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第5章 永遠の愛をあなたに
第16話 自信を与えよう
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幸福感に包まれ幕を閉じ、愛する二人の門出に相応しい終わり方であった。
グレースたちは舞台の御礼と感想を伝えに、花束を抱えて楽屋に向かう。
お先にこの国の王様が妻子を伴い、貴賓室を兼ねた部屋で感動を分かち合っていた。
「大女優は格が違うわ。
わざわざ王族たちが、彼女のために足を向かわせるなんて」
エーレンタール屋敷の庭から自分で選び用意した、ピンクの薔薇と純白の五本づつ分けた薔薇の花束を腕に抱えている。
「これは仕方ないね。
花束と伝言を頼んで、私たちも帰るとするかい。
あの王様は話が長くて有名だから、バカ男が馬車で迎えに来てしまう」
ドロシーはやれやれお偉い方には勝てんと言って、苦笑いを浮かべて両肩を挙げる素振りをする。
「良い案が浮かんだぞ!
我が屋敷でお茶会でも開き、マノン様をお招きをしよう!
ドロシーさんも、ぜひ参加してくれたまえ」
カルロスは家族も大女優マノンに会えて喜ぶと、話していて胸中で自画自賛していた。
ごった返す周りの人たちで、彼の話を聞こえてないのか。
舞台の興奮が覚めやまないグレースが、何かを思い出す様に話し出した。
「アルバ公爵様も観劇にいらっしゃってました。
ご挨拶を申し上げたいですわ」
「まだ、出口で馬車待ちしながらお話でもしてるはずだよ」
カルロスが彼女にそう話すと、ドロシーも挨拶はしたほうが良いとその行為を褒めた。
近くにいる関係者に花束を託すと、グレースたちは後ろを髪引かれる思いで劇場の出口を目指す。
「いたいた、アルバ公爵夫妻がお話されている。
案ずるな、相手は我が家と懇意している伯爵だ」
カルロス様が先にお声がけしてから、私たちも後に続いた。
「これはグレース嬢に、貴女は仮面の館のご主人でしたな」
アルバ公爵が妻の夫人を隣にして、グレースたちにもお声を掛けて下さった。
「お久しぶりでございます。
アルバ公爵様と公爵夫人には、ご機嫌麗しゅうございますか?!」
「これは、アルバ公爵様に気を留めて頂けるとは有り難い。
今日の舞台と感動と同様の喜びです」
グレースとドロシーがお辞儀をして挨拶をしてると、夫人が芝居の話をしてくる。
「ホホホ、マノン様から招待されたとか。
そなた達は、彼女にとっては特別な存在ですのね。
グレース嬢は、どの場面が印象に残りましたか?」
グレースは悩み困ってしまって、頭で考え始めて固まる。
1番泣いたのは、親と引き離された場面。
圧倒されたのは、ヘイズ王への歓声。
いけないわ…、マノン様が全然出ていない!!
「私は最後のセリフですな。
年寄りだから、せっかちで横から口出しして申し訳ない」
慌てぶりを横で見て、ドロシーは助け舟を出してやる。
「えぇ、私も最後の自由になり飛び立つのにが感動しました!
やっぱり、愛する者同士たちが結ばれるのは素敵でしたわ!」
「そうよね!
最後は、私は自然と泣き笑いしました!
そなた達と、想いが同じで嬉しく思うわ」
助かりましたわ、アルバ公爵夫人がご機嫌になってくれて…。
挨拶と舞台の感想を話し合い、無事にグレースの初めての観劇鑑賞は幕を閉じた。
ドロシーさんを店まで送り届け馬車の中で二人きりになると、彼が私に変なことを聞いてくる。
「グレースはお茶を美味しく入れるけど、お茶会を自分で開催した事はあるのかい?」
「えっ!お茶会を自分で?
お客様を考えて招待状を書いたり、席順や出す茶葉やお菓子を用意する。
あれでございますか?!」
そうだと笑みで頷く彼に、私は首を左右に振るしかない。
「貧しくてお茶より白湯を飲んでましたし、お菓子なんてとんでもないです!
一度も実家では、金銭のかかるモノは開いておりませんでした」
顎を指で触って動かし考えているカルロスが、彼女に驚きの提案をしてきた。
どうしても自分の考えた事を、彼女にして欲しいようだ。
外見は優男に見えるが、強引という意外な一面を出してきた。
「……、それではグレース!
君が茶会を開けばいい!
いつかは、エーレンタール侯爵夫人としてお茶会をするんだ。
ごく親しい方をお招きしないか!」
(私がお茶会をする?
いつも茶を出して、見ていただけのあれを…)
「あっ、でもザィールに親しくて茶会に出席してくれる方なんてー。
誰もおりませんよ!
エテルネルだって…、一人も居なかった」
(カルロス様はそう仰るがー。
そうよ、いったい誰が来てくれるの?!)
「居るではないか!
エーレンタールの家族、タイラー夫妻。ドロシーさんやマノン様たち。
恐れ多いが、アルバ公爵夫妻だって招待したら訪問されるかもしれない!」
彼は彼女の細い肩に優しく手をかけて、目を細めて励ます。
「そうかなぁ、来てくれるかな。
私の初めてのお茶会にー」
「来てくれるさ!
自信持って良いよ、グレース。
君は誰よりも、あの美味しいお茶を出せるんだよ!」
(王妃様に褒めらたお茶、私が初めて喜ばれた自信がある事)
「えぇ、カルロス様!
私、お茶会を主催します!
そこで、マノン様に今日観た感想を申し上げてますわ。
私のお茶で、お礼をしたいですの!」
いつも遠慮がちで控えめな彼女に、自信をつけるよい機会だと思う。
吹っ切った様な彼女の明るい笑顔を見せると、カルロスもハチミツの様なとろける甘い笑顔をしていた。
この場で、グレースが人生で初めてお茶会を開く事が決定。
どんなお茶会にするかは、まだ具体的には何も浮かんでこない。
馬車の中で考え込んでしまう自分に、黙って隣で見つめる視線に顔を熱くするグレースであった。
グレースたちは舞台の御礼と感想を伝えに、花束を抱えて楽屋に向かう。
お先にこの国の王様が妻子を伴い、貴賓室を兼ねた部屋で感動を分かち合っていた。
「大女優は格が違うわ。
わざわざ王族たちが、彼女のために足を向かわせるなんて」
エーレンタール屋敷の庭から自分で選び用意した、ピンクの薔薇と純白の五本づつ分けた薔薇の花束を腕に抱えている。
「これは仕方ないね。
花束と伝言を頼んで、私たちも帰るとするかい。
あの王様は話が長くて有名だから、バカ男が馬車で迎えに来てしまう」
ドロシーはやれやれお偉い方には勝てんと言って、苦笑いを浮かべて両肩を挙げる素振りをする。
「良い案が浮かんだぞ!
我が屋敷でお茶会でも開き、マノン様をお招きをしよう!
ドロシーさんも、ぜひ参加してくれたまえ」
カルロスは家族も大女優マノンに会えて喜ぶと、話していて胸中で自画自賛していた。
ごった返す周りの人たちで、彼の話を聞こえてないのか。
舞台の興奮が覚めやまないグレースが、何かを思い出す様に話し出した。
「アルバ公爵様も観劇にいらっしゃってました。
ご挨拶を申し上げたいですわ」
「まだ、出口で馬車待ちしながらお話でもしてるはずだよ」
カルロスが彼女にそう話すと、ドロシーも挨拶はしたほうが良いとその行為を褒めた。
近くにいる関係者に花束を託すと、グレースたちは後ろを髪引かれる思いで劇場の出口を目指す。
「いたいた、アルバ公爵夫妻がお話されている。
案ずるな、相手は我が家と懇意している伯爵だ」
カルロス様が先にお声がけしてから、私たちも後に続いた。
「これはグレース嬢に、貴女は仮面の館のご主人でしたな」
アルバ公爵が妻の夫人を隣にして、グレースたちにもお声を掛けて下さった。
「お久しぶりでございます。
アルバ公爵様と公爵夫人には、ご機嫌麗しゅうございますか?!」
「これは、アルバ公爵様に気を留めて頂けるとは有り難い。
今日の舞台と感動と同様の喜びです」
グレースとドロシーがお辞儀をして挨拶をしてると、夫人が芝居の話をしてくる。
「ホホホ、マノン様から招待されたとか。
そなた達は、彼女にとっては特別な存在ですのね。
グレース嬢は、どの場面が印象に残りましたか?」
グレースは悩み困ってしまって、頭で考え始めて固まる。
1番泣いたのは、親と引き離された場面。
圧倒されたのは、ヘイズ王への歓声。
いけないわ…、マノン様が全然出ていない!!
「私は最後のセリフですな。
年寄りだから、せっかちで横から口出しして申し訳ない」
慌てぶりを横で見て、ドロシーは助け舟を出してやる。
「えぇ、私も最後の自由になり飛び立つのにが感動しました!
やっぱり、愛する者同士たちが結ばれるのは素敵でしたわ!」
「そうよね!
最後は、私は自然と泣き笑いしました!
そなた達と、想いが同じで嬉しく思うわ」
助かりましたわ、アルバ公爵夫人がご機嫌になってくれて…。
挨拶と舞台の感想を話し合い、無事にグレースの初めての観劇鑑賞は幕を閉じた。
ドロシーさんを店まで送り届け馬車の中で二人きりになると、彼が私に変なことを聞いてくる。
「グレースはお茶を美味しく入れるけど、お茶会を自分で開催した事はあるのかい?」
「えっ!お茶会を自分で?
お客様を考えて招待状を書いたり、席順や出す茶葉やお菓子を用意する。
あれでございますか?!」
そうだと笑みで頷く彼に、私は首を左右に振るしかない。
「貧しくてお茶より白湯を飲んでましたし、お菓子なんてとんでもないです!
一度も実家では、金銭のかかるモノは開いておりませんでした」
顎を指で触って動かし考えているカルロスが、彼女に驚きの提案をしてきた。
どうしても自分の考えた事を、彼女にして欲しいようだ。
外見は優男に見えるが、強引という意外な一面を出してきた。
「……、それではグレース!
君が茶会を開けばいい!
いつかは、エーレンタール侯爵夫人としてお茶会をするんだ。
ごく親しい方をお招きしないか!」
(私がお茶会をする?
いつも茶を出して、見ていただけのあれを…)
「あっ、でもザィールに親しくて茶会に出席してくれる方なんてー。
誰もおりませんよ!
エテルネルだって…、一人も居なかった」
(カルロス様はそう仰るがー。
そうよ、いったい誰が来てくれるの?!)
「居るではないか!
エーレンタールの家族、タイラー夫妻。ドロシーさんやマノン様たち。
恐れ多いが、アルバ公爵夫妻だって招待したら訪問されるかもしれない!」
彼は彼女の細い肩に優しく手をかけて、目を細めて励ます。
「そうかなぁ、来てくれるかな。
私の初めてのお茶会にー」
「来てくれるさ!
自信持って良いよ、グレース。
君は誰よりも、あの美味しいお茶を出せるんだよ!」
(王妃様に褒めらたお茶、私が初めて喜ばれた自信がある事)
「えぇ、カルロス様!
私、お茶会を主催します!
そこで、マノン様に今日観た感想を申し上げてますわ。
私のお茶で、お礼をしたいですの!」
いつも遠慮がちで控えめな彼女に、自信をつけるよい機会だと思う。
吹っ切った様な彼女の明るい笑顔を見せると、カルロスもハチミツの様なとろける甘い笑顔をしていた。
この場で、グレースが人生で初めてお茶会を開く事が決定。
どんなお茶会にするかは、まだ具体的には何も浮かんでこない。
馬車の中で考え込んでしまう自分に、黙って隣で見つめる視線に顔を熱くするグレースであった。
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