21 / 124
第1章 隣国への逃亡
第21話 魔女狩り
しおりを挟む
女官長様が言われた通りに、次の日から私は休みを頂いた。
王宮に入ってからの初めての病欠に、メイドの仲間たちが仕事が終わってからお見舞いに訪れてくれる。
嘘を付いているので心苦しいが、心配してくれるのが嬉しかった。
「なんだ、意外に元気そうで安心したわ!」
「びっくりしたのよ!
突然、女官長様からグレースが体調が良くないって言われて…。
まさか、仮病ではないわよね!」
思わずグレースは、ビクッと体が反応する。
「何言ってんのよ!
アンタと違って真面目なグレースが、そんな事をするわけないでしょう!」
お見舞いに来てくれた二人が、冗談をいい笑顔で話をしていた。
1人の友人が、意味ありげにグレースに聞いてきた。
「ねぇ、グレース!
確か前に婚約破棄をされて、職を求めて王宮に入ったって言ってたわよね?
今、婚約破棄が流行ってるのを知っている?!」
もう1人の別の友人が、慌てて咎める。
「やだっ、やめなさいよ!
グレースは、私たちみたいな噂好きではないのよ!?
知らないわよね?」
首を傾げて、知らない振りをした。
ほーらっ、やっぱりと友人2人は笑っている。
「王宮内で噂になって、それも大事になっているわ!
あのバロック侯爵家のご令嬢イザベラ様が、婚約破棄されたのよ。彼女ちょっと、性格がアレじゃない?!
それなのに自分は悪くないって、会う人に言い訳して話しまくっているのよ!クスクス」
私も、令嬢の噂で聞いたことがある。
凄く気が強く、少しでも機嫌が悪いとメイドに当たり散らす方だわ。
「そうなのよ、私も聞いてスカッとしたわ!
自分の性格のせいで、婚約者に逃げられたのにねぇ。
あの本が悪い、あの本には人を惑わす魔力があるって騒いでるの!
ほんとあの人、バカみたい!
アーハハハァ!!」
2人は揃って堪えきれずに、吹き出して大笑いをし始めた。
「まぁね!巷を騒がしているけど、結局は男性に不満があってあの本を使っているだけではない?!」
「でも、書いた作者ってシャロンって女性でしょう?
彼女、まずい立場になっているわよ。
相手は、あのバロック侯爵令嬢よ!」
そんなに、その令嬢は怒っていらっしゃるの。
でも婚約破棄が辛いのは、私も経験済みで分かる。
「あの、そんなに怒っているの?ただ、本を書いただけで…」
グレースは自分が書いていて、恐ろしくなってきていた。
「父親の侯爵は縁談を潰されて恨んでいると、王宮内でももっぱらの話になってるわ。
惑わす本を書いた魔女を探し出すって、いろんな人たちに触れ回っているそうよ!」
「なにそれ、怖いわ!
昔、それって違う国であった魔女狩りでもするの!?
それはちょっと、やり過ぎと思うわ!」
嘘でしょう、そんな話になってるの!
心も体も、氷のように冷たくなっていく。
何とか誤摩化し笑ってみたが、顔色が悪くなる一方だった。
彼女らは、体調が悪くなったと誤解してくれた。
「グレース、ごめんなさい!
まだ具合がよくないのね?!
私たち、もう帰るから…」
「早く寝たほうが良いわ。
顔色が青いわよ。
また、来るわね!」
逃げ出すように、2人して部屋を出ていく。
どうしよう、きっとバロック侯爵は出版社に怒鳴り込みに行くわ。
もしかしたら、もう行ってるかもしれない。
編集長や皆さんに、ご迷惑をかけてしまう。
そんなつもりで、書いた本じゃないのにー!
震えながら独りベッドの中で寝ていると、また扉をノックする音が外から聞こえる。
また、誰かがお見舞いに来てくれたの?!
いいえ、違う!
きっと、王妃様との面会が決まったのを教えに来たのだわ。
扉を開けると、予想通り女官長オリヴィア様だった。
「グレース、明日午前10時に王妃様にお茶をいれなさい。
最後になるはずです。
貴女の思いを込めていれなさい」
女官長様が部屋を出るまで、グレースは深く頭を下げ続ける。
そんな彼女は、立っているのがやっとで頭の中は混乱していた。
王宮に入ってからの初めての病欠に、メイドの仲間たちが仕事が終わってからお見舞いに訪れてくれる。
嘘を付いているので心苦しいが、心配してくれるのが嬉しかった。
「なんだ、意外に元気そうで安心したわ!」
「びっくりしたのよ!
突然、女官長様からグレースが体調が良くないって言われて…。
まさか、仮病ではないわよね!」
思わずグレースは、ビクッと体が反応する。
「何言ってんのよ!
アンタと違って真面目なグレースが、そんな事をするわけないでしょう!」
お見舞いに来てくれた二人が、冗談をいい笑顔で話をしていた。
1人の友人が、意味ありげにグレースに聞いてきた。
「ねぇ、グレース!
確か前に婚約破棄をされて、職を求めて王宮に入ったって言ってたわよね?
今、婚約破棄が流行ってるのを知っている?!」
もう1人の別の友人が、慌てて咎める。
「やだっ、やめなさいよ!
グレースは、私たちみたいな噂好きではないのよ!?
知らないわよね?」
首を傾げて、知らない振りをした。
ほーらっ、やっぱりと友人2人は笑っている。
「王宮内で噂になって、それも大事になっているわ!
あのバロック侯爵家のご令嬢イザベラ様が、婚約破棄されたのよ。彼女ちょっと、性格がアレじゃない?!
それなのに自分は悪くないって、会う人に言い訳して話しまくっているのよ!クスクス」
私も、令嬢の噂で聞いたことがある。
凄く気が強く、少しでも機嫌が悪いとメイドに当たり散らす方だわ。
「そうなのよ、私も聞いてスカッとしたわ!
自分の性格のせいで、婚約者に逃げられたのにねぇ。
あの本が悪い、あの本には人を惑わす魔力があるって騒いでるの!
ほんとあの人、バカみたい!
アーハハハァ!!」
2人は揃って堪えきれずに、吹き出して大笑いをし始めた。
「まぁね!巷を騒がしているけど、結局は男性に不満があってあの本を使っているだけではない?!」
「でも、書いた作者ってシャロンって女性でしょう?
彼女、まずい立場になっているわよ。
相手は、あのバロック侯爵令嬢よ!」
そんなに、その令嬢は怒っていらっしゃるの。
でも婚約破棄が辛いのは、私も経験済みで分かる。
「あの、そんなに怒っているの?ただ、本を書いただけで…」
グレースは自分が書いていて、恐ろしくなってきていた。
「父親の侯爵は縁談を潰されて恨んでいると、王宮内でももっぱらの話になってるわ。
惑わす本を書いた魔女を探し出すって、いろんな人たちに触れ回っているそうよ!」
「なにそれ、怖いわ!
昔、それって違う国であった魔女狩りでもするの!?
それはちょっと、やり過ぎと思うわ!」
嘘でしょう、そんな話になってるの!
心も体も、氷のように冷たくなっていく。
何とか誤摩化し笑ってみたが、顔色が悪くなる一方だった。
彼女らは、体調が悪くなったと誤解してくれた。
「グレース、ごめんなさい!
まだ具合がよくないのね?!
私たち、もう帰るから…」
「早く寝たほうが良いわ。
顔色が青いわよ。
また、来るわね!」
逃げ出すように、2人して部屋を出ていく。
どうしよう、きっとバロック侯爵は出版社に怒鳴り込みに行くわ。
もしかしたら、もう行ってるかもしれない。
編集長や皆さんに、ご迷惑をかけてしまう。
そんなつもりで、書いた本じゃないのにー!
震えながら独りベッドの中で寝ていると、また扉をノックする音が外から聞こえる。
また、誰かがお見舞いに来てくれたの?!
いいえ、違う!
きっと、王妃様との面会が決まったのを教えに来たのだわ。
扉を開けると、予想通り女官長オリヴィア様だった。
「グレース、明日午前10時に王妃様にお茶をいれなさい。
最後になるはずです。
貴女の思いを込めていれなさい」
女官長様が部屋を出るまで、グレースは深く頭を下げ続ける。
そんな彼女は、立っているのがやっとで頭の中は混乱していた。
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる