【完結】すべては、この夏の暑さのせいよ! だから、なにも覚えておりませんの

愚者 (フール)

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第1章

19 恋愛偏差値は10歳児以下

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  「サンダース伯爵令嬢、待ってくれー!」

必死にトビラの前で行かせないように、両手を広げているエドワード。

「女の子の気持ちが…。
その~、理解する能力にかけるようでな。
メアリー、お前は外してくらないか?」

「ダメよ~ダメダメ!
この後、マティルダ先生と私はお茶を致しますのよ!
お兄様はお約束してませんでしょう!」

「メアリー王女の方が正しいです。
それに、相談されても困りますわ」

マティルダは弱り顔で、どう上手く逃げるかを考える。

「メアリー、ココだけの話で絶対に父上のや母上に内緒に出来るか?!」

幼い妹にまで、ご自分の恋愛偏差値を低さを露呈ろていするおつもりなの?

「もちろんよ~、私とお兄様の仲じゃあない!
神に誓って、絶対に誰にも申しませんとも!」

軽い口調であやしさをたっぷり振りまきながら、青い瞳をサファイヤの宝石以上にキラキラ輝かす。

また巻き込まれると、マティルダは回数を忘れる位タメ息を吐きまくる。

「先生、タメ息つくと幸せが減りましてよ!」

「貴女様は、そういう知識だけは人一倍ございますのね。はぁ~…」

その大多数をめる彼女にだけは、言われたくないと思うマティルダだった。

 もっぱら食べて飲んでエドワード殿下の愚痴ぐちを聞いては、甲高かんだかい笑い声だけが部屋をにぎわわす。
兄と妹の立場が、今まさに逆転している。
マティルダは、この二人の会話を黙り聞くだけ。

令嬢の乙女心をまだ恋愛経験もないだろう未熟な王子様は、小生意気こなまいきな小悪魔にやられぱなしである。

「お兄様が、お気持ちをハッキリしないのが問題よ!
3人の令嬢たちの間を、フラフラしてるからいけないのです。
伯爵令嬢は、我慢できなくなってお兄様に迫ってしまったんだわ」  

王女の正論を見守るマティルダは、口出しもできないでお菓子をパクパク食べていた。

「彼女は話していて、笑みを忘れない人だった。
外の暑い中で、熱い紅茶を飲んだのが悪かったと思う」

外れている見解に2人は、この男に哀れみさえ感じてしまう。

「気候の暑さと紅茶の熱さは、ただの引き金になっただけです。
彼女の真意は、そろそろ本命を選んで頂きたいだけ!
選ばれなかったら、とつぐのが遅れになりますから」

「さすが~!マティルダ先生は、サッパリキッパリ言いますね。
鈍感なお兄様でも、金槌かなづちで頭打たれた気分にお成りでしょう」

地頭じあたまは賢い、この子はー。

やる気と集中力がないだけで、勉強が面白いと思わせるだけで良い方向へいく。
先生としては、明るいがコチラの相談はどうなることやら…。

「私だって、薄々は気づいていた。
彼女だけでなく、他の候補者たちも同じだと思っている」

「だったら、さっさと決めてたら?
お兄様が片付かないと、私のお相手を安心して探せませんわ」

あ~、ゆっくりお茶できて楽だ。
思っていることを、妹君が全て話してくれているしね。

「でも、一人だけ決められない。
それぞれ良いところがあって、甲乙こうおつつけがたいのだ」

優柔不断ゆうじゅうふだんって、これだー!

私の婚約している人みたいに、浮気者よりマトモだけど…。
これもこれで、聞いていてイラつく!
 
ムカムカしてきた彼女は、メアリー王女と二人で印籠いんろうを叩きつけた。

「エドワード殿下!
こんな態度では突然誰かがきて、横から彼女たちをかっさらってしまいますよ。
いつかは、そんな人たちが現れる可能性もあります」

「サンダース伯爵令嬢。
だから…、その君にうかがいたいのだ…。
3人の中で誰が、未来の王妃に相応ふさわしいと君は考える?」

 「「………??」」

質問する王子に、女性たちは無言になる。
実の妹と友人に、無神経でアホかと思われているのを知らない王子。

自分の伴侶はんりょを私に決めさせると、この人は話しているのか?!
バカとかアホとかを、もうはる彼方かなたへ越えている。

「奥様をー、マティルダ先生に決めさせるの?
お兄様は、変な方ですわ!
とうとう暑さで、頭がおかしくなられたの?」

よいぞぉ~、我が生徒よ!
メアリー王女、後は私がそこから引き継ぐ。

「エドワード殿下、私も一生をお決めする事はムリです!
婚約者たちを、避暑地にでもお呼びしたらどうですか?
ゆったりした時間の中で、お話をしたりすれば仲が急展開したりします」

「マティルダ先生、それは素敵ですわ!
エドお兄様ー!!
そこで愛を育てて、お一人にお決めなさい!」

両手を1度強く叩いては、彼女は兄に命令し大喜びする。
メアリー王女が、北にある別宅に行きたいと最近騒いで困っているのよ。
これをうまく使うしかないわ。

「なるほど、私もそこで冷静になり真剣に考える。
誰にでも好かれる人をと、周りの反応を気にしすぎていたようだ」

メアリー王女は、この時を誓った。
お兄様のようには、絶対にならないとー。

「北の別荘に行きたいー。
今年は記憶にないほど、クソ暑いんですって聞きました。
脳ミソが沸騰ふっとうしてくさるーって、叫んで剣術を練習してる騎士を見ましたの」

「見たんじゃなくて、隠れて盗み見していたんだろう?!
お前は物語を読んで感化かんかされて、騎士さま~って本を抱えてクルクル踊っていたではないか!」

普段は気取っている王族たちは、隠すことすら忘れ素を出している。
どうやら今年の夏は涼しく暮らせそうだと、マティルダは紅茶を飲みながら思っていた。
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