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第3章

10 チャンスを逃さない

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 腕の中で彼女は目を閉じて、胸のドキドキが自分にも高鳴りとなって聞こえそう。

『ダメ、緊張してしまって!
頭がどうにかなりそうだわ。
マティルダ様ったら、他人事だと思って大胆過ぎるわよ』

こんな考えてをして好きな男性の腕が私の背中に、膝裏膝ひざうらに彼の手の感触を感じちゃう。
私はいつ目覚めたようにしたら、自然な流れになるのかしら?

「ブルネール侯爵令嬢?」

 彼が私の名を、優しく呼び掛けてくれる。
マティルダ様の仰っていたように鼻血が出そうだわ。

「あっ、ココは何処ですか?
たしか…、エドワード王子殿下とお話をしていたのですが…」

下手な演技だが、相手は武術と体格維持しか興味ない脳筋な男だ。
全然、疑う余地がない。

「気づかれたのですね。
殿下と話している時に、暑さで倒れてしまったのです。
今年は、特に暑い夏ですから…」

話すマイヤー伯爵令息の顔が、ああっ私に近い!
目と目がバチッと合うと、高鳴りドキドキする。
本気で倒れそう、今度は彼のせいで~!

「ジョージ様が私を…、運んで下さいましたの?
ごめんなさい、お名前で呼んでしまって…」

敷物の上に寝かされて、彼は騎士のように片ひざをつく。

『こんな私を、物語の中のお姫様の様な扱いをして下さる。嬉しい~』

「ブルネール侯爵令嬢、構いませんよ。
ジュージと呼んでくれ!」

『きゃっ~、幸せ!
これが本物の恋?愛ですのね!』

殿下の婚約者候補は辞退したし、私は今日からやっと自由。
手紙は2~3日後に実家に届く、そうなったら大騒ぎになってたりして。
それでも構わないと、サラは思っていた。

「はい、これは果物水ですよ。
ゆっくりとお飲み下さい。
皆さまは、別の場所で昼食をしております」

「有り難うございます。
マイヤー伯爵令息も、皆さまと御一緒して下さい。
私は…。一人でも、平気ですので行って下さいませ」

「貴女お一人をここへ置いていくのは、騎士を目指す者としてできません!
それから、ジョージとお呼び下さい」

首を振り自分は頼まれたので、少しでも食べるなら何が見繕みつくろって来ましょう。
ここで、2人で食べましょうとサラに誘ってきたのだった。

「まぁ、お優しいお方!
なんて、お礼を申したから…。
もし皆様の元へ戻り、また具合が悪くなったりと気をんでいましたの」

具合が悪いのはウソだが、これぐらいは神も許されるだろう。

『ジョージ様が私と二人きりで、お食事が出来るなんてー』

「ブルネール侯爵令嬢。
しばし、ここでお待ち下さい」

キビキビした所作しょさで、サラから離れて行く彼の後ろ姿を見つめていた。

「サンダース伯爵令嬢のお陰で、彼とこんなに話せる。
食事もこれから…。ふふふ」

 他人が冷静に見ていたら、彼女は恋にくるっていたのだろうと思う。
侯爵家に生まれて、暮らしはいたれりくせり。
苦労知らずで、思い通りに生きてきた。
全てを持っている人は、恋と愛も手に入るのだろうか…。

  マティルダたちが、ピクニック様式で昼食をしていた。
マイヤー伯爵令息のジョージは、両陛下とエドワード王子に倒れた侯爵令嬢の容態を報告する。

「意識が戻ったか!
倒れたと聞き驚いたが、話を聞き安心したぞ!」

「食欲はあるのですね。手をかけますが、ブルネール侯爵令嬢に食事を持って行っておくれ」

両陛下が伯爵令息に侯爵令嬢の世話をお願いをしている最中さいちゅうに、婚約者になるかもしれない男が黙って聞いていた。

「ねぇ、エドワード。
貴方も、ブルネール侯爵令嬢が心配でしょう?
出発前に、令嬢の様子を見に行きなさい」
  
「……、はい。母上……」

 王妃は、息子と侯爵令嬢の別れ話を知らないと仰っていた。
別に、2人は付き合ってはないが……。
王妃も流れから、ブルネール侯爵令嬢を婚約者に決定するとひいき目をしている。
エドワードの他に、そのことを知っているマティルダたちは知らんふりして食事を味わっていた。
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