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第4章  王家の陰り

第14話 側室候補 と王妃の大罪

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 小さな社交場みたいな学園の食堂は、学生生徒たちが何やら騒がしい。
ある噂について、意見が飛び交っていた。

「例の噂を知っていますこと?」

「知らない人が、貴族の中にいまして?」

「婚姻されて13年で、側室を迎えるとはね」

みじめですわよね、王妃様。
だって、側室候補様の後ろたてが凄いこと。
あの前公爵様たちがね?!」

この話題は、今や王都の平民にも広まりつつあった。

「食堂中の話題ですわ。
あっ、国中の貴族でしたわね。
プリムローズ様!」

フローラは、食べている動作を止めてプリムローズに話す。

「皆さまも、驚きますわよね。
この間、側室候補様とお茶会を一緒する機会がありましたの。
本当に素晴らしいお方よ。
親しくお話をして頂き、とても光栄でしたわ!」

プリムローズが、頬を赤らめて自慢気に話してくる。

「それは凄いです!
あの側室候補様と、流石さすがはプリムローズ様ですわ!」

マリーは、羨望せんぼう眼差まなざしでプリムローズを見つめる。

「噂によると、前王様や前王妃様のお気に入りですもの。
話題の中心は、すっかり側室候補様ですわ!」

リザは目をキラキラさせて話し出した。

「王妃様に王子は2人おります。側室候補様に、もし王子がお生まれになられたら、どうなりますかしら?」

フローラが、悩みながらも好奇心でプリムローズに質問してきた。

「それは、側室候補様ではなくて。
元々、彼女は侯爵令嬢ですもの。
身分的に上でしょう!」

プリムローズは、ハッキリと言い切った。

ジェイクは、黙って会話を聞いていた。
大旦那様とプリムローズ様の言葉は、これだったのかと。
恐ろしさに持つフォークが、小刻みに震える。

 
    彼は庭師が精魂込めたであろう花たちの横で、側室候補の未亡人と前王妃とブロイ公爵夫人とお茶をしていた。

そして、前にいる女性を見て戸惑う。
24歳の若さで、ブロンドに美しいエメラルドのような瞳でとても美しい方だった。

結婚後に直ぐに病になる夫を、献身的に介護して苦労した女性に嫌な感情はない。

話をして気が付いたが、幼い彼女に偶然に会っている。
 
お茶会で迷子になった幼い彼女を、俺が送り届けたのを思い出した。
泣く小さな女の子は、天使のような愛らしさであった。 

あれだけの貴族たちが、彼女の後ろにいる。 
もう、拒絶して断るのは難しいだろう。

すまない王妃、王は心の底で詫びていた。

  
 その一方で、王妃は部屋の物を壊し続けていた。
息子たちも、そんな母におびえる日々。

「何故、今になって側室なの?
幸せに暮らしていたのではない。私は、王子を2人も生んだのよ。陛下は、私を裏切るのー!」

泣き叫び当たり散らす、周りが必死にいさめている。

「なんと、みっともない姿 を!
私も側室を認めて、2人で王を支えたのに。
貴女には、無理そうね!」

前王妃は王妃の姿を見て、馬鹿にして鼻で笑う。

「お前が……、陛下に王に薦めたのか!
ゆる、許せないー!!」

髪を振り乱し、鬼の形相ぎょうそうをして前王妃に殴り掛かろうとする。

「王妃は、乱心じゃ!
縄でくくって、部屋に閉じ込めよ!」

前王妃が周りの者に命じた。
女官たちは泣き叫びながら、その場で王妃がとらえられるのを見る。

 
 王はその一報を執務室で、宰相と共に報告を聞く。

「なに!
王妃が前王妃様に乱暴しようとし、縄で縛り部屋に軟禁なんきん状態だと!!」

王は机の椅子から立ち上がりながら、侍従長じじゅうちょうの話を聞き驚き声を張り上げた。

宰相さいしょうは、横で青い顔で立っている。

「宰相と近衛隊長は、すまないが余と一緒に王妃の所について来てほしい。
王妃を直接見て、処遇を判断したいのだ」

王は、側近たちにお願いをした。

 
    王妃の部屋に入ると、殆ど物はなく椅子に縄でくくりつけてある姿で座っていた。
顔には涙の筋あとがあり、目の焦点があってない。

「王妃、すまぬ!
側室の件は、許して欲しい。
1番は王妃だが、君には公務が勤まらない。
側室と仲良くしてくれないか?」

側近たちは、その様子を静かに見ていた。
王妃が夫の言葉に、反応を示した。

「貴方……、私を愛していると言って婚姻したんじゃないの?君だけだと…。 
王子を2人生んで、幸せだったでしょう?!
何で急に変わるの。
私を、どうして裏切ったのー!!」

王妃は、王に醜い形相で怒鳴りつけた。

部屋に緊張が走った。

「王妃、貴族たちを抑えることは出来ないのだ!」

王は顔色悪く、必死に王妃を説得している。

「私は、努力しているわ。
王子2人と私で、離宮に暮らす!
貴方は、新しい側室と仲良くやればいいわよ!
もう、貴方なんて要らないわ!アハッ、アーハハハー!!」

王妃は、狂った様に泣きながら笑い続けた。
側近たちは倒れそうになりながらも、しっかりと見続けている。
部屋は、異様な光景であった。
王は、王妃の前で下を向き座り込んだ。

  王たちは、白に近い顔色をして執務室に戻ってきた。
暫く皆で考えた結果が出た。

「王妃を離宮に送ることにした。王子たちは、余の側で暮らすことにする」

側近たちは、無言で頷いた。

独り言のように、側近たちに話し始める。

「なぁ、俺が1番家族を不幸にしたなぁ。 
いったい誰が、こんな事をしたと思う?
なぁ、宰相…」

「恐らく、皆が浮かぶ者たちでしょう。
王妃様は、彼女に言ってはいけないことを2回言ってしまいました。
そして、誰も味方がいなかったのは自業自得じごうじとくです」

宰相は、身内のことを淡々と言った。

 王妃が前王妃をののしり乱暴をしようとした罪で、離宮送りになる日は王子たちと別れになる。

「アルフレッド、ルイ!
お父様のことをよく聞いて良い子に育ってね!
いつか、私に会いに来ておくれぇー!!」

やつれ果てた青い顔をして王妃は、2人に話すと各々を強く抱き締めた。

1度も夫に話すことも目を合わすこともせずに、離宮に向かう馬車に乗って去った。

「お母様ー!!
お願い、行かないでぇー!!!」

2人の王子たちは、抱き合いながら馬車に向かって叫んだ。

「父上、どうしてぇ~!!
母上が離宮へ行くのです?!
もう、もう昔に戻れないのですかぁー!?」

アルフレッドは、泣きながら父に願う。

「王妃は、前王妃様に乱暴しようとした。
罪をつぐなうために、暫く離宮で反省をする。
必ず戻すので、良い子で待っていてほしい!」

王子たちのすすり泣く声は、何時いつまでもやむことはなかった。
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