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第3章

14 予想外の騒ぎ

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 片割れの一人の彼女が、自身を肯定するように話し出す。 
調子よく自分の幼なじみに、目の前に言い寄っているのが腹立たしい。

「私たちは悪くない!
悪いのは、エドワード王子を裏切るあの者たちよ」

侯爵令嬢をデレデレして見ている幼なじみを、憎らしい気持ちが表れてきた。

「そうよ、ゴーダン伯爵令嬢。
そう思うでしょう?
ケイシー、私たちは裏切り者を正してあげるのよ。
ただ、それだけなの……」

「あっ、あのでも……。
それを…、したら。
2人はー、どうなってしまうの?!
処罰をされてしまうの…」

「処罰って…、あはは…。
ここだけの話になるから、口止めされて終わりよ。
そんな、心配ないわ」

何もない、なら平気よね。
ジョーが悪いのよ。
思わせ振りしては、私に調子よくエドワード殿下に口利きを頼んだりするからよ。
自分で頑張って、出世をしてみなさいよぉー!

「いいわ、やるわ!
婚約者になったら、力を貸すわ。なれたら…ね」

こそこそと暑いのに側に近づき話す伯爵令嬢たちを、独りで上から気になり見てるとー。
今度は違う方向では、男女の意見が食い違うのか話し声がケンカ腰になっている。

『どちらもキナ臭くなってきて、スゴく嫌な予感がするわ。
木の下から降りて、ブルネール侯爵令嬢たちのところへ行こう!』
  
スイスイと猿並みに下に下りると、マティルダはブルネール侯爵令嬢がいる場所へ向かうがー。

「「ぎゃあー、きゃあー~!
ブルネール侯爵令嬢、マイヤー伯爵令息!!
何をしているのーー!!
誰かー、大変よお~!!!」」

令嬢たちのそろったうるわしの美声。

「あの二人、何してんのよ!
声がデカすぎで、響き渡っているじゃない!」

ドレスのすそを膝下まで上に持ちげると、急ぐためにけ出していた。

「ゴーダン伯爵令嬢、ベンガー伯爵令嬢!
どうして?ココに!?」

「ケイシー、お前は!
何を言っているんだ!?」

二人は突如現れた伯爵令嬢たちに、びっくりしてほぼ同時に声かけする。

「マイヤー伯爵令息、貴方!
ブルネール侯爵令嬢と抱き合っていましたでしょう!?」

いつもはジョーと気さくに呼ぶケイシーだが、幼なじみの彼女が遠い人に思えた。

「なにー!バカな事を言うんだ!」

「私も確かに見ましたわ!
抱き合ってましたわよね。
それ以上の事をしていたように、私には見えましたけど…」

ベルガー伯爵令嬢グレンダは、イヤらしい目つきで2人を見つめてはあやしげな発言をする。

「そんな事してない!
ただ、マイヤー伯爵令息とは食事して話をしてただけよ!」

立ち上がって拳を握ると、懸命に言い訳をして叫ぶ。

何人もの護衛騎士や女官たちが、いっせいにどこから集まって来てしまう。

「複数の女性の叫び声が聞こえました。
何が起こりましたか?!」

「どうなさりましたか?
どうして、ブルネール侯爵令嬢が泣いておりますの?」

騎士や女官が次々に尋問じんもんすると、伯爵令嬢たちが代わって答える。

「マイヤー伯爵令息とブルネール侯爵令息が抱き合ってましたわ!」

「驚いて、つい声を出してしまいました。
エドワード殿下の婚約者候補が、私たちの目の前で不貞ふてい行為こういをしていたんですもの!」

ゴーダン、ベンガー伯爵令嬢たちは嘘を本当にさせるように堂々と語りかける。

「なんと!本当の話ですか?
ブルネール侯爵令嬢!
マイヤー伯爵令息!」

「違う!違うぞ!
サンダース伯爵令嬢に頼まれて、具合い悪くなったブルネール侯爵令嬢を介抱しただけだ!」

「そうですわ!
マイヤー伯爵令息は昼食を持ってきてくれて、一緒に食事していただけです!
ただ、それだけです!」

嘘をついて倒れた時よりも、侯爵令嬢は顔色を悪くする。
オレンジの茶色の瞳からは涙を溢して、美しい栗毛の巻き髪が乱れていた。

「お二人共、勘違いしないで下さいませ!」

途中から歩いて後方から出現したマティルダが、伯爵令嬢たちに怒りの怒声をあげていた。
彼女の後ろからは、まだ人しか判明出来ない方々が歩いてくるのが見えていたのである。
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