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第3章
11 思い込みと逆怨み
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バスケットの中に、一口サイズの料理や甘いモノまで入れられる。
飲み物を水筒に注ぎ、準備を待つマイヤー伯爵令息は幼なじみ令嬢に声をかけられた。
「ジョー…、失礼しました。
マイヤー伯爵令息、ブルネール侯爵令嬢の体調はどうですか?
彼女の所へ、貴方が行きますの!?
何で、どうしてよ…」
ゴーダン伯爵令嬢は、いまココに居ないブルネール侯爵令嬢。
彼に守られ、介護されている彼女に嫉妬していた。
具合悪い方に対して、彼女は気分が悪くなりそうになる。
「おや、ゴーダン伯爵令嬢!
侯爵令嬢は意識が戻り、いまは会話も成り立ってる。
彼女と約束したので、食事を持って行き一緒に食べるんだ。
まだ、ちょっと不安定みたいでね」
『ケイシーって、いつもみたいに気さくに呼んでくれないの。
周りには誰も居ないのに、家名で呼ぶのね…』
幼なじみの私は、誰よりも彼の中では1番親しい女性だと思っていた。
ジョーとブルネール侯爵令嬢は2人きりなの?
そんなのー、イヤよ!
「わ、私もー」
言いかけて直後に、彼が行くからと片手を挙げて歩いて行ってしまう。
「……。エドワード殿下だけでは物足りなくて、まさかジョージに…?
侯爵令嬢で身分が私より上だから、伯爵の私を下に思って侮っているの。
ブルネール侯爵令嬢、貴女の思い通りにさせないわ!」
ケイシーは、前に彼が話していたのを思い出していた。
彼はサラと親しくなって、未来の王太子妃に近い彼女に媚を売るつもりでいるつもりだ。
『私にあんなに婚約者に選ばれたら、エドワード殿下との紹介を頼んできてクセに!
あっさりと、彼女に乗り換えるなんて…。
もし、あの2人が結ばれたら、許さないし許せない!』
ブルネール侯爵令嬢からエドワード殿下に、貴方を頼んであげようとしていたのに。
歯を食い縛ると誰も居ないのをいいことに、この場で本音を吐き出した。
「馬鹿にするんじゃないわよ!
エドワード殿下は、私が手に入れてやる!
そうすれば、二人に一泡食わせられるわ」
辺境伯爵家は隣国に近く攻められたら1番先に被害を被る。
それなのに、余りにも蔑ろにされていた。
「お父様のお気持ちが、分かってきたわ。
でも、私の好きな人はー」
自分等の知らないところで、一人の令嬢に本気に恨まれるブルネール侯爵令嬢。
この二人は、木の下で昼食を口にしていた。
「どれも持って来た物は、とても美味しいです。
わざわざ私の為に、本当にお気持ちが嬉しいですわ」
「ブルネール侯爵令嬢が、そんなにお喜びになるとは俺も嬉しいですよ」
最初は互いに遠慮がちにしてい
たが、だんだんとほのぼのランチになっていった。
サラはエドワード殿下の婚約者候補だったので、彼とは距離をおいていた。
「マイヤー伯爵令息は覚えてないと思いますが、入学したてで迷子になって焦っていました。
そんな時に、転びそうになった私を貴方が助けて下さいましたの」
「すまないが、俺は覚えてないな。
そんな昔の出来事を、覚えているとは記憶力がいいな。ハハハ」
出会いを覚えていないのはガッカリしたが、彼が率直で笑顔で話すのにときめく。
『まーぁ、素敵な笑顔!
色白のひ弱な人より、日に焼けた健康そうで逞しい。
真っ白な歯がキラッと光り、見ているだけでー。
もうー、また倒れそう~!』
「印象的でした。
独りで大丈夫って思っても、不安で歩いていたので…。
そんな時に、助けられたから余計ですわ」
「こうして感謝されるとは、昔の俺に感謝しないとな。
美しい令嬢と、親しく話せるんだからー」
この男は本当に騎士を目指したいのか、女性を騙す悪い男になりたいのか。
無意識なのか、考え抜いての言葉なのか?
おのおの、男女の感情が入り交じっている。
2人のご令嬢に、同時に好かれた男の本音は如何に?
想いが交差する中、男女の間に新たな小さな火種がだんだんと燃えようとしていた。
飲み物を水筒に注ぎ、準備を待つマイヤー伯爵令息は幼なじみ令嬢に声をかけられた。
「ジョー…、失礼しました。
マイヤー伯爵令息、ブルネール侯爵令嬢の体調はどうですか?
彼女の所へ、貴方が行きますの!?
何で、どうしてよ…」
ゴーダン伯爵令嬢は、いまココに居ないブルネール侯爵令嬢。
彼に守られ、介護されている彼女に嫉妬していた。
具合悪い方に対して、彼女は気分が悪くなりそうになる。
「おや、ゴーダン伯爵令嬢!
侯爵令嬢は意識が戻り、いまは会話も成り立ってる。
彼女と約束したので、食事を持って行き一緒に食べるんだ。
まだ、ちょっと不安定みたいでね」
『ケイシーって、いつもみたいに気さくに呼んでくれないの。
周りには誰も居ないのに、家名で呼ぶのね…』
幼なじみの私は、誰よりも彼の中では1番親しい女性だと思っていた。
ジョーとブルネール侯爵令嬢は2人きりなの?
そんなのー、イヤよ!
「わ、私もー」
言いかけて直後に、彼が行くからと片手を挙げて歩いて行ってしまう。
「……。エドワード殿下だけでは物足りなくて、まさかジョージに…?
侯爵令嬢で身分が私より上だから、伯爵の私を下に思って侮っているの。
ブルネール侯爵令嬢、貴女の思い通りにさせないわ!」
ケイシーは、前に彼が話していたのを思い出していた。
彼はサラと親しくなって、未来の王太子妃に近い彼女に媚を売るつもりでいるつもりだ。
『私にあんなに婚約者に選ばれたら、エドワード殿下との紹介を頼んできてクセに!
あっさりと、彼女に乗り換えるなんて…。
もし、あの2人が結ばれたら、許さないし許せない!』
ブルネール侯爵令嬢からエドワード殿下に、貴方を頼んであげようとしていたのに。
歯を食い縛ると誰も居ないのをいいことに、この場で本音を吐き出した。
「馬鹿にするんじゃないわよ!
エドワード殿下は、私が手に入れてやる!
そうすれば、二人に一泡食わせられるわ」
辺境伯爵家は隣国に近く攻められたら1番先に被害を被る。
それなのに、余りにも蔑ろにされていた。
「お父様のお気持ちが、分かってきたわ。
でも、私の好きな人はー」
自分等の知らないところで、一人の令嬢に本気に恨まれるブルネール侯爵令嬢。
この二人は、木の下で昼食を口にしていた。
「どれも持って来た物は、とても美味しいです。
わざわざ私の為に、本当にお気持ちが嬉しいですわ」
「ブルネール侯爵令嬢が、そんなにお喜びになるとは俺も嬉しいですよ」
最初は互いに遠慮がちにしてい
たが、だんだんとほのぼのランチになっていった。
サラはエドワード殿下の婚約者候補だったので、彼とは距離をおいていた。
「マイヤー伯爵令息は覚えてないと思いますが、入学したてで迷子になって焦っていました。
そんな時に、転びそうになった私を貴方が助けて下さいましたの」
「すまないが、俺は覚えてないな。
そんな昔の出来事を、覚えているとは記憶力がいいな。ハハハ」
出会いを覚えていないのはガッカリしたが、彼が率直で笑顔で話すのにときめく。
『まーぁ、素敵な笑顔!
色白のひ弱な人より、日に焼けた健康そうで逞しい。
真っ白な歯がキラッと光り、見ているだけでー。
もうー、また倒れそう~!』
「印象的でした。
独りで大丈夫って思っても、不安で歩いていたので…。
そんな時に、助けられたから余計ですわ」
「こうして感謝されるとは、昔の俺に感謝しないとな。
美しい令嬢と、親しく話せるんだからー」
この男は本当に騎士を目指したいのか、女性を騙す悪い男になりたいのか。
無意識なのか、考え抜いての言葉なのか?
おのおの、男女の感情が入り交じっている。
2人のご令嬢に、同時に好かれた男の本音は如何に?
想いが交差する中、男女の間に新たな小さな火種がだんだんと燃えようとしていた。
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