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第1章
21 引きこもりの王子様
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第三者扱いの私が断言すれば、本人のエドワード殿下も憂いも晴れる。
「王族の皆さまも御一緒ですし、ご令嬢たちのご両親も安心されます」
私の話が済んだと、ケーキにフォークを近づけた時。
聞き慣れない名前が、耳に飛び込んでくるのだ。
「アドニスを連れて行くのですか?母上」
アドニスって、名前?
女神に愛された美青年で、イノシシの牙にかかって世を去った。
その流れた血から、アネモネの花が生えたという神話よね?
「アドニスお兄様は、引きこもりだからムリでしょう!」
メアリー王女の残酷かつ、アッサリと暴露する。
その話に、マティルダはケーキを目の前にしてフォークを止めた。
「引きこもり…??
アドニス様は、確か第2王子殿下のお名前でしたね」
ビックリ発言に、忘れ去られた第2王子の存在を思い出す。
名は存じ上げてはいたが、お姿は見たことがなかった。
一国の王妃、国母とはかけ離れた尊顔されていた。
「アドニスは、生まれた時から美しい赤子でした。
私が、あの子の名をつけたわ」
「左様でございますか。
名から想像しても、さぞやお美しくお育ちでしょうね?!」
あまりしないが、たまにはお世辞も必要。
慣れないことをしたせいか、バチが当たったようだ。
私は言ってはいけない禁句を、口にしてしまった。
「顔はそこそこだけど、現在は引きこもりしています。
部屋から一歩も出ないの。
それじゃ、ご自慢の顔もわからないじゃない。あはは…」
王女様は、この場にいない兄に対して酷い言い方をする。
しかし、いつから閉じこもっているのか。
成長期で部屋の中だけでは、ひ弱になっているんでしょう。
ちゃんと運動しているのか、他人事だけど心配になる。
「サンダース伯爵令嬢は、メアリーを更正させてくれて感謝しているわ。
それでね、アドニスもお願いしたいんだけど……。
一週間でお外に出してくれる」
自然な流れで依頼されそうになった、マティルダ。
「丁重に御断り申し上げます。
一週間の短い期限つきで、攻略するの難しいです」
王妃様のたっての願いも、悪びれもなく竹を割ったような見事なお断りであった。
「そんなに早く、結論を出さないで頂戴。
貴女なら出来ると思ったの。
このメアリーを、5日間でやる気にさせたわ」
「このって、お母様は私をこんな風に思っていたのですね。
アドお兄様は、何やってもムダでしたよ」
「貴女は、黙っていらっしゃい!」
母子の言い争いを息子も、止めようかとまぁまぁと間に入る。
「メアリーとアドニスとは、全くの別次元です。
母上、同格扱いをしないで下さい」
わざわざ収めようとしていたのに、エドワードは彼女にこれ以上は話すなという顔を向ける。
「残念だったわね。
避暑地は行けないし、湖のボート乗りも出来ませんよ」
マティルダは目を大きく見開くと、ボートの為にお願いをしてきた。
「マティルダ先生、私も手伝いますから頑張りましょう!」
「母上もメアリーも、サンダース伯爵令嬢に何でも気安くお願いをしないでくれ」
エドワード王子も、2人に苦言してくれている。
どうやら彼は、私を王宮へ連れてきた責任を感じているようだ。
これは、親子関係が悪くなるのでは…。
もう、仕方ないな~。
「やるだけはやってみますが、期待しないでくれますか?
アドニス殿下に荒療治しないと、部屋の外へ出すのは大変だと考えます」
「サンダース伯爵令嬢、依頼を受けてくれるのですね!」
いいのかとエドワードは、哀れみの感情で胸を痛めた。
「その代わりに、書類を作成して権限をお与えて下さいませ」
衣食住の確保の為に仕方がない。
夏休暇が終わるまで、まだ2ヶ月近くも残っている。
絶対にサンダースの領地へー。
家族には会いたくない!
またしても王族を調教する、伯爵令嬢。
今度は、引きこもり王子を引きずり出す使命。
「ところで何年、引きこもりっているのですか?
どんな原因でなってしまったのですか?」
何一つ情報を、知らされてないのであった。
アドニス王子の黒歴史が明らかにされる。
「王族の皆さまも御一緒ですし、ご令嬢たちのご両親も安心されます」
私の話が済んだと、ケーキにフォークを近づけた時。
聞き慣れない名前が、耳に飛び込んでくるのだ。
「アドニスを連れて行くのですか?母上」
アドニスって、名前?
女神に愛された美青年で、イノシシの牙にかかって世を去った。
その流れた血から、アネモネの花が生えたという神話よね?
「アドニスお兄様は、引きこもりだからムリでしょう!」
メアリー王女の残酷かつ、アッサリと暴露する。
その話に、マティルダはケーキを目の前にしてフォークを止めた。
「引きこもり…??
アドニス様は、確か第2王子殿下のお名前でしたね」
ビックリ発言に、忘れ去られた第2王子の存在を思い出す。
名は存じ上げてはいたが、お姿は見たことがなかった。
一国の王妃、国母とはかけ離れた尊顔されていた。
「アドニスは、生まれた時から美しい赤子でした。
私が、あの子の名をつけたわ」
「左様でございますか。
名から想像しても、さぞやお美しくお育ちでしょうね?!」
あまりしないが、たまにはお世辞も必要。
慣れないことをしたせいか、バチが当たったようだ。
私は言ってはいけない禁句を、口にしてしまった。
「顔はそこそこだけど、現在は引きこもりしています。
部屋から一歩も出ないの。
それじゃ、ご自慢の顔もわからないじゃない。あはは…」
王女様は、この場にいない兄に対して酷い言い方をする。
しかし、いつから閉じこもっているのか。
成長期で部屋の中だけでは、ひ弱になっているんでしょう。
ちゃんと運動しているのか、他人事だけど心配になる。
「サンダース伯爵令嬢は、メアリーを更正させてくれて感謝しているわ。
それでね、アドニスもお願いしたいんだけど……。
一週間でお外に出してくれる」
自然な流れで依頼されそうになった、マティルダ。
「丁重に御断り申し上げます。
一週間の短い期限つきで、攻略するの難しいです」
王妃様のたっての願いも、悪びれもなく竹を割ったような見事なお断りであった。
「そんなに早く、結論を出さないで頂戴。
貴女なら出来ると思ったの。
このメアリーを、5日間でやる気にさせたわ」
「このって、お母様は私をこんな風に思っていたのですね。
アドお兄様は、何やってもムダでしたよ」
「貴女は、黙っていらっしゃい!」
母子の言い争いを息子も、止めようかとまぁまぁと間に入る。
「メアリーとアドニスとは、全くの別次元です。
母上、同格扱いをしないで下さい」
わざわざ収めようとしていたのに、エドワードは彼女にこれ以上は話すなという顔を向ける。
「残念だったわね。
避暑地は行けないし、湖のボート乗りも出来ませんよ」
マティルダは目を大きく見開くと、ボートの為にお願いをしてきた。
「マティルダ先生、私も手伝いますから頑張りましょう!」
「母上もメアリーも、サンダース伯爵令嬢に何でも気安くお願いをしないでくれ」
エドワード王子も、2人に苦言してくれている。
どうやら彼は、私を王宮へ連れてきた責任を感じているようだ。
これは、親子関係が悪くなるのでは…。
もう、仕方ないな~。
「やるだけはやってみますが、期待しないでくれますか?
アドニス殿下に荒療治しないと、部屋の外へ出すのは大変だと考えます」
「サンダース伯爵令嬢、依頼を受けてくれるのですね!」
いいのかとエドワードは、哀れみの感情で胸を痛めた。
「その代わりに、書類を作成して権限をお与えて下さいませ」
衣食住の確保の為に仕方がない。
夏休暇が終わるまで、まだ2ヶ月近くも残っている。
絶対にサンダースの領地へー。
家族には会いたくない!
またしても王族を調教する、伯爵令嬢。
今度は、引きこもり王子を引きずり出す使命。
「ところで何年、引きこもりっているのですか?
どんな原因でなってしまったのですか?」
何一つ情報を、知らされてないのであった。
アドニス王子の黒歴史が明らかにされる。
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