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第2章

1 自称友の陰口

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 陽が落ちかかり夕暮れになると、昼間の暑さがやっとやわらぐ。
私は自分の部屋の窓際に、椅子を置いて腰掛ける。
空の夕陽を眺めていた。

「また、変な事を頼まれてしまった。
いろいろ無理に聞かされて…。
今日は、疲れちゃったなぁ~」

第2王子様が引きこもりだなんて、だから話題がなく影が薄い以上に存在すらなかったとは。

「食欲もなくなった。
食事は楽しみのひとつなのに。
夕食の時間は、ベッキーに質問の嵐になりそう」

重い腰をあげてマティルダは、食堂に向けて廊下を歩いていた。

ん?あれはベッキーの声だわ。庭で誰かと話をしてるの?

「ベッキー、例のあの子!
エドワード殿下の友人って、本当なの?!
メアリー王女の家庭教師もされているんでしょう?」

あの子は私で、私の話をしているのか。
自分がいない場所で、話題にされてるのは気分よくない。

「それは本当の話よ。
本人が、自慢げに話してくれたもの。
エドワード殿下と同じ学園に通ってるからって、王宮にまでノコノコとついてきて図々しい女よね」

「真面目そうで、大人しそうに見えたのに。
その子、そんな子だったんだ」

ウソばかり、全然違うわ!
私がここで出ていって否定したら、ベッキーはどう言い訳してくれるのかな。

「否定しても、またそれを陰口で言いそう。
何言っても、私が悪者にされて終わりよね」    

マティルダは、ベッキーを最初から友とは思ってはなかった。
だけど、彼女は案内係の立場で知り合い。
話し合う仲になり彼女からは、王宮の事を教えてもらっていた。
助かったし、感謝していたんだけど……。

彼女たちを無視して、独りで食堂へ行く為にまた一歩踏み出した。

   大勢の人たちの話し声や雑音、その中で独りで食べ始めた。
今はベッキーに近寄って欲しくないと、思っていたのが悪かったようだ。
彼女が素知らぬ顔をして、笑顔で近づいてきた。

イヤだと考えていたら、本当にそうなってしまう。

「マティルダ、こんばんわ。
そう言えば、噂で今度は第2王子のアドニス様の家庭教師をするんだって。
引きこもり王子の子守りとは、また大変ね」

「大変かどうかは、アドニス殿下とお会いしてないし分からないわ。
それに引きこもりになった理由も知らないで、私たちが憶測おくそくしてはいけないと思います」

ベッキー様は自分が思った返事ではなくて、反発するような言葉を返してきた。

「いい子ぶって…、なにさぁ!
アドニス殿下をお世話してる人たちが、苦労してるから良かれと思って教えてあげたのに!」

ベッキーは捨て台詞せりふを言うと、立ち上がって別の場所に移動して行った。

「…………、それは有り難う」

聞こえないだろうが、彼女に一応はお礼を言うマティルダ。
心配心は本心だろうか、あの会話を聞いて素直になれない自分がいた。

こんな短い間の出会いでも、こうなってしまうんだ。
15歳の私でも、この瞬間は傷ついている。

アドニス殿下の気持ちも理解できる。
彼は逃げる場所がある。
彼には心地よい孤独な空間だが、でもそれは本当なんだろうか。
独り口を動かしながら考えていたら、いつの間にか食べ終えていた。

明日、彼と会えば何かが分かるはずだ。
私なりに、彼のことを考察こうさつできるだろう。
 
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