【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第2章  王都の生活

第9話 お茶会前日のもめ事

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 あの丘の上の時から、緊張もなく兄と接するようになった。
お兄様とまた遠乗りの約束していると、父が明日のお茶会の話を始めた。

「プリムローズ、あすの茶会のドレスを見たぞ。
ドレスの色に似たハンカチーフを、ポケットに入れておえろいにする。
王族方にお前をご紹介したら、私は仕事に行くがー。
終わり頃、また迎えに行く予定だ」

「はい、お願いします」

短く答えた私の後、突然母が話しに割ってきた。

「旦那様、私も一緒にまいります。
母の私が、娘の隣に居ないわけにはいきません」

「最近は、顔色が悪く倒れでもしたら大変だ。
今回はおとなしく、私にまかせさない」 

『もう、またなの?』

食事になると嫌悪けんあくな感じに必ずなる。
使用人たちも顔には出さないけど態度が固い。

「いいわねぇ~。
プリムローズは、第1王子と婚約出来るかもしれない。
私も同じ頃に生まれたらと思うと、残念で仕方しかたないわよ」

プリプリと怒りながら、姉が話し出した。

「姉上!
プリムローズにからむのはおやめください」

兄ブライアンが、たまらず助け船を出してきた。

「あらあら、貴方も最近はプリムローズに優しいのね。
私は誰も助けてくれなくて、ひがんでしまうわ~」

その姉の言葉を聞くと、食事の手が止まった時に父の怒声がした。

「よさないか!
リリアンヌ、お前に関係ない話だ。
少しは黙りなさい!」

姉は席を立ち上がり、父に言い返した。

「お父様!
そのおっしゃりようは、ひどいですわぁ」

そのまま、食事の途中なのに出て行ってしまった。

娘の姿を目で追って、母は父に不満な顔を向けて言う。

「旦那様、リリアンヌが不憫ふびんではないのですか?
貴方も少しは協力して下さい」

母は、姉に過保護かほごすぎるようだ。

「確かに、私たちにも親として責任がある。
しかし、1番はあの子の行いだ。
学園での評判は、最悪ではないか。
このままでは、修道院に反省しに行くしかないな」

「そんなぁ、まだ15歳の成人前ですわよ。
婚約者の件も間に合いますわ!
旦那様も、もっと良い方を探して下さいませ」

「候補者を、何人も紹介している。
っているのは、お前たちだろう」

兄と私は、無視して食事を続けた。
アホらしくて、両親の会話を聞いていられなかった。

「あぁ~!もう旦那様には、頼らなくてよぉ!」

同じく席を立って、母も食堂を出て行ってしまった。

「プリムローズ!
お前は、アレ達のようになるなよ!よいな」

怒りが収まらないのか、私に話を振ってくる。
食事中は迷惑だし、食欲もなくなりそうだわ。

「お父様?!
5年前より悪化してませんこと。
私よりも、色々お考え下さいな。生意気なまいきな口をたたきましたわ。
お許し下さいませ……」

私と兄が2人で、同時に席を立ちましたわ。

振り返ると、父が頭を抱えている。 

「プリムローズ、明日は適当に王宮見物の気分で行きなさい。
問題を起こさないようにね」

兄と別れるときに、優しく助言して下さった。

 
 部屋で明日着ていくドレスを眺めていると、メリーが話しかける。

「お嬢様、ご覧ください。本当に品ある薄紫色のドレスですね。
帯のリボンはお嬢様と同じ目色の紫ですし、この襟と袖口は繊細で美しい銀色のレースはお髪の色です。
明日が楽しみですわ」

ドレスと私を見て、嬉しげに微笑んだ。

「そんなに気合いを入れないでね。
髪ハーフアップのリボンでいいわ。
どうせ、お菓子の場所に直行だし。
動きにくいから、アクセサリーとかつけないでね。
落とすと探すのも面倒でしょう」

横でふくれっ面をして、反論はんろんするメリー。

「そんな、お嬢様~!
やっとのお出かけで、メリーはお嬢様をもっと着飾りたいですわぁ~」

ガッカリした様子のメリーは、ブツブツ言いながら部屋を後にした。

先ほどの姉の話を考えると、貴族の娘ってかごの鳥ね。
綺麗だけど大空に羽ばたけない感じがするわ。

私は力強いたかみたいになって、高く飛び続けたいと願ってた。

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第2作目を7月17日より投稿しております。「君はバラより美しく!ドクダミよりもたくましい?」謎の宝石商の秘密を書いております。もし宜しければ、お読み下さると嬉しく思います。宜しく、お願い致します。
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