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第1章

2 開き直る愚妹

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 この人たちは周りが見えないようで、顔を近づけては仲むずましくってもんじゃない。
バカなカップルで丸出しで、顔を近づけクスクスと笑い合う。
妹アリエールを自分の婚約者が、なぜか優しく愛しげに見つめているのをながめ感じていた。

おのれ~!あり得ない…。

ますます、汗が滝のように吹き出し流れている。
あー、どうでもいい!
この茶番を、この場で終わらせてみせる!

マティルダは一歩前に進み出て、ふざけ合う者たちへ声をかけた。
  
「あなた達は、そこで!
なにをしているのよ!」

近寄る姉に、しらじらしい挨拶をわす。

「あーらっ、お姉様!
ご機嫌よう、お暑いですね。
ハロルド様と、こうしてお話をしていただけよ」

私たちが近づいても、平然と2人ベッタリしている。
いい根性してやがると、ついついめたくもなってしまう。

もう一人の自分。

「やぁ~、マティルダ! 
今日も、凄く暑いな。
君たちも、すずみに来たのかい?!」

コチラも罪悪感なしで、木陰の下でさわやかに声をかけてきた。

「やぁ~って…、ハロルド様…。
貴方は、私の婚約者ではなかったのかしら!?」

怒りで暑さを忘れてしまいそうだわ。
そう感ずるだけで、マティルダの体内では確実に変調をしていた。

「はぁ~、なにをいまさら…。
この暑さで、頭がおかしくなったのかい?」

「「「「………!」」」」

マティルダと後ろで会話を聞いていた友人たちも、ハロルドの言葉に絶句しているようだ。

「アリエール!
貴女も妹だからって、私の婚約者と逢引きしていいと思っているの!?
それも、学園内の中庭で破廉恥はれんちな」

彼女の指摘に友人たちは、美しい扇をちょうの羽ばたきの様に見せる。
それに合わせてかのように、ウンウンとうなづく。

「クスッ、お姉様~。
破廉恥、逢引きですってー!
アーハハㇵ、そんな今どき誰も使わない死語をお使いですの。
ハロルドが、そんなお姉様と一緒に居たくなるんです」

ハロルド…、私でも様づけなのに。
やはり、2人は…。

「クゥーっ!話すのはまぁいいとして、そうやってベッタリしなくても会話できるでしょう?
周りにいる方々だって、暑苦しくて目ざわだと思っていますよ」

賛同する学生たちが、首を縦に振ってくれる。
それを励みしマティルダは、二対一の不利な状況をまぎらわす。

「イヤだわ、実の姉なのに…。
妹に対して、なんでそんなに怒っているの?」

炎天下えんてんかの太陽の下で、前にいる非常識な婚約者と身内にイライラの最骨頂さいこっちょう
一緒に側で見聞きしている、友人たちも気持ちだろうか。
背後で様子を見られないが、そうであって欲しい。

校舎上からは、暑いのか窓を全開にしている。
この様子をのぞき見て、楽しそうな学生たち。

中庭にも大勢の人たちが足を止めて、突然のハプニングに大注目。

暑さをこれで憂さ晴らしするかのように他人から見られ、彼女は針のむしろの気分にされていた。

この出来事で、運命の歯車がゆっくりだが回り始めた。

私の人生がほぼ決まる。

15歳の夏がー。

暑く熱く、訪れるのだった。

    
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