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第1章  隣国への逃亡

第21話 魔女狩り

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 女官長様が言われた通りに、次の日から私は休みを頂いた。

王宮に入ってからの初めての病欠に、メイドの仲間たちが仕事が終わってからお見舞いに訪れてくれる。
嘘を付いているので心苦しいが、心配してくれるのが嬉しかった。

「なんだ、意外に元気そうで安心したわ!」

「びっくりしたのよ!
突然、女官長様からグレースが体調が良くないって言われて…。
まさか、仮病けびょうではないわよね!」

思わずグレースは、ビクッと体が反応する。

「何言ってんのよ!
アンタと違って真面目まじめなグレースが、そんな事をするわけないでしょう!」

お見舞いに来てくれた二人が、冗談をいい笑顔で話をしていた。
1人の友人が、意味ありげにグレースに聞いてきた。

「ねぇ、グレース!
確か前に婚約破棄をされて、職を求めて王宮に入ったって言ってたわよね?
今、婚約破棄が流行はやってるのを知っている?!」

もう1人の別の友人が、慌ててとがめる。 

「やだっ、やめなさいよ!
グレースは、私たちみたいな噂好きではないのよ!?
知らないわよね?」

首をかしげて、知らない振りをした。

ほーらっ、やっぱりと友人2人は笑っている。

「王宮内で噂になって、それも大事になっているわ!
あのバロック侯爵家のご令嬢イザベラ様が、婚約破棄されたのよ。彼女ちょっと、性格がアレじゃない?!
それなのに自分は悪くないって、会う人に言い訳して話しまくっているのよ!クスクス」

私も、令嬢の噂で聞いたことがある。
凄く気が強く、少しでも機嫌が悪いとメイドに当たり散らす方だわ。

「そうなのよ、私も聞いてスカッとしたわ!
自分の性格のせいで、婚約者に逃げられたのにねぇ。
あの本が悪い、あの本には人を惑わす魔力があるってさわいでるの!
ほんとあの人、バカみたい!
アーハハハァ!!」

2人はそろってこらえきれずに、吹き出して大笑いをし始めた。

「まぁね!ちまたを騒がしているけど、結局は男性に不満があってあの本を使っているだけではない?!」

「でも、書いた作者ってシャロンって女性でしょう?
彼女、まずい立場になっているわよ。
相手は、あのバロック侯爵令嬢よ!」

そんなに、その令嬢は怒っていらっしゃるの。
でも婚約破棄が辛いのは、私も経験済みで分かる。

「あの、そんなに怒っているの?ただ、本を書いただけで…」

グレースは自分が書いていて、恐ろしくなってきていた。

「父親の侯爵は縁談をつぶされてうらんでいると、王宮内でももっぱらの話になってるわ。
まどわす本を書いた魔女を探し出すって、いろんな人たちに触れ回っているそうよ!」

「なにそれ、怖いわ!
昔、それって違う国であった魔女狩りでもするの!?
それはちょっと、やり過ぎと思うわ!」

嘘でしょう、そんな話になってるの!
心も体も、氷のように冷たくなっていく。
何とか誤摩化ごまかし笑ってみたが、顔色が悪くなる一方だった。
彼女らは、体調が悪くなったと誤解してくれた。

「グレース、ごめんなさい!
まだ具合がよくないのね?!
私たち、もう帰るから…」

「早く寝たほうが良いわ。
顔色が青いわよ。
また、来るわね!」

逃げ出すように、2人して部屋を出ていく。

どうしよう、きっとバロック侯爵は出版社に怒鳴り込みに行くわ。
もしかしたら、もう行ってるかもしれない。
編集長や皆さんに、ご迷惑をかけてしまう。
そんなつもりで、書いた本じゃないのにー!

震えながら独りベッドの中で寝ていると、また扉をノックする音が外から聞こえる。
また、誰かがお見舞いに来てくれたの?!

いいえ、違う!
きっと、王妃様との面会が決まったのを教えに来たのだわ。
扉を開けると、予想通り女官長オリヴィア様だった。

「グレース、明日午前10時に王妃様にお茶をいれなさい。
最後になるはずです。
貴女の思いを込めていれなさい」

女官長様が部屋を出るまで、グレースは深く頭を下げ続ける。
そんな彼女は、立っているのがやっとで頭の中は混乱していた。










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