【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

文字の大きさ
上 下
38 / 91
第2章  王都の生活

第15話 制服と王妃様の噂

しおりを挟む
 親をそっちのけで、次々に説明する。
教科書や学園の地図ちずに、制服の話までしてきた。
顔色悪く黙んまりの両親を見て、私1人でよかったのに。 
邪魔じゃまなのよと睨み付ける、幼い娘の威圧感いあつかんを部屋にいる者たちは感じた。

「では、制服にします。
出来るまでは私服で良いですわよね?
今日にでも頼みに行きます。
いいですよね、お父様!」

黙って頷く父は、すっかり置物状態になっていた。

「名刺の裏に、簡単な地図が書いてあります。
こちらでお求め下さい。
クラスは中等部3年A組になります。
学園に来ましたら職員室に直接来て下さい。
担任と一緒にクラスに行きます。
登校時間を少し早めて下さいね。
いつから通いますか?」

すっかり丁寧ていねいな態度に変化した先生方。

「お父様! 
明後日からでいかがでしょう?」

父が椅子から立ち上がり、学園長に頭を下げて頼んだ。

「学園長、娘をお願いします」

帰りの玄関で学園長は、わたしに握手をしながら話した。

「貴女が、当学園に通うことを光栄に思います」

「私の持てる知識を、この学園にささげますわ」

職員は馭者ぎょしゃに教科書を渡している。
父と母は、頭を少し下げ馬車に乗り込んだ。
満足げな私と、正反対な両親の暗い顔。

これからのクラレンス公爵家の未来を暗示あんじしていた。

 1度帰宅して教科書を置き、メリーをお供に制服を作りに外出する。
玄関に行くと父と執事長トーマスがいた。

父に外出の許可を得る。

王宮へ仕事に行く姿を見て、逃げたなぁと考えるプリムローズ。

母は今頃きっと、ベッドで寝込むかメイドに当たるかだわ。
近くにいる者たちは大変ですわよね。

「トーマス、行ってくるわね。帰りに使用人たちにお菓子でも買ってくるわね」

トーマスは私に誕生日の祝いを言いつつ、気遣きづかって頂きと言い頭を下げた。

 
   店に行く馬車の中で、メリーは制服の形や色の話を私にしてくる。
メリーの呑気のんきな声は、ほんといやしよね。
思わず、彼女を見て笑ってしまう。

私は祖父に似ていて白黒ハッキリつける性格、メリーはグレーで曖昧あいまいだがしんはしっかりしている。
そんな彼女が好きで、心から頼りにしていた。

「お嬢様!
このお店ですね。
どんな制服でしょうか? 
楽しみですね?!」

どちらが作りに来たか、わからない感じである。
メイドが先に、扉を開いて主人の私を中に入れた。

「お客様、いらっしゃいませ!」

年配ねんぱいの男性が、仕立ての良い服を着て出迎えた。

「中等部最終学年の制服のオーダーを、着るのは私よ!」

少し間を開けてから、男性は問いかけた。

「お嬢様でございますか?」

メリー見てから私を見ると、首を傾げたような気がした。

「私のよ!
信用出来ないなら、書類を見せるわ」

男性は謝罪ととれるお辞儀して、客の案内をした。

「お客様です。
ご対応をお願いします!!」

そう中の者たちに伝えると、部屋を出て行く。
部屋の中には数人のメジャーや針を持った女性たちが作業中であった。

「作業中に失礼しますね。
私は、クラレンス家のプリムローズと申します。
中等部3年の制服を春夏物用は1枚ピッタリを大至急だいしきゅうで作って頂戴な。秋冬物用は少し大きめを2枚。春夏物は、大きめを1枚ね。
計4枚よ。
宜しくお願いします」

この中で1番偉いだろうと思う婦人が、私に頭を下げてきた。

「この作業責任者のベネットと申します。
公爵令嬢プリムローズ様。どうぞ良しなに」と、キレイなカーテシーする。

私も彼女に返礼をした。
寸法を計り終えると、香りの高いお茶とクッキーがメリーの分まで一緒に出てくる。
良い店だわ、ちゃんとメリーの分も出してきたわ。

差別しないのね。

「ねぇ、不思議に思っているわよね。
こんな子供が、中等部3年の制服を頼むのですもの」

お茶を飲み、ベネットにプリムローズは聞いた。

「はい、あっ。いいえ、飛び級でございますか?
かなり年をまたぐのですね」

ベネットが関心を示しながら問う。

「6年飛ぶわ。
試験はパスしたわよ。
生地は統一しているのかしら?
それとも、ランクがあるの?」

ベネットは驚きを表して、彼女に聞き返した。

「えっ、お嬢様は最高ランクですわよね?!」

ベネットに生地見本を見せるように頼む。
絹と綿とウールね。
生地を触るプリムローズ。

「冬はウールで、春夏物は綿でいいわ。
水をかけられたら、絹は縮むものね。クスクス」

さらりと問題発言する公爵令嬢を、作業中の者は手を止めて見る。

「公爵家のご令嬢に水をかける者など…。
そんな、恐れおおいことを誰がするのでしょうか?」

またクスクス笑い、ベネットに質問をした。

「あら、聞いた話だと。
今の王妃様は、結構嫌がらせをされたんではなくて?
制服をこちらで沢山作ったんでは?」

「……、よくご存知ですね。
アーッ!聞かなかった事にして下さいませんか?!」

ベネットが、ペコペコしてお願いをしてくる。

「大丈夫よ。もう忘れたわ。
私も気を付けないとね。
出来上がったら、支払いは執事長のトーマスという者に直接払ってもらって頂戴な。公爵家には回さないでね。
絶対にお願いよ!」

あの人たちからのお金で、生きていきたくないわ。
学園に入る学費だって自分で払う。
まぁ、特待生は無料だけどね!

私とメリーは、店を出て後にした。
服屋からセパヌイールに向かう馬車の中。

「あぁっ!制服の形と色を見るのを忘れました!
見たかったですわ~!!」

メリーは、頭を抱えて悔しがりながら言い出したわ。
どこか抜けているのよね。
そこが、楽しくていい。

「出来てからのお楽しみよ!
冗談で話してみたら、本当だったのね。
かなり笑えるわ」

「王妃様の学生時代の話ですか?!
あの話は、平民まで噂になっていましたもの!
貴族社会って、本当に恐ろしい世界ですわね!」

メリーは、怖がりながら腕をさすりながら言っていた。
主人であるプリムローズはその世界で暮らしていくのだと思うと、メリーは心配になっていくのである。

それがいらぬお世話になるのを、メリーは知らなかった。

しおりを挟む
第2作目を7月17日より投稿しております。「君はバラより美しく!ドクダミよりもたくましい?」謎の宝石商の秘密を書いております。もし宜しければ、お読み下さると嬉しく思います。宜しく、お願い致します。
感想 5

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

結婚式当日に私の婚約者と駆け落ちした妹が、一年後に突然帰ってきました

柚木ゆず
恋愛
「大変な目に遭ってっ、ナルシスから逃げてきたんですっ! お父様お姉様っ、助けてくださいっ!!」  1年前、結婚式当日。当時わたしの婚約者だったナルシス様と駆け落ちをした妹のメレーヌが、突然お屋敷に現れ助けを求めてきました。  ふたりは全てを捨ててもいいから一緒に居たいと思う程に、相思相愛だったはず。  それなのに、大変な目に遭って逃げてくるだなんて……。  わたしが知らないところで、何があったのでしょうか……?

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。

王冠
恋愛
幼馴染のリュダールと八年前に婚約したティアラ。 友達の延長線だと思っていたけど、それは恋に変化した。 仲睦まじく過ごし、未来を描いて日々幸せに暮らしていた矢先、リュダールと妹のアリーシャの密会現場を発見してしまい…。 書きながらなので、亀更新です。 どうにか完結に持って行きたい。 ゆるふわ設定につき、我慢がならない場合はそっとページをお閉じ下さい。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

処理中です...