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第3章

7 電光石火

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    小鳥のさえずりなら心地よいが、ご令嬢たちのおしゃべりなら五月蝿うるさく感じてしまう。

「エドワード殿下、かなり涼しくなってきましたわね」

「エドワード殿下、お昼はピクニックなんですってね。
お外で食べるなんて、私はいまから楽しみですわ」

名前を連呼れんこされて苦笑いをする。
自分に対してのアピール合戦がスゴすぎて、鈍感どんかんな人でなければ普通は気付くだろう。
男としてはモテて嬉しいが、彼の考えは違っていた。

「ああ、風が心地が良いな。
私も外で食事をするのは、いつ振りだろう。
楽しみだな。ハハハ」

エドワードは令嬢たち笑って、のらりくらりわす。
二人と話しをしていて、内心はブルネール侯爵令嬢に頼っていた現状を知る。

「ブルネール侯爵令嬢は、サンダース伯爵令嬢の馬車に乗り移った。
君たちと何かあったのか?」

「「えっ、え~!さぁ?私たち、関係ないですワ!」」

ゴーダン辺境伯爵令嬢、ケイシーとベルガー伯爵令嬢グレンダは、あんなに口喧嘩くちげんかや殴り合いをしていた2人は同じ返事をする。

「サンダース伯爵令嬢とお喋りをしたかったのでは?」

「ゴーダン伯爵令嬢の仰る通りですわ。ほほほ……」

「ウムッ、そうだな。ハハハ…」

エドワードは休暇に避暑へ向かっていたが、これが休みになるのだろうかと考える。

『早く到着してほしいよ。
帰りは独りで帰りたいな。
まぁ、無理だろうがー』

願いが本当に叶うとは、この時信じられなかったのであった。

    大きな木の下で、お付きの者たちによって机と椅子が用意される。
マティルダも見ていて、つい準備の手伝いをしていた。
王子と王女、お二人をブルネール侯爵令嬢サラにお願いできたからだ。

「彼女、将来は女官になりたいみたいだね。
楽しそうにテキパキ働いているわ」

無言で見ていたアドニスは、兄エドワードが珍しく不満顔で急ぎ足で近づいてくる。

「……??メアリー、あれを見てみろよ!」

「なにをですの?アドお兄様?
あれはっ、エドお兄様?
なんだか、怒った顔をしてませんか?」

?しか頭に浮かばない、妹メアリー王女。
側にいる兄アドニスと二人で同じ表情へと変化した。

「ここに居たか、ブルネール侯爵令嬢!
君が居なくなって、私は疲労困憊ひろうこんぱいになった。
疲れ果ててしまったよ」

「婚約者候補たちと、たくさんお話をできて宜しかったでしょう?
私はブルネール侯爵令嬢と交流を持てて有意義ゆういぎでしたわ」

エドワードは妹の大人びた話し方に、母の口まねをしてるんだと笑いそうになる。

「伯爵令嬢たちは、殿下にどんな話をされたのでしょうか?
後で彼女たちに、角が立たないように注意いたしますわ」

「ブルネール侯爵令嬢、面倒をかけて済まないが頼んだよ。
やっぱり、君が1番気が合うようだ」

顔が強張るサラは、ここで婚約候補から辞退したいと考えていた。

「兄上、ご自分の婚約するかもしれない令嬢たちを邪魔みたいに言うのは良くない。
如何いかがなものですか?」

コチラも、部屋に引きこもっていたのにー。
サンダース伯爵令嬢が、アドニスをここまで変えたのか?
さすがは、学園で才女と評判の彼女だけある。

彼女は思った以上に有能で弟妹たちは、最近扱いにくくなってきた。

「殿下、ちょっと二人きりでお話しがございます。
とても大事な話です!」

アドニスとメアリーは、マティルダが慎重にするように言っていたのを思い出した。

「お兄様、ブルネール侯爵令嬢がー」

「うん、言いそうだね。
でも、私たちが止める権利はないよ」

冷静すぎるアドニスに、メアリーは上の兄よりこの点は怖いと感じた。
しかし、それより侯爵令嬢の電光石火でんこうせっかなみの行動に驚く。

「お二人は、マティルダ様の所へ行って下さいますか?!」

止められない自分たちは無言で頷いて、向かいながら時たま兄と侯爵令嬢を振り返る。

『エドワードお兄様、フラレてしまうのね。
お可哀想、でもまだ二人も候補いるし大丈夫よ!』

『兄上、ちょっと侯爵令嬢を気にしていた。
好意的であったがー。
義理の姉になって欲しくない方が生き残りそうだな』

「メアリー、マティルダに知らせ行くぞ!」

もう後を見ないで、食事をテーブルに並べている彼女へ向かって歩く。


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