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第1章 隣国への逃亡
第8話 婚約破棄
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学園生活を終える卒業式は、残りあと半年後に迫ってきていた。
周りは卒業式後のパーティーに婚約者とどんなドレスにするかと、クラスのご令嬢たちはその話題で持ちきりになっている。
「グレース様は、ご婚約されている令息とご相談されておりますの?
最近いつもいらっしゃるご令嬢とは、距離が近くないですか?
失礼ですが、浮気されているとしか思えませんわよ!」
友人が興味深げに聞いてくると、彼女は暗い表情を見せた。
彼女は、如何にも心配そうに励ましと助言をしてくる。
本当に心配しているの?
それとも…。
「ご婚約者に、お聞きになられた方がいいわ。
お揃いになるドレスを作るのにも、お時間が足りなくなります」
「えぇ、そうですわよね。
放課後にでも、彼を探して聞いてみるわ。
気遣ってくれて、有難うございます」
グレースは話しかけるなと言われて、黙っていたがコレは仕方ないと思う。
また、彼は怒り出すかしら?
勇気を振り絞り、婚約者の姿を探す決心をしたのである。
授業が終わり、彼女は婚約者を探し歩きまわった。
中庭に向かうと、目立たないベンチに座る男女。
彼はいつも側に寄り添う彼女と、肩を寄せ合って座って話をしていた。
グレースは何故か身を隠して、彼らの側にそっと寄る。
私からは良く見えるが、彼らからは死角になるようだった。
何時も、二人で何を話していらっしゃるの?!
「もうじき、卒業式でパーティーがあるでしょう?
私をパートナーにして下さいな!良いでしょう?!」
あの方は、何を言っているの?!
パートナーには、婚約者って暗黙の了解があるはずよ!
「すまない、俺には婚約者がいるんだ。
親同士が決めたから逆らえない。一応は貧乏貴族でも子爵だしな。正直、君ならどんなに良いかって思うよ。
本当に困っているんだ」
困り顔で隣の彼女に話す彼に、グレースはこれが本音でしたのと愕然とする。
「だったら、お父様に頼んであげるわ。
私は伯爵令嬢よ!
ずっと前から、貴方を気になっていたの」
ウットリと彼の顔を見つめては、甘えた声で耳元で囁く。
見たくない姿を見せられた彼女は、自分が震えていて息がうまく出来ない感覚に陥っていた。
「彼女なら大丈夫よ!
首席だし、頭が良いわ。
私は駄目なの。
こうして、頼りがいある男性がいないと」
そう言って彼の肩に頭をのせて、腕を絡ませる。
彼は嬉しそうに照れながら、笑顔で彼女に先程より体をくっつけてきた。
あぁやはり、何処かでこうなるとは頭の片隅にあった。
お父様に相談しなければ、来年の税金を減らせるか。
確か、この時期に領地から王都に来る予定だわ。
手紙を書くと、父は彼の素行を何処からか聞いて知っていたのであろう。
彼の父親と話をすると、直ぐに返事がきてそう書かれていた。
かなり前から、両親は知っていた。
でもこちらからは、言い出し難かったのね。
婚約者の実家に借金があったから…。
それでも、少しづつであるが返金をしてきた。
王都で父とは、しばらくぶりに再会する。
学生寮の面談室で、父は私に頭を下げて謝罪してきた。
態度で言わなくても分かるわ。
夢と現実は違いすぎて、彼は綺麗で身分も高い令嬢を手に入れた。
私はゴミのように、見事に捨てられる。
「君との婚約は破棄した。
実家は災害ばかりの貧乏貴族で役に立たないし、可哀想だから迷惑料で借金は無しにしたよ
。後からグチグチ言うな!
こんな暗くて地味な女より、この美しい、このシャロン嬢の方が私に似合う。
君は君で、幸せになりなよ。
じゃあな!」
「マロー子爵令嬢、本当に貴女には悪いことをしたわ。
でも、私は彼が好きなのよ。
許して頂戴ね!」
彼女は私の両手を、握りしめながら話しをしてきた。
こうすれば、ダメとは言えないわよね。
知っているわ!
その綺麗な悲しげな顔で、心の奥底では私を嘲り笑っているのよ!
「ええ、構いませんわ。
家同士の婚約ですものね。
どうか、お幸せに!」
震える声で、なんとか告げた。
どんな表情を、私は今してるのかしら?
考えたくもない!!
二人並んで私から立ち去ってゆく、こんなに大勢の生徒たちがいる中で…。
ひどい、酷すぎるわ!
惨めでも泣くもんですか、意地でも絶対に泣かない!!
泣いている場合ではない!
もう、私には残された時間がない。
学園の卒業までに、絶対に進路を決めなくてはー。
(あぁ~、どうしたらいいの!!)
グレースは一人寮の部屋で天井を仰ぎ、ボーッと眺めては一筋の涙を流していた。
周りは卒業式後のパーティーに婚約者とどんなドレスにするかと、クラスのご令嬢たちはその話題で持ちきりになっている。
「グレース様は、ご婚約されている令息とご相談されておりますの?
最近いつもいらっしゃるご令嬢とは、距離が近くないですか?
失礼ですが、浮気されているとしか思えませんわよ!」
友人が興味深げに聞いてくると、彼女は暗い表情を見せた。
彼女は、如何にも心配そうに励ましと助言をしてくる。
本当に心配しているの?
それとも…。
「ご婚約者に、お聞きになられた方がいいわ。
お揃いになるドレスを作るのにも、お時間が足りなくなります」
「えぇ、そうですわよね。
放課後にでも、彼を探して聞いてみるわ。
気遣ってくれて、有難うございます」
グレースは話しかけるなと言われて、黙っていたがコレは仕方ないと思う。
また、彼は怒り出すかしら?
勇気を振り絞り、婚約者の姿を探す決心をしたのである。
授業が終わり、彼女は婚約者を探し歩きまわった。
中庭に向かうと、目立たないベンチに座る男女。
彼はいつも側に寄り添う彼女と、肩を寄せ合って座って話をしていた。
グレースは何故か身を隠して、彼らの側にそっと寄る。
私からは良く見えるが、彼らからは死角になるようだった。
何時も、二人で何を話していらっしゃるの?!
「もうじき、卒業式でパーティーがあるでしょう?
私をパートナーにして下さいな!良いでしょう?!」
あの方は、何を言っているの?!
パートナーには、婚約者って暗黙の了解があるはずよ!
「すまない、俺には婚約者がいるんだ。
親同士が決めたから逆らえない。一応は貧乏貴族でも子爵だしな。正直、君ならどんなに良いかって思うよ。
本当に困っているんだ」
困り顔で隣の彼女に話す彼に、グレースはこれが本音でしたのと愕然とする。
「だったら、お父様に頼んであげるわ。
私は伯爵令嬢よ!
ずっと前から、貴方を気になっていたの」
ウットリと彼の顔を見つめては、甘えた声で耳元で囁く。
見たくない姿を見せられた彼女は、自分が震えていて息がうまく出来ない感覚に陥っていた。
「彼女なら大丈夫よ!
首席だし、頭が良いわ。
私は駄目なの。
こうして、頼りがいある男性がいないと」
そう言って彼の肩に頭をのせて、腕を絡ませる。
彼は嬉しそうに照れながら、笑顔で彼女に先程より体をくっつけてきた。
あぁやはり、何処かでこうなるとは頭の片隅にあった。
お父様に相談しなければ、来年の税金を減らせるか。
確か、この時期に領地から王都に来る予定だわ。
手紙を書くと、父は彼の素行を何処からか聞いて知っていたのであろう。
彼の父親と話をすると、直ぐに返事がきてそう書かれていた。
かなり前から、両親は知っていた。
でもこちらからは、言い出し難かったのね。
婚約者の実家に借金があったから…。
それでも、少しづつであるが返金をしてきた。
王都で父とは、しばらくぶりに再会する。
学生寮の面談室で、父は私に頭を下げて謝罪してきた。
態度で言わなくても分かるわ。
夢と現実は違いすぎて、彼は綺麗で身分も高い令嬢を手に入れた。
私はゴミのように、見事に捨てられる。
「君との婚約は破棄した。
実家は災害ばかりの貧乏貴族で役に立たないし、可哀想だから迷惑料で借金は無しにしたよ
。後からグチグチ言うな!
こんな暗くて地味な女より、この美しい、このシャロン嬢の方が私に似合う。
君は君で、幸せになりなよ。
じゃあな!」
「マロー子爵令嬢、本当に貴女には悪いことをしたわ。
でも、私は彼が好きなのよ。
許して頂戴ね!」
彼女は私の両手を、握りしめながら話しをしてきた。
こうすれば、ダメとは言えないわよね。
知っているわ!
その綺麗な悲しげな顔で、心の奥底では私を嘲り笑っているのよ!
「ええ、構いませんわ。
家同士の婚約ですものね。
どうか、お幸せに!」
震える声で、なんとか告げた。
どんな表情を、私は今してるのかしら?
考えたくもない!!
二人並んで私から立ち去ってゆく、こんなに大勢の生徒たちがいる中で…。
ひどい、酷すぎるわ!
惨めでも泣くもんですか、意地でも絶対に泣かない!!
泣いている場合ではない!
もう、私には残された時間がない。
学園の卒業までに、絶対に進路を決めなくてはー。
(あぁ~、どうしたらいいの!!)
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