔薇の花から目を離す。
開けるとメアリー王女とブルネール侯爵令嬢が、心配げに私の顔を見つめている。
「おはようございます。
メアリー王女様、ブルネール侯爵令嬢。
昨夜はご心配をおかけしました」
「マティルダ、具合どう?
朝は食べられそう?」
「サンダース伯爵令嬢…。
あの夢が原因ですの?」
二人は彼女に会うなり、気になる事を質問してきた。
「はい、メアリー王女。
昨夜は食事を抜いたので、朝食は美味しく頂けそうです。
ブルネール侯爵令嬢、無いとは言えません。
所詮は夢ですから、私が大袈裟に気にしすぎたんですよ」
「うん、いっぱい食べて!」
「はい!食後にちょっと休んだら、お庭でも歩きましょう」
「では、私もお二人と御一緒に散歩したいですわ。
宜しいでしょうか?」
「ええ、いいわよ。
ねえ~、マティルダ!」
ブルネール侯爵令嬢サラの願いをアッサリ聞き入れた王女は、マティルダのお誘いに上機嫌になっていた。
「もちろんでございます。
ここのお庭は涼しく気候のせいか、お花が生き生きして綺麗でございますよ」
「もう散策を致しましたの。
サンダース伯爵令嬢は」
「早く寝てしまったので、陽が昇る前に目が覚めました。
それで中庭を散策しましたわ」
「ええ~、私をお誘いしてくれれば宜しかったのに~。
マティルダたら、私につれないですわ」
「御一人ですか?
まぁ、この城の中では危険はありませんけど」
「クスクス、一人ではございませんでした。
偶然に、中庭でアドニス王子とお会いしましたわ」
思い出し笑いをして彼女は、アドニスとのやり取りに再びトキメキを感じていた。
「「アドお兄様 (アドニス殿下) と!」」
同時に驚く二人に、またクスクスと笑ってばかりいるマティルダであった。
『赤い薔薇を、アドニス王子から貰ったのは内緒にしよう。
うっかり口にしたら煩そうですもの』
ニコニコしてる彼女をメアリーは、どうしてこんなにご機嫌なのか気になるのだ。
『アドお兄様と散歩しただけで、マティルダがこんなに笑っているなんて。
おかしい、何かあったんだわ』
3人はお喋りしながら、朝食を食べに食堂に向かう。
その途中で、2人の若い令嬢の笑い声が聞こえてくる。
「あれはゴーダン伯爵令嬢とベンガー伯爵令嬢だわ」
苦々しい声色をして侯爵令嬢は、彼女らにされた事を許していないように感じられた。
「私が側におりますから、ブルネール侯爵令嬢」
「王女の私もおります!
何かあの者たちが無礼な態度をしたら、私が注意し助けてあげるわ」
「お二人の言葉は心強いです。感謝を申し上げますわ」
立ち止まって話したりして、伯爵令嬢たちとマティルダたちがかち合ってしまった。
「皆様、おはようございます。
あらっ、サンダース伯爵令嬢!お身体は、もう平気ですの?」
「お食事出来ないくらい、具合がお悪いって伺い心配しておりましたのよ」
『嘘つき!全然心配している顔つきではないじゃない。
この手の類いは当たり障りなく接しよう』
演技でもしているように、感情を込めて令嬢たちに話しかける。
「私をそんなに思っていたとは、なんて優しいのでしょう。
ゴーダン辺境伯爵令嬢にベンガー伯爵令嬢、お心遣いに感謝しますわ」
「ご丁寧に有り難う。
そんなに感謝されたら、かえって恐縮しますわ。
そうでございましょう、ベンガー伯爵令嬢」
「そ、そうでございますね。
ゴーダン伯爵令嬢!
サンダース伯爵令嬢、お元気そうでなりよりでしたわ。
では、私たちはお先に失礼します」
そそくさと退散する後ろ姿に、笑いを堪えた三人。
「ふふん、逃げ足が早いこと。
あんな方々が、お兄様の婚約者候補に選ばれたのは納得しませんわ。
お父様もお母様も、どこを見て選んでいたのか」
「メアリー王女、お声が少し大きいですよ。
あの方々に聞こえでもしたら、また厄介になります」
幼い彼女は声が甲高い、実によく通る声をしていた。
小さな声で屈んで彼女に注意すると、ワザとよって平然と仰ってきた。
「三人の中では、ブルネール侯爵令嬢。
貴女様が1番良い方です。
エドワードお兄様を、末永くお願いしたいですわ」
「申し訳ございません。
メアリー王女、私は…」
彼女は、エドワード王子との関係を精算する。
私に話した、彼女の意志は固そうだった。
あの伯爵令嬢のどちらが婚約者になるのか。
もう考えなくもないわ。
謝る侯爵令嬢をメアリー王女は、変な顔で見て私に聞きたそうに見てくる。
苦笑いするしかない、私は侯爵令嬢の気持ちが痛いぐらい理解できる。
婚約者ハロルドの顔が頭に浮かび、あの不吉な夢を思い出しそうになった。
いま彼らは、どうなっているのか…。
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