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第2章
18 熟睡と寝たふり
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ガタンガタンとほどよい揺れで、馬車の中は静かに寝息を立てていた。
車輪が石っころを踏んだのか、ガタンと大揺れをする。
頭を上下にさせて、パチリと目が覚めた。
「うぅ~ん!あーっ、よく寝たわ」
前に目をやると、二人の天使がスヤスヤと眠りについている。
『うほっ、可愛いなぁ~!
王族って見目麗しい人たちが婚姻だから、顔立ちは整っている。
確かに、お人形さんか天使だ』
窓ガラスにうっすら映る自分の顔を触り、見つめていた時にアドニス殿下が目覚めたのにマティルダは気づかない。
『母にも父にもあまり似ていない、この顔。
私は見たこともない、実の母に似ていたのかしら!?』
「マティルダは、美しい髪と瞳をしているね。
青みかがった金髪で珍しい色で、氷のような瞳。
水の精霊のようだ」
気恥ずかしい言葉をかけられて、窓から前に座る彼に視線を動かす。
「アドニス殿下の髪はキラキラして、太陽のような眩しい金髪。
サファイヤの宝石みたいな青い瞳に、私は憧れますわ」
私は冷たそうな色合いだからだろうか。
あまり人から、声をかけられなかった。
妹アリエールは、金茶の髪にブラウンの瞳。
笑うとあれで愛嬌があり、男女とも話しかけられやすかった。
あの子性格悪いのに、得をしているようで腹立つ。
「アハハ、それはないものねだりだ。
涼しげな容姿で、夏にはちょうどいいじゃないか」
「私たちは、暑さで倒れたお仲間同士。
避暑地では、やっと楽に暮らせそうですね」
寝たふりしていた王子の隣に座っていた、メアリー王女。
『二人の為に寝たふりしていたけど、もうちょっと思っても限界で無理だわ。
私もお話の仲間に入りたい』
白々しく演技して、王女様は欠伸をして目覚めるのである。
「ふぁ~、気持ちよく寝られた」
「メアリー王女、起きられましたか」
マティルダが彼女に声をかけると、機嫌よく笑い返してくれた。
叔父って、陛下の弟だった方。
表情を見ていると、御二人は嬉しそう。
昼に休息した伯爵家より、身内だから気楽に過ごすみたい。
「王都はムシムシしていたけど、カラッとしてきたみたいに感じるな」
アドニス王子は目を細めて、窓の外の青い麦畑の景色に見入ってそう話す。
「叔父様のご領地は過ごしやすい場所だけど、でも今年の夏はどうだろう?
それに畑は大丈夫そうだけど、雨が降ってくれないと困ります」
メアリーも窓の外の作物を見てから、照りつける太陽と青空に目を向けてまた心配そうに話し出した。
「寝る前に神様にお祈りしてるのに、雨は全然降らない。
巫女様はー、何処においでなの?」
「メアリー様…、近いうちに見つかるといいですね。
寒暖差がありますから、風邪を引きやすくなります。お二人とも、夜はお気を付けて下さいませ」
暑いからってお腹出さないでねって、お腹に両手を当てて注意するマティルダ。
「私たちは、これでも寝相はいいのよ。
お昼寝の時に見ているでしょう。
エドお兄様の寝相は、どうか知らないけど」
「寝相よりも、兄上たちの馬車は雰囲気はどうなんだろう?
あのケンカしてた令嬢たちも、同じ馬車に乗っているのはヤバイと思うよ」
彼の言葉にう~んと唸るマティルダとメアリーは、想像すると渋めの顔をする。
「ブルネール侯爵令嬢で本決まりでしょう。
2人の伯爵令嬢たちは勝ち目なくって、イラついてケンカしたのよ。きっと…」
「メアリーの言ってることが正しいと僕も思う。
さっさと決めて、伯爵令嬢たちを自由にさせた方がいいよ」
子供らしくない物言いに、さすがに王族だと彼女は感心する。
馬車に揺られながら無邪気な笑顔で話す、お二人を見てはクスッと笑って見せていた。
車輪が石っころを踏んだのか、ガタンと大揺れをする。
頭を上下にさせて、パチリと目が覚めた。
「うぅ~ん!あーっ、よく寝たわ」
前に目をやると、二人の天使がスヤスヤと眠りについている。
『うほっ、可愛いなぁ~!
王族って見目麗しい人たちが婚姻だから、顔立ちは整っている。
確かに、お人形さんか天使だ』
窓ガラスにうっすら映る自分の顔を触り、見つめていた時にアドニス殿下が目覚めたのにマティルダは気づかない。
『母にも父にもあまり似ていない、この顔。
私は見たこともない、実の母に似ていたのかしら!?』
「マティルダは、美しい髪と瞳をしているね。
青みかがった金髪で珍しい色で、氷のような瞳。
水の精霊のようだ」
気恥ずかしい言葉をかけられて、窓から前に座る彼に視線を動かす。
「アドニス殿下の髪はキラキラして、太陽のような眩しい金髪。
サファイヤの宝石みたいな青い瞳に、私は憧れますわ」
私は冷たそうな色合いだからだろうか。
あまり人から、声をかけられなかった。
妹アリエールは、金茶の髪にブラウンの瞳。
笑うとあれで愛嬌があり、男女とも話しかけられやすかった。
あの子性格悪いのに、得をしているようで腹立つ。
「アハハ、それはないものねだりだ。
涼しげな容姿で、夏にはちょうどいいじゃないか」
「私たちは、暑さで倒れたお仲間同士。
避暑地では、やっと楽に暮らせそうですね」
寝たふりしていた王子の隣に座っていた、メアリー王女。
『二人の為に寝たふりしていたけど、もうちょっと思っても限界で無理だわ。
私もお話の仲間に入りたい』
白々しく演技して、王女様は欠伸をして目覚めるのである。
「ふぁ~、気持ちよく寝られた」
「メアリー王女、起きられましたか」
マティルダが彼女に声をかけると、機嫌よく笑い返してくれた。
叔父って、陛下の弟だった方。
表情を見ていると、御二人は嬉しそう。
昼に休息した伯爵家より、身内だから気楽に過ごすみたい。
「王都はムシムシしていたけど、カラッとしてきたみたいに感じるな」
アドニス王子は目を細めて、窓の外の青い麦畑の景色に見入ってそう話す。
「叔父様のご領地は過ごしやすい場所だけど、でも今年の夏はどうだろう?
それに畑は大丈夫そうだけど、雨が降ってくれないと困ります」
メアリーも窓の外の作物を見てから、照りつける太陽と青空に目を向けてまた心配そうに話し出した。
「寝る前に神様にお祈りしてるのに、雨は全然降らない。
巫女様はー、何処においでなの?」
「メアリー様…、近いうちに見つかるといいですね。
寒暖差がありますから、風邪を引きやすくなります。お二人とも、夜はお気を付けて下さいませ」
暑いからってお腹出さないでねって、お腹に両手を当てて注意するマティルダ。
「私たちは、これでも寝相はいいのよ。
お昼寝の時に見ているでしょう。
エドお兄様の寝相は、どうか知らないけど」
「寝相よりも、兄上たちの馬車は雰囲気はどうなんだろう?
あのケンカしてた令嬢たちも、同じ馬車に乗っているのはヤバイと思うよ」
彼の言葉にう~んと唸るマティルダとメアリーは、想像すると渋めの顔をする。
「ブルネール侯爵令嬢で本決まりでしょう。
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「メアリーの言ってることが正しいと僕も思う。
さっさと決めて、伯爵令嬢たちを自由にさせた方がいいよ」
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馬車に揺られながら無邪気な笑顔で話す、お二人を見てはクスッと笑って見せていた。
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