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第4章  真実の愛を求めて

第23話 仮面祭りの大会

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 衣装を着ていて恥ずかしいのか、その場で下を向いたままのグレース。
その態度に、ドロシーがイラっとして怒鳴りつける。

「ちょいと、アンタ!
それじゃ、似合ってるかわからない!
下を向いては顔が見えないし、ほら前をちゃんと向きな」

ビクッとなりすぐに反応して、ドロシーの顔をまっすぐ見た。

「ん、まぁまぁだね。
いいかい、アンタは女海賊なんだ。
荒くれ者さぁ、意味わかるかい」

それを聞くと、目に力を込めて胸を張って見せた。

「ハハハ、そうそう!
その意気いきだよ。
その服の秘密わかるかい?」

「はい、これドレスになります?!」

グレースは試着して驚いたのだ。
長いマントのような黒い上着、下はタイツっぽいのを履くようになっていた。

女性が足を出すなんてと、出てくるのがとても恥ずかしかったのだ。
マントが長くなかったら、この場には現れなれなかった。

「黒の海賊マントを裏にすると、白の金糸の薔薇の花が幾つも刺繍されて綺麗だろう。
凄く豪奢ごうしゃ逸品いっぴんさ」

「ハイ!それにマントに隠された布を下ろすと長いドレスの裾になります」

「きっと、手間と金がかかってんね。
それ以上に愛情も捨てられない訳だよ。
思い出が、まってんに決まってるからね」

「私たちが、これを着ても宜しいのか?」

カルロスは、ドロシーとグレースのやり取りを聞き質問をしてくる。

「1つだけ条件があるよ。
タイラーは、もう話したかい?!」

ドロシーはカルロスを無視し、タイラーに話すとタイラーは訳分からんと首を傾げた。

「よし分かったよ。
いいかい条件は、仮面祭りの大会に出ることさぁ!
こんな素晴らしい衣装を、みんなに見せびらかさないとね!」

3人はドロシーの話に、返事をせず話し合いに入るのである。

「衣装は最高だし、気に入ってるわ。
でも、仮面祭りに大会なんて本当にございますの?!」

グレースはエテルネルに来て、初めての仮面祭りで疑いの気持ちになるのは当たり前である。

「すまない、私は存じない」

カルロスは短く答えると、二人はタイラーの答えを待つ。

「確かにあるぞ!
しかし、最初は平民がお遊びで始めたんだ。
今は国も盛り上がるので、推奨すいしょうしている。
最近は、貴族らも内緒で参加しているぜ!」

グレースとカルロスは大会があるのは理解したが、人前で衣装を見せるだけなのか不安でしょうがない。

「まさか!
舞台にあがり、何かしなくてはいけませんの?」

「それは…。
芝居をしたり、踊ったりするそうだ。
時間があるので、何かして盛り上げた人が優勝しやすいな」

カルロスとグレースは目を合わせると、首を静かに振る。

「無理だ!
私はそんな事は…」

「私だって、歌や芝居なんてしたことはなくってよ!
地味なグレースで地元でも有名だったし…」

「でもよ!
確か偽名ぎめいで、参加できる。
仮面もするんだぜ!
バレないし、遊び感覚でやればいい」

タイラーは他人事なので、ヤレヤレ言うのでグレースはキレた。

「じゃあ、タイラー父様も一緒に出ましょうよ!
出場の人数って決まってますの?!」

まさかの俺ですかに、彼は顔色を悪くした。

「いやっー、俺はもういい歳だしなぁ~!
若者が挑戦するべきだ!」

「仮面するんですよね。
歳はわかりません、タイラー殿」

いつもは温厚な珍しくカルロスが、予想できない展開にキレかかっている。

3人の会話に終わりがみえなかったのを、いらつく者が大声をだす。

「別に命が減るわけじゃないよ!
人生の中でいい経験じゃないか。
タイラーも出なよ」

「そういう、ドロシーも出ろ!」

「何言うんだい!
その日はね、かせぎが1番いい日なんだ。
私は無理だね」

グレースはハッとして、別に違う衣装でも構わないのではと気づいた。
なんで、この衣装にこだわっていたのかしら?

「ドロシーさん、他の衣装を見せてくださいませんか?」

他の2人も、そうだよなって表情をし出したのだった。

「あんた!逃げるんかい!
この衣装を着といて、そのざまぁかい!!」

ドロシーはやっと着てもいい客に巡り会えたのにと思い、肩を落としたのを見てカルロスが可哀想かわいそうに思えてくる。

「グレース嬢は、いつかはエテルネルに帰国する身です。
一日位は、恥かいてもいいのでは?!
私は一生なんですよ」

グレースもカルロスの言い分は大袈裟おおげさだけど、そう言えばそうねと考えを改めていた。

「決まりだね!
大会を必ず見に行くよ。
アハハハ!」

3人はドロシーに一杯食わされたと、怒る気もしなくなっていた。

それから、タイラーの衣装や仮面を選んだ。

グレースは芝居を提案して、脚本も自分が書くことにしたのである。

大会まで、あと約2ヶ月。

期待と不安の日々を、芝居の練習をして送るのであった。

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