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第2章
11 旅路を楽しもう
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王都から出発して、北へ北へと馬車を走らせていた。
流れる景色に目を向ければ、密集していた家々がまばらになる。
王都から離れて行くのが、それで実感できるのだった。
ボーッと見ながら、マティルダはこれからの予定を考えていた。
通り道近くにある、伯爵にご厄介になるのよね。
王族たちが、自分を頼ってくれるのは臣下としては光栄の極み。
これからの繋がりを持つには、大事なおもてなしになるだろう。
自然と、彼女はまた思いが口から出ていた。
「頼られた伯爵は、気合いが入っている筈です。
これは…、もうお昼の料理が期待できそう」
「サンダース伯爵令嬢は、食事しか楽しみがないのか?
僕は君との初めての旅行が、楽しみなのにー。
2人の仲を、濃厚にしたいな」
王家の子供らは、何処からそんな知識を仕入れている。
兄のエドワード様も態度には出さないが、実はムッツリさんなのかしら?
「なぁんに言ってんのよ!
最近の子は、ませガキ揃いばかりだわ」
お子様だが遥か身分の高い2人に堂々と言えるのは、彼女が命の恩人と家庭教師だからだ。
「マティルダたら、馬車の中が狭くて暑いからイライラしてるの?」
「あの~、メアリー王女。
先程から何気なく、マティルダって呼び捨てしてませんか?」
首をちょこっと傾げる仕草は、まことに愛らしい容姿をしていた。
「ここは、王宮ではないでしょう。
頭が固いって、マティルダはー」
「メアリー、同意するぞ。
僕も、マティルダと呼ぼう。
家名呼びは、長たらしくて面倒だったのだ」
たまにマティルダと呼んでいたアドニスも、暑さで投げやりになる。
「じゃあ、私もお二人をメアリーとアドニスと呼びますよ。
ですが、人前では呼びません。
不敬にあたりますもの」
「「いいよ~!マティルダ」」
軽い…軽すぎ、旅はこんな気分になりやすい。
そういうマティルダもガラにもなく、初めて訪れる場所に心がウキウキして舞い上がっている。
騒がしい馬車の前を走るのは、エドワード王子と婚約者候補たち。
「エドワード殿下、ご友人たちもお連れなさいましたのね」
婚約者候補の中で1番身分の高いブルネール侯爵令嬢サラ。
彼女は隣に座る殿下に、一番手に話しかけた。
サラが初めにお声がけしなくては、他の婚約者たちは話しづらいからである。
「今年は、異常気象って聞いていたからね。
避暑地へ誘ってみたのだ。
私たちだけより、もっと大勢で楽しんだ方がいいだろう」
「エドワード殿下は、友だち思いで優しいお方ですね。
うふふ、ひと夏の素敵な…。
二人の思い出になりそうですわ」
赤みかかった茶色の真っ直ぐな長い髪、水色の瞳を輝かして色目を使う態度。
この媚びを売るような話し方が、気持ち悪く面白くない。
もう一人の婚約者候補。
令嬢は、虫酸の走る言い方をする隣りに座る彼女に遠回しに注意をする。
「ベルガー伯爵令嬢。
二人きりではなく、私たちも居ますわ。
毎日が暑くて頭の回転が、今以上に鈍ってしまいましたのかしら?」
「ゴーダン伯爵令嬢こそ。
そんなにカッカして、水分でもお取りになられたら如何ですか!?」
2人に向かい栗毛のゆるい巻き髪を揺らし、オレンジかかった茶色の瞳がギラっと強く睨み付けた。
「お二人とも、おやめなさい!
エドワード殿下がお誘いくださったのに、言い争いは失礼にあたります」
「もう、婚約者気取りかしら?」
「ご身分が高いですし、大人しく従わなくては参りませんわね」
二人の伯爵令嬢たちは、嫌味ったらしく話しかけた。
空気の悪くなるのを察して、この中で一人だけの男性エドワードが割って入る。
「せっかくの旅路だ。
みんなで仲良く、楽しく過ごそう」
女性3人が集まると姦しいって言うが、ここまで違う意味で揉めてしまう。
彼は男性が自分だけで、彼女たちは婚約者候補。
自分とサンダース伯爵令嬢を入れ替えれば良かったと悔いる。
「もうじき昼休憩するから、ゆっくり休むといい。
サンダース伯爵令嬢は、実に良い案を考えてくれたよ」
エドワードは令嬢たちに、熱中症対策の父の御触れの成り行きを説明し出す。
馬車で後ろから付いてくるマティルダと、弟アドニスや妹メアリーの同行も話題になる。
「それは…、驚きましたわ。
あれは、サンダース伯爵令嬢の案でしたか。
アドニス殿下も御一緒ですか?
メアリー王女だけだと思いましたわ」
「弟君は長くご病気だと人伝に伺いましましたがー。
エドワード殿下、違いましたの?」
両伯爵令嬢は、疑問をもってエドワード殿下に質問をした。
「アドニスは病気ではない。
ひ、引きこもり…。なんだ……」
「「「引きこもり!」」」
これには、ブルネール侯爵令嬢も驚きの声を共にあげた。
どうも国1番矜持の高い王族たちは、部屋に閉じ籠っていた王子を病人扱いにして秘密にしていたらしい。
信じられない真実を、令嬢たちは旅路で知ることになる。
「……、サンダース伯爵令嬢が部屋の中で熱中症の弟を助け出してくれたんだ。
彼女のお陰でこうして、やっと部屋から出て…。
長旅まで、出来るまでになったのだ!」
兄エドワードは余程嬉しいのか、感動している様子だ。
「「「良かったですわね」」」
返事もキレイに一緒に揃え賛同し、婚約者になるかもの次期国王に近い第1王子に返事を返す。
なにせ、将来の嫁ぎ先になるかもしれない。
それぞれのご令嬢たちは、問題がありそうな王家に一抹の不安を感じた。
エドワードの方も、上手くいっていた令嬢たちの仲に亀裂が入るのを恐れ。
この旅行に危惧を抱き始めるのだった。
流れる景色に目を向ければ、密集していた家々がまばらになる。
王都から離れて行くのが、それで実感できるのだった。
ボーッと見ながら、マティルダはこれからの予定を考えていた。
通り道近くにある、伯爵にご厄介になるのよね。
王族たちが、自分を頼ってくれるのは臣下としては光栄の極み。
これからの繋がりを持つには、大事なおもてなしになるだろう。
自然と、彼女はまた思いが口から出ていた。
「頼られた伯爵は、気合いが入っている筈です。
これは…、もうお昼の料理が期待できそう」
「サンダース伯爵令嬢は、食事しか楽しみがないのか?
僕は君との初めての旅行が、楽しみなのにー。
2人の仲を、濃厚にしたいな」
王家の子供らは、何処からそんな知識を仕入れている。
兄のエドワード様も態度には出さないが、実はムッツリさんなのかしら?
「なぁんに言ってんのよ!
最近の子は、ませガキ揃いばかりだわ」
お子様だが遥か身分の高い2人に堂々と言えるのは、彼女が命の恩人と家庭教師だからだ。
「マティルダたら、馬車の中が狭くて暑いからイライラしてるの?」
「あの~、メアリー王女。
先程から何気なく、マティルダって呼び捨てしてませんか?」
首をちょこっと傾げる仕草は、まことに愛らしい容姿をしていた。
「ここは、王宮ではないでしょう。
頭が固いって、マティルダはー」
「メアリー、同意するぞ。
僕も、マティルダと呼ぼう。
家名呼びは、長たらしくて面倒だったのだ」
たまにマティルダと呼んでいたアドニスも、暑さで投げやりになる。
「じゃあ、私もお二人をメアリーとアドニスと呼びますよ。
ですが、人前では呼びません。
不敬にあたりますもの」
「「いいよ~!マティルダ」」
軽い…軽すぎ、旅はこんな気分になりやすい。
そういうマティルダもガラにもなく、初めて訪れる場所に心がウキウキして舞い上がっている。
騒がしい馬車の前を走るのは、エドワード王子と婚約者候補たち。
「エドワード殿下、ご友人たちもお連れなさいましたのね」
婚約者候補の中で1番身分の高いブルネール侯爵令嬢サラ。
彼女は隣に座る殿下に、一番手に話しかけた。
サラが初めにお声がけしなくては、他の婚約者たちは話しづらいからである。
「今年は、異常気象って聞いていたからね。
避暑地へ誘ってみたのだ。
私たちだけより、もっと大勢で楽しんだ方がいいだろう」
「エドワード殿下は、友だち思いで優しいお方ですね。
うふふ、ひと夏の素敵な…。
二人の思い出になりそうですわ」
赤みかかった茶色の真っ直ぐな長い髪、水色の瞳を輝かして色目を使う態度。
この媚びを売るような話し方が、気持ち悪く面白くない。
もう一人の婚約者候補。
令嬢は、虫酸の走る言い方をする隣りに座る彼女に遠回しに注意をする。
「ベルガー伯爵令嬢。
二人きりではなく、私たちも居ますわ。
毎日が暑くて頭の回転が、今以上に鈍ってしまいましたのかしら?」
「ゴーダン伯爵令嬢こそ。
そんなにカッカして、水分でもお取りになられたら如何ですか!?」
2人に向かい栗毛のゆるい巻き髪を揺らし、オレンジかかった茶色の瞳がギラっと強く睨み付けた。
「お二人とも、おやめなさい!
エドワード殿下がお誘いくださったのに、言い争いは失礼にあたります」
「もう、婚約者気取りかしら?」
「ご身分が高いですし、大人しく従わなくては参りませんわね」
二人の伯爵令嬢たちは、嫌味ったらしく話しかけた。
空気の悪くなるのを察して、この中で一人だけの男性エドワードが割って入る。
「せっかくの旅路だ。
みんなで仲良く、楽しく過ごそう」
女性3人が集まると姦しいって言うが、ここまで違う意味で揉めてしまう。
彼は男性が自分だけで、彼女たちは婚約者候補。
自分とサンダース伯爵令嬢を入れ替えれば良かったと悔いる。
「もうじき昼休憩するから、ゆっくり休むといい。
サンダース伯爵令嬢は、実に良い案を考えてくれたよ」
エドワードは令嬢たちに、熱中症対策の父の御触れの成り行きを説明し出す。
馬車で後ろから付いてくるマティルダと、弟アドニスや妹メアリーの同行も話題になる。
「それは…、驚きましたわ。
あれは、サンダース伯爵令嬢の案でしたか。
アドニス殿下も御一緒ですか?
メアリー王女だけだと思いましたわ」
「弟君は長くご病気だと人伝に伺いましましたがー。
エドワード殿下、違いましたの?」
両伯爵令嬢は、疑問をもってエドワード殿下に質問をした。
「アドニスは病気ではない。
ひ、引きこもり…。なんだ……」
「「「引きこもり!」」」
これには、ブルネール侯爵令嬢も驚きの声を共にあげた。
どうも国1番矜持の高い王族たちは、部屋に閉じ籠っていた王子を病人扱いにして秘密にしていたらしい。
信じられない真実を、令嬢たちは旅路で知ることになる。
「……、サンダース伯爵令嬢が部屋の中で熱中症の弟を助け出してくれたんだ。
彼女のお陰でこうして、やっと部屋から出て…。
長旅まで、出来るまでになったのだ!」
兄エドワードは余程嬉しいのか、感動している様子だ。
「「「良かったですわね」」」
返事もキレイに一緒に揃え賛同し、婚約者になるかもの次期国王に近い第1王子に返事を返す。
なにせ、将来の嫁ぎ先になるかもしれない。
それぞれのご令嬢たちは、問題がありそうな王家に一抹の不安を感じた。
エドワードの方も、上手くいっていた令嬢たちの仲に亀裂が入るのを恐れ。
この旅行に危惧を抱き始めるのだった。
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