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第2章 エーレンタール侯爵家
第16話 気難しい客
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朝の仕事の水汲みを終えると、朝早くから庭師がいつもより丁寧に花の剪定の手入れをしていた。
「おはようございます!
今日も、綺麗にお花が咲いてますね!」
毎日挨拶をしているので、たまにグレースに屋敷に飾るには不足している綺麗な花をくれたりする。
「やぁ、グレース嬢。
おはよう、毎日大変なのに偉いなぁ。
明日はちょっと気難しい客がくるので、気を使うのだよ。
特別に綺麗にしないと、ドヤされるかも!ハハハ」
誰が訪れるか知らないので曖昧な返事をして、メイドたちが朝の食事をする食堂に向かう。
エーレンタール侯爵の屋敷のメイドたちは、かなり普通より恵まれている。
必ず交代をして、食事を頂くことができていた。
ほとんどの貴族のお屋敷なら、朝の仕事が終わらないと駄目であり、下手をしたら食べ物にありつけない日が当たり前。
そんな、劣悪環境の待遇である。
席に着き神に感謝してから、食べ始めていたら隣のメイドたちが声をかけてきた。
「グレース、明日は荒れた1日になるわ。
なるべく、目立たない様にした方がお利口さんだよ」
メイドたちはグレースが恥ずかしがり屋で客人の扱いを嫌い、裏方の仕事の水汲みをわざわざする変わり者と勘違いをしていた。
悪い意味ではない、良い方の意味だ。
実際に水汲みは1番きつく、やりたくないのだから大助かりしている。
最初は様子見だったが、今ではグレースを仲間として扱ってくれている。
「庭師さんも、気難しい方が来るって朝に言ってましたわ。
どんな方が、お見栄になるのでしょうか?」
首を傾げながら、隣のメイド仲間に聞いてみる。
「カルロス様のご婚約者の伯爵令嬢よ!
奥様とカルロス様とその令嬢にベアトリス様、4人でお茶会をするの。
特に奥様は、そのご令嬢を好いてないわ」
グレースの質問に答えると、少し離れた席にいた他のメイドたちも話に割って入ってきた。
「ずーっとカルロス様と婚約者の令嬢は、疎遠であまりお会いしてないわ。
2人とも、気が合わないみたいなの」
「それはカルロス様だけではないでしょう!?
お茶会の成り行き次第で、また気まずくになるかもね」
3人のメイドの話を聞いて、グレースは心が痛んだ。
婚約破棄の言葉は、彼女にとってはまだまだ悲しく辛い思い出。
前にベアトリス様が、私にそんな愚痴を仰っていた。
あれは、本心でしたのね。
どうして、そのご令嬢とはそんな風になってしまったのかしら?
カルロス様は、とても感じの良いお優しいお方なのに。
グレースはお茶を入れる度にお礼を言う、侯爵令息を素敵な人物と思っていた。
「今日のお茶会が、和やかに楽しく終わると良いですね。
侯爵御一家は素敵な方々ですので、皆さんお幸せになって頂きたいですわ」
自分は何時かはエテルネルに戻るが、この侯爵家に来れて感謝をしていたのであった。
メイド仲間たちも最初は仕事以外は会話がなかったが、今ではこうして普通に話せるようになってきた。
「明日は、誰がお茶をお入れするのかしらね。
あのご令嬢は意地悪で、私が入れようとしたらカップをそっと動かしたのよ。
危うくこぼしそうになり、一歩前でお茶の動作を止めたわ!」
少し離れた斜めからメイドが、コチラに話を聞いてと言わんばかりに話し出してきた。
「それね!後ろからメリッサ様と一緒に見てたわ。
何気なくするから驚いたけど、あれはワザとで確信犯よ。
明日のお茶入れは、誰に当たるのかしら?
ドキドキするし、とても新人には任せられないわ」
「私にと頼まれたら、その場で気絶するかもね。
もう二度とあの方には、死んでもお茶を入れなくないから」
そんな会話を本気でしてるが、婚姻でもしたらその方が侯爵家の未来の女主人になる。
グレースは、他人事だが気の毒に感じた。
主人の性質で雇われる者の苦労が絶えない、王宮での私は恵まれていたのね。
エテルネルの王妃様や女官長さまは、健やかお暮らしかしら?
彼女は窓の外の空を見ては、お二人のお姿を思い返していた。
「おはようございます!
今日も、綺麗にお花が咲いてますね!」
毎日挨拶をしているので、たまにグレースに屋敷に飾るには不足している綺麗な花をくれたりする。
「やぁ、グレース嬢。
おはよう、毎日大変なのに偉いなぁ。
明日はちょっと気難しい客がくるので、気を使うのだよ。
特別に綺麗にしないと、ドヤされるかも!ハハハ」
誰が訪れるか知らないので曖昧な返事をして、メイドたちが朝の食事をする食堂に向かう。
エーレンタール侯爵の屋敷のメイドたちは、かなり普通より恵まれている。
必ず交代をして、食事を頂くことができていた。
ほとんどの貴族のお屋敷なら、朝の仕事が終わらないと駄目であり、下手をしたら食べ物にありつけない日が当たり前。
そんな、劣悪環境の待遇である。
席に着き神に感謝してから、食べ始めていたら隣のメイドたちが声をかけてきた。
「グレース、明日は荒れた1日になるわ。
なるべく、目立たない様にした方がお利口さんだよ」
メイドたちはグレースが恥ずかしがり屋で客人の扱いを嫌い、裏方の仕事の水汲みをわざわざする変わり者と勘違いをしていた。
悪い意味ではない、良い方の意味だ。
実際に水汲みは1番きつく、やりたくないのだから大助かりしている。
最初は様子見だったが、今ではグレースを仲間として扱ってくれている。
「庭師さんも、気難しい方が来るって朝に言ってましたわ。
どんな方が、お見栄になるのでしょうか?」
首を傾げながら、隣のメイド仲間に聞いてみる。
「カルロス様のご婚約者の伯爵令嬢よ!
奥様とカルロス様とその令嬢にベアトリス様、4人でお茶会をするの。
特に奥様は、そのご令嬢を好いてないわ」
グレースの質問に答えると、少し離れた席にいた他のメイドたちも話に割って入ってきた。
「ずーっとカルロス様と婚約者の令嬢は、疎遠であまりお会いしてないわ。
2人とも、気が合わないみたいなの」
「それはカルロス様だけではないでしょう!?
お茶会の成り行き次第で、また気まずくになるかもね」
3人のメイドの話を聞いて、グレースは心が痛んだ。
婚約破棄の言葉は、彼女にとってはまだまだ悲しく辛い思い出。
前にベアトリス様が、私にそんな愚痴を仰っていた。
あれは、本心でしたのね。
どうして、そのご令嬢とはそんな風になってしまったのかしら?
カルロス様は、とても感じの良いお優しいお方なのに。
グレースはお茶を入れる度にお礼を言う、侯爵令息を素敵な人物と思っていた。
「今日のお茶会が、和やかに楽しく終わると良いですね。
侯爵御一家は素敵な方々ですので、皆さんお幸せになって頂きたいですわ」
自分は何時かはエテルネルに戻るが、この侯爵家に来れて感謝をしていたのであった。
メイド仲間たちも最初は仕事以外は会話がなかったが、今ではこうして普通に話せるようになってきた。
「明日は、誰がお茶をお入れするのかしらね。
あのご令嬢は意地悪で、私が入れようとしたらカップをそっと動かしたのよ。
危うくこぼしそうになり、一歩前でお茶の動作を止めたわ!」
少し離れた斜めからメイドが、コチラに話を聞いてと言わんばかりに話し出してきた。
「それね!後ろからメリッサ様と一緒に見てたわ。
何気なくするから驚いたけど、あれはワザとで確信犯よ。
明日のお茶入れは、誰に当たるのかしら?
ドキドキするし、とても新人には任せられないわ」
「私にと頼まれたら、その場で気絶するかもね。
もう二度とあの方には、死んでもお茶を入れなくないから」
そんな会話を本気でしてるが、婚姻でもしたらその方が侯爵家の未来の女主人になる。
グレースは、他人事だが気の毒に感じた。
主人の性質で雇われる者の苦労が絶えない、王宮での私は恵まれていたのね。
エテルネルの王妃様や女官長さまは、健やかお暮らしかしら?
彼女は窓の外の空を見ては、お二人のお姿を思い返していた。
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